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「記者会見ごっこ」はもう終わり/上杉 隆(ジャーナリスト)
Voice 3月10日(木)12時14分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110310-00000001-voice-pol
◇「上杉テロだ!」◇
非営利団体の「自由報道協会」(仮)を立ち上げた。私はその会の暫定代表である。
理事は21人、その他の参加メンバーは100人を超える。メルマガ登録者を合わせれば、設立準備会発足後のわずか2週間で1,500人を超えている。
予想外の反響だが、自由報道協会の存在意義は、会の存続や発展にない。それは二の次だ。
狙いはただ一つ、日本では正当に実施されたことのない「記者会見」を、健全なかたちで主催することにある。
日本には「記者会見」がないというと、首をひねる人が大半だろう。しかし、それも仕方のないことだ。なにしろ戦後ずっと、日本人は、官僚システムに組み込まれた政府と記者クラブによる「偽の記者会見」につき合わされ、それを本当の「記者会見」だと信じ込まされてきたのである。
じつは、読者の皆さんがテレビなどで知っているのは、たんに「記者会見もどき」である。いわば日本人はこれまで全員、洗脳されてきたのだ。自由報道協会の存在意義の一つは、そうした洗脳を解くことにもある。
フェアで自由な記者会見――。世界中で行なわれている当然のそのスタイルを実行していこうというのが当協会の目的だ。
世界標準の公的な「記者会見」とは何であろうか。それは、取材目的であれば、あるいは報道に携わる者ならば、誰もが公平なアクセス権をもち、自由な質問が可能で、ゲストにはフェアな反論を許された「言論の場」のことである。
これは、あらゆる民主国家において当然に認められる国民の知る権利と情報公開の精神にも則する、基本的な社会システムなのである。
ところが、こうした自由な「言論の場」を提供しようとしただけで、日本では大騒ぎになってしまう。大騒ぎならばまだいいが、なかには私を日本社会における「テロリスト」扱いする人びとまで現われる始末だ。実際、自由報道協会を立ち上げた直後、次のような記事が出た。
「あれは“上杉テロ”だ!」
自由報道協会の噂を耳にした某新聞社の政治部記者はこう吐き捨てたという。記者クラブに反旗を翻すかたちで誕生した協会に対して、やはり、“記者クラブ側”の反発は計り知れないようで……。
某通信社の政治部記者が話す。
「評判悪いですよ、上杉さんは(苦笑)。記者クラブには『あんな協会、小沢派の議員と結託して作った“御用クラブ”だろ?』みたいな言い方をする記者が少なくありません。過剰反応する人は上杉さんをテロリスト呼ばわりしています。ついに実力行使に出たか!と」(『週刊SPA!』2011年2月22日号)
◇現行の記者クラブとの決定的な違いは……◇
たぶんに誤解されているようだが、自由報道協会はメディアではなく、たんなる「場」である。報道目的であるならば、誰であれ自由に参加できる言論の場を提供している任意団体にすぎない(将来的にはNPO法人化予定)。
よって協会が、取材を行なうことはないし、個別に情報を提供することもない。もちろん、記事を書くことも、放送することもない。たんに、フェアな取材ができるような場をつくるだけなのである。
参加資格も問わない。フリーランス、ネット、海外メディア、専門誌、雑誌、ラジオ、テレビ、新聞、通信――誰でも入れる。個人の責任でという条件以外には、思想・信条・所属組織などいっさい問われることはない。巨大メディアに勤めていることが参加条件である現行の記者クラブ主催の会見とは、この点で決定的に違う。
個人参加――。なにより、この自由報道協会のあり方こそが世界標準である。
不幸なことに、日本で正しいと信じられ、実施されてきた「記者会見」は、世界ではまったく通用しないものだ。世界に類をみない「ぶら下がり」や「囲み取材」、夜討ち朝駆け、自宅での懇談など、どれもがジャーナリズムの常識からは逸脱した前近代的なものばかり。もちろん、個々の記者の仕事がたいへんであるのは理解できる。だが、それがフェアな取材方式かというと、まったくそうではない。
国民の税金で建てた建物のなかで、参加自由であるはずの記者会見場を独占し、同業者を排除し続けるジャーナリストなど、世界中どこを探してもみつかるはずがない。ここ日本を除いては……。そうした「記者会見ごっこ」から脱却するために、自由報道協会を立ち上げたのだ。
世界標準の記者会見を知ってほしい。そしてそれが当然になる――。それが自由報道協会の設立の唯一の目的なのである。
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