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谷垣氏に入閣打診 非常事態に露呈した菅政権の“本質”
2011.3.19 23:25 :産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110319/plc11031923280022-n1.htm
未曾有の大震災への対応から、菅直人政権の“本質”が浮かび上がってきた。菅首相は19日、政敵であるはずの自民党の谷垣禎一総裁に電話一本で入閣を打診した。民主党だけでは、この状況を乗り切れないと悟った末の行動のようだが、そこには「国難」に対峙する政権としての自覚と責任感が完全に欠如している。
谷垣氏に入閣を打診した首相の念頭にあったのは、自らが中心に座る形での大連立政権の樹立だ。
「谷垣氏とさし(一対一)で話し合いたい」
11日の大震災発生直後、永田町が事実上の政治休戦に入ると、首相は周囲に谷垣氏との2人きりの会談をセットするよう指示した。徐々に被害の深刻さが明らかになっていく中、首相は「いまこそ大連立の好機」と判断したようだ。
首相の大連立構想は今に始まった話ではない。
当初は「クリーンな政治」を実現させるというふれこみで、小沢一郎元民主党代表との関係を絶ち、自民党に対しては消費税問題を通じて協力関係を模索しようとした。
首相の後ろ盾ともいえる仙谷由人官房副長官も自民党の大島理森副総裁との接触をひそかに続けてきた。仙谷氏は大島氏を通じて自民党内の情勢を探りながら、大連立の可能性を探った。
しかし、自民党からは「統一地方選と菅政権が終わった後の話だ」という厳しい空気ばかりが伝わってきた。
幻となりかけた大連立構想。それが大震災をきっかけに、首相の脳裏に再び浮上した。「『震災対応への協力』という大義名分なら、自民党もむげに拒否できないだろう」。そんな計算が働いたことは想像に難くない。
× × ×
谷垣氏との会談は13日に実現した。しかし、菅政権への参加に消極的だった谷垣氏の考えは変わっていなかった。会談に石原伸晃幹事長を同席させることで、首相との2人きりの会談を避けた。結局首相は、谷垣氏に大連立を打診できずに、会談を終えた。
政府・民主党は一方で、大島氏にも震災特命相への起用を打診しようとしたが、同氏もすでに「残念だが、今の自民党は菅政権への協力はできない」と拒否する考えを伝えた。
せっぱ詰まった首相は19日昼すぎ、電話で谷垣氏にアタックをかけた。
首相「国家的危機だ。ぜひ会いたい。副総理兼震災復興担当相で入閣していただけないか」
谷垣氏は「申し出は党内で協議するが、難しい」
首相「直接会談して決める気持ちもないんですか!」
最後は、持ち前の「イラ菅」が爆発した。短絡的な首相の政治手法が、ここでも露呈した。
× × ×
谷垣氏は首相との電話会談後、すぐさま幹部を党本部に招集した。
しかし、入閣拒否の方針は当然の結論だった。「政権側に利用されかねない」。会合は30分程度で終了した。
出席者の1人は「首相の提案は唐突で政局ぶくみだ。われわれは全面的に協力しているのに。これでもまだ足りないというのか」と不満を漏らした。
ただ、自民党もジレンマを抱える。入閣要請を拒むことは、世論から「震災対策に対して非協力的だ」とみられるリスクを伴う。
石破茂政調会長は記者団に「政策協議や知見を求められたときに、自民党は何をやっているのかといわれることに対する心配が少なからずある」と漏らした。
× × ×
震災を政局に利用する首相の姿勢には、民主党内でも戸惑いが広がった。
「政治に今求められているのは人事ではない。国民を思う気持ちだ。何をやっているのか」
小沢一郎元代表の側近議員の一人はこう憤った。
首相を支える党幹部も「首相が総裁に話をするのは最後の儀式で行うものであり、断られるなんてあり得ない。根回しをしなかったのだろう。首相が独走しているのかもしれない」と危機感を募らせた。
首相の今回の行動が、今後の政権運営を一層厳しさを増す懸念もある。別の党幹部は「首相がいきなり本人に要請するやり方は稚拙だ。トップ会談で拒否した以上、自民党は菅政権に対し柔軟に対応するのは難しくなるだろう」との見通しを示した。
戦後最悪となった自然災害から日本が再起できるかは、ひとえに菅首相の双肩にかかっている。政局にかまけている暇はないはずだ。
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