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大災害を奇貨とした「民主・自民」大連立など百害あって一利なし 「国難に挙国一致体制など建前 {長谷川幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス [講談社]}
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2316
東京電力・福島第一原子力発電所の放射能漏れに対する不安が続く中、永田町では菅直人首相が自民党の谷垣禎一総裁に入閣を求めた一件が尾を引いている。
今回は谷垣が入閣を拒否し、政権延命を狙った菅の独走劇はひとまず失敗に終わった形だ。だが、自民党との大連立話が完全に消えたわけではない。
民主党内には「菅のクビを差し出せば、大連立の目は十分ある」という見方がある。非常時対応をめぐって、民主党内では菅支持の声が高まるどころか、閣内からも菅の指導力に疑問符が付いている。
地震の被災者救援と放射能漏れ問題が一段落すれば、党内から「菅降ろし」の動きが再び始まる可能性は十分にあるとみるべきだ。
「科学的根拠を示せ」の”根拠”
政権事情に通じた関係者によれば、総理執務室の菅は原発問題で頭が一杯で、完全に「イラ管」状態らしい。原発問題を担当している重要閣僚に対しても、感情を抑えきれず怒鳴り声を上げ、その閣僚が思わず菅に怒鳴り返す一幕もあったという。
原発について自分は玄人と思い込んでいるらしく、なにかと言えば「そんなことを言うなら、科学的根拠を示せ」という台詞が口癖になってしまった。説明者が口ごもると途端にこの台詞を吐いて、怒りを爆発させるのだとか。
これは蓮舫節電担当相にも伝染した。蓮舫がプロ野球セ・リーグの開幕問題で説明に訪れた関係者に「ナイターにこだわるなら科学的根拠を示せ」と迫ったのは報じられたとおりだ。最初の出所は菅だったのだ。
首相が執務室で閣僚に当り散らしているような状態では、危機管理に十分目が届くわけもない。「菅は使用済み燃料棒。冷やさないと放射能を撒き散らすだけ。早く冷やして処理しなければ」という笑えぬ冗談も飛び交っている。
こういう話はあっと言う間に永田町に広まる。「いずれにせよ、菅ではもたない」という見方が再び、与野党を通じて強まってきた。
こうなると、菅を総理の座から引きずり降ろしたうえで、自民党との大連立というシナリオが現実味を帯びてくる。
復興対策の必要性では議論の余地がなく、消費税引き上げも基本的に一致、子ども手当や高速道路無料化の2009年政権公約(マニフェスト)政策も見直して復興財源に回すとなると、いまや自民党と民主党が対立する基本的理由はほとんどなくなってしまった。解散・総選挙はもちろん遠のいた。
谷垣が菅の要請を断ったとはいえ、もしも民主党が菅降ろしに成功すれば、大連立が成立する客観的条件はすでに整っているとみていい。
霞ヶ関と永田町の密室化
大連立が実現すると、どういう世界になるのか。予想される事態を整理しておきたい。
自民、民主両党を軸にした大連立政権は衆参両院で多数を占めるので、もはや国会対策を心配する必要がない。ということは、復興対策を含めて政策論議は国会に法案や予算案を提出する前の段階、すなわち連立政権内での議論が成否の鍵を握る形になる。
そうなると官僚の独壇場である。官僚は政策関連情報をほとんど独占し、具体的な法案を書く能力もある。数に物を言わせて議員会館をはしごし、自分たちの都合がいいように説得工作と利害取引に全力を挙げる。与党連立政権内で合意にこぎつければ事実上、事はなったも同然なのだ。
野党はと言えば、独自案をひねり出したからと言って、注目されることはない。なぜなら連立与党が国会を牛耳ってしまうのだから、どんなに良い案であっても、実際に法案が成立する可能 性はほとんどなくなってしまうからだ。
その結果、国会論議は空洞化し、物事が霞が関と与党内の密室調整で決まる事態が常態化する。
新聞はじめマスコミの取材も霞が関に集中するようになる。官僚の書いた絵が現実の法案になる可能性が高くなるのだから、当然の成り行きだ。場合によっては、与党内で意見が対立した場合の落としどころも官僚が下工作するようになるだろう。
黙っていても官僚が説明資料を用意して、具体的な案を持ってきてくれるのだから、政治家同士の政策論議は沈滞化する。これは、かつて見た風景そのものだ。
霞が関の復権である。
大連立が成立すれば、財務省は絶好のチャンスとみて消費税引き上げを狙うだろう。当面は復興財源として臨時の復興税(たとえば電力課税の強化)程度でお茶を濁すとしても、衆院議員の任期が終わる2013年8月末までに、必ず本丸の消費税増税にメドをつけようとするはずだ。
議員バッジをつけた人の利益
もう一つの重要案件である環太平洋連携協定(TPP)も、どうなるか分からない。菅は前向きだが、民主党内には小沢一郎元代表を支持するグループを中心に反対論が根強い。自民党はいまだに党として方針を決められないままだ。造反者を防いで連立維持を優先し、参加するかどうかの結論を先送りしてしまう可能性は十分にある。
こうしてみると、自民、民主という二大政党による大連立路線とは結局、議会否定というに尽きる。重要な政策論議が政権内の水面下に潜ってしまい、国民はおろかマスコミさえも政策決定が見えなくなってしまうのだ。
決まったときは、異論を唱えようにも時遅しどころか、いつ物事が決まったのかさえも、普通の国民には分からなくなってしまうだろう。
一部には「国難には挙国一致体制で臨め」というような単純な大連立待望論もある。だが、安直な大連立論は百害あって一利なしではないか。それよりも、与野党が国会で議論を重ねたうえで、より良い政策(法案)に修正していく姿のほうがよほど健全である。
野党が国会で力を保っていれば、別に連立政権を作らなくても政策を実現する道はあるのだ。政策実現のために野党が政府与党に圧力をかけたり抵抗するのは、ときに過剰であっても民主主義のコストと割り切る必要がある。
与野党の一部に大連立論が消えないのは、野党が政権にポストを得る一方、与党は崩壊寸前だった政権が持続可能になるからだ。言い換えれば、大連立推進派が唱える政策実現というのは建前にすぎない。本当の理由は与野党ともに議員バッジを付けた人々の利益にかなうからである。
大地震と原発事故という大災害を奇貨として、政治家の都合で大連立を目指すような動きには、しっかり目を光らせていかねばならない。
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