http://www.asyura2.com/11/senkyo110/msg/140.html
Tweet |
2011.03.15 再臨界(核分裂の再現)と高レベル放射能拡散阻止に全力を
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-1513.html
―福島原発事故 国際的原子力安全専門家の見解―
坂井定雄(龍谷大学名誉教授)
昨日紹介した、国際的原子力安全専門家のS氏は、福島原発事故について、設計基準を超えた、かつて経験したことのない発電用軽水炉事故だと断定した。高レベルの放射能拡散の危険もあるが、同氏は原子炉内に壊れた核燃料や炉内構造物がたまって、再臨界(核分裂の再現)が起こる可能性を指摘している。「ぜひみなさんに知ってもらいたい」と同氏は訴えている。
政府と東電の記者会見やメディア解説では不十分かもしれない。同氏の新たな見解を紹介したい。
原子炉の設計基準を超える重大事故−再臨界の懸念も
国際原子力安全コンサルタント S (March 16, 2011)
(1) 設計基準を超える事故
過酷な事故が起きても、原子力発電プラント(NPP:原発の各原子炉施設)が著しい損傷を蒙らないよう、設計時に、いくつかの代表的な過酷事故が想定されています。NPPを設計するとき、事故が起きても、炉心が健全であるように設計されているはずです。今回のように炉心が露出する代表的な事故として、炉心で冷却機能が無くなる冷却材喪失事故(LOCA:Loss of Coolant Accidents)があります。もしLOCAが起きても、炉心が損傷しないよう、非常用炉心冷却系(ECCS)の設計に際しては、基準を設けて、炉心の健全性を損なわないようにしているのです。今回の事故の挙動は、LOCAの小破断時の挙動と似ています。どこかで漏れていることを疑わせます。1979年の米スリーマイル島原子力発電所2号機(TMI−2)事故と同じように、注水しても、注水しても、炉心の水位が低下して、炉心露出を起こしているからであります。私は当初からから圧力バウンダリー(炉心や配管)のどこかで、決定的な漏れがあると疑っています。TMIの教訓が生かされていない!これが実感です。
(2)ECCS基準の全てを逸脱
今回の事故で運転員は、核分裂生成物からの発熱を効果的に冷却する余熱除去システム(RHR)を起動できなかったので、炉心が露出するような危険が生じたとき炉心に注水するための原子炉隔離時冷却設備(RCIC:Reactor Core Isolation Cooling System)に頼って、炉心への注水を継続して、炉心冠水を維持しようと、努力しているのですが、なかなか安定停止モード(Cold Shutdown)に移行できない状況にあります。強力なRHRに比べRCICは非力なのです。
1、2および3号機で、炉心の大部分が露出するに至って、炉心温度は1200℃を超え、ジルコニウム(Zr)合金を素材とした被覆管の主要成分Zrが水と反応(Zr-水反応:MWR:Metal Water Reaction)して酸化される状況が生じて、相当量の水素ガスが発生したと予測されています。これによって1号機と3号機で相次いで水素爆発が起きています。軽水炉発電の歴史のなかで前代未聞の事態です。
16日午前0時ごろの保安院の説明会では、2号機はRCICで海水を注入し炉心水位は上がったのだが、海水輸送上のトラブルがあって再び低下して、炉心が空焚き状態にあるとの説明がありました。 大量のZr-水反応、水素ガスの生成、被覆管の破損、燃料ペレットの露出、炉心下落、などが起きたと推測されます。この事象の状況評価に適している、非常用炉心冷却設備(ECCS:Emergency Core cooling System)の設計基準に照らしてみると、マグニチュード9.0という巨大地震との遭遇もありましたが、@燃料被覆管表面温度1200℃以下、A被覆管の減肉15%以下、B炉心全体のZr酸化量1%以下、C燃料の冷却可能形状維持(Coolable Geometry)など重要な要求事項を全て逸脱しているのは確かです。これは、強烈な地震の影響も影響していますが、ECCSの設計基準を満たしていなかったということになります。
(3)大破断より小破断が怖い
今回の事故は、原子力災害事故として取り組まれている、最大級の事故、大破断LOCAより厳しい事故だと位置づけることができます。このような視点で捉えると、この事象は、原子炉の型式がBWR(沸騰型)とPWR(加圧水型)の違いはありますが、TMI −2の事象と酷似していると云えます。これまで経験したことのない、3基の原子炉で炉心溶融事故が同時に起きてしまう懸念があります
ECCSの設計では、最悪の冷却系破断を考慮して、精密に設計するよう求めています。しかし、今回は、よく考慮された大破断LOCAではなく、原子炉停止時に、核分裂生成物の崩壊熱による余熱を除去するために設計された、主冷却系統に比べると桁違いに小さな、余熱除去システム(RHR:Residual Heat Removal)が、専用のジーゼル発電機の電源喪失で起動できなくなりました。このような故障が併発すると、適正流量の安定注入ができなくなって、NPPは致命的状態に陥ってしまう恐れがあります。
理論と実験面で十分検討されつくした、最悪破断よりも、原因不明な炉内水位の低下の方が怖いというTMIの教訓が、風化し始めたころに改めて、警鐘を打ち鳴らされたような気がします。今回の事故の原因は、千年に一度という、巨大地震でしたが、現実に起きた以上、TMIの教訓に改めで学ばねばなりません。耐震基準が改定されたばかりですが、今回と同レベルの地震に再度襲われても、炉心損傷を起こさない基準を構築して、既設および新設プラントに適用して、原子力発電所周辺に住んでおられる方々に退避をお願いすることのない、安全な原子力発電を実現していただきたいと願わずにはいられません。
(4)安全系統の動的機器
今回の事故で大変気になるのは、原子炉の安全系統の一つである、圧力容器格納容器(Dry Well)内圧が危険値に近づいたとき、圧力を低減させるための大気放出弁(MOV:電動弁)を電気モーターで遠隔駆動できず、高放射能レベルの現場に作業員を出して操作させなければならない事態になってしまったことです。米国の原子炉規制当局(NRC:Nuclear Regulatory Commission)は、多くのトラブルを起こした、安全系統でよく使用されている動的機器(MOV)の健全性を抜本的に高めるため、1996年通達(Generic Letter)GL-96 05(通称Periodic Verification)を出して、全NPPに対応を求めました。骨子は、設計基準に関わる事故(DBA)が起きたとき、種々の不確かさや劣化を考慮しても、安全系統に装着されているMOVの駆動力が、このMOVを駆動するための最大予測の必要駆動力より大きいことを、検証するよう求めたのです。政府および産業界は大規模な研究開発を行って、この対応を終了しています。最終的には2012までとういうタイムリミットを設定しています。日本でもNRCと類似の対応を終えていると聞いていますが、米国では安全系統の弁の範囲を空気作動弁(AOV:Air Operated Valve)にも広げ、安全系統の弁一個一個のDBA時の健全動作性を検証しています。来日しているNRCのスタッフは、このあたりの調査もするものと思われます。
(4)再臨界(各分裂の再発)
高速炉は炉心溶融を前提に設計され、メルトダウン(炉内溶融)に備えて、圧力容器下部に堆積した炉内構造物が再臨界を起こさない工夫(Core Catcher))を取り入れています。現在建設が進んでいる欧州型加圧水型炉(EPR:European Pressurized Reactor)でも、メルトダウン対策が考慮されています。日本では、炉心よりも高い位置に大量の水タンクを配して、位置のエネルギーで緊急時の注水をする、受動的(passive)な設計と独立4系統の動的(active)システムなどが考慮されています。
今回の事故では現在、TMIの事故を教訓に類推すると、燃料ペレット、被覆管、中性子吸収材その他の炉内構造物の破片(debris)が炉心下部に堆積した状況が想定されます。心配なのは、これらの堆積物の再臨界です。破損した核燃料や制御棒、可燃性吸収材などが炉心下部に堆積すると、再臨界の可能性があります。それは、なんとしても防がねばなりません。(16日午前記) 以上
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK110掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。