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前原辞任劇は民主と自民がタッグを組んだ「ヤラセ」との説
[ 2011/03/09 04:37 ]:世に噛む日日
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カフェ「Her Majesty」のドアを押すと、カウンターの中にいたのはマスターではなかった。
「あれ?川本さんじゃないですか。マスターは?」
「ああ、花粉症がひどいらしくってね。家に引きこもっているよ。僕は代打だ」
穏やかに笑った川本さんは、、グラスを拭きながらそう言った。
川本さんは、このカフェの常連だ。
マスターよりはふたつみっつ、年上のようだが、家業の酒店を倅にまかせて、早くも隠居暮らしをしている結構なご身分だ。
マスターとはウマが合うらしく、いつも政治談議をふたりで戦わせている。
神経質そうに痩せた外見からは意外なほど、笑顔がやわらかい、好感のもてる人だ。
「なあんだ、そうだったんですか。前原辞任の件で、マスターの意見をききたかったんですけどね」
僕が腰掛けながらそういうと、川本さんはくすくす笑いながら、僕の前に水の入ったグラスを置く。
「何か、おかしいですか?」
「いやね、長年のつきあいだ、僕にはマスターがどう言うか、大体、わかるような気がするよ」
「へえ、それは興味深いですね。ひとつ、聞かせてくださいよ」僕は身を乗り出した。
「よし、わかった。注文はいつもの紅茶でいいんだね?」
紅茶を僕の前に置くと、川本さんはおもむろに喋りはじめた。
「秦君は、ブログで、最初に持ち上がった前原の醜聞、ほら、例のヤクザにパー券を買ってもらっていたというやつ、あれを最初にリークしたのは『官邸周辺』だと書いていたね?」
「はい、週刊文春の記事が、『民主党関係者』からの話だと書いていましたから」
「マスターもきっと、そう思っただろう。君は、前原の小沢派への接近が、その動機だろうと書いていたが、最近、わかってきたことは、前原はすでに2月の段階で『解散総選挙すべき』とのたまっていたそうだ」
「それも、菅の逆鱗に触れたんでしょうね」
「そうなんだ。僕は、※週刊現代の先週号で、追い詰められた菅の異常な言動を読んで、びっくりしたよ」
※国会運営で立ち往生した菅政権は、崩壊への秒読み段階に入った。追い詰められた菅首相は、精神までも崩壊したのか。首相のメンタル面の異変で、近頃の官邸内には、殺伐とした空気が漂っているという。
官邸スタッフの一人が証言する。
「首相の執務室から、しょっちゅう、怒鳴り声が聞こえるのです。部屋には本人しかいないので、何事かと慌てて職員が駆けつけると、『テレビで評論家がおかしな解説をした』『この番組はなんなんだ!』などと、一人、大声を上げて怒鳴り散らしているんです」
別の官邸スタッフも、首相の精神的異変についてこう語る。
「ある日、菅さんが執務室から『誰かいないか。すぐに来い』と呼ぶので、若手の職員が駆けつけました。すると菅さんは、『お前、いつもオレのことをバカにしているだろう!』『だいたい、オレはお前の顔が気に入らない!』と、一方的に怒鳴りつけた。もちろん、その職員に何の落ち度もありません。まったく無意味に、菅さんの癇癪が爆発したのです」
「まったく、西のカダフィか東の菅か、といった感じですね」
「両者とも追い詰められて、トチ狂っているという点でね。だから、少し距離をとり始めた前原の動きに神経質になって、『あいつを失脚させろ』ということになったんだろう」
「権力亡者の菅としては、いかにもやりそうですね」
「さあ、そこで、前原は窮地に陥った。この段階では、本当に、彼は思い悩んだだろう。あれだけ、口を極めて小沢の『政治とカネ』を弾劾してきたんだ。自分の同じような問題、というか、小沢の『記載期ズレ』などという『疑い』など消し飛んでしまうくらいに悪質な、ヤーさんが絡んだコトが露見したということがどれくらいに深刻な事態か」
「しかも、参議院での予算委員会を4日に控えていました・・」
「そう、ここで徹底的に野党につるしあげられることはじゅうぶん、予想できた。しかし、不思議なことに、4日に予定されていた予算委員会はお流れになった・・」
「ええと、整理してみますと、『前原、レンホー、野田がフロント企業から献金を受けていたこと』がtwitter上で流されたのが、3月1日。前原が「釈明」の文書を報道陣に配ったのが、2日。この記事が載った「週刊文春」が発売されたのが、3日。しかし、4日に予定されていた予算委員会がお流れになった」
「そう、昔、『空白の一日』というのがあったが」
「『江川問題』ですか、懐かしい」
「この4日という一日で、いろいろな動きがあったんじゃないか。前原は、断腸の思いで次期総理をあきらめた。そして、方針を自己保全一本に絞りこんだ。まずは、菅へ侘びを入れ、内々に外相の辞意を伝えた。そして、ある『心づもり』をきかせた。それは、菅にとっても、歓迎すべきことだ。そして、次に連絡したのが、自民党だ」
「自民党!?」
「そう。5日に質問に立った西田昌司参議院議員と前原は、敵味方ながら旧知だった筈だ」
「同じ京都ですものね。参議院議員は全県、もとい全府が選挙区だから、一部、地盤が被っています。地元のイベントやなんかでバッティングすることは、何度もあったでしょうね」
「前原は、自民党の現状がわかっていた。普段は威勢良く『解散・総選挙』を要求しているが、その実、今の段階で解散はしてもらいたくないというのが本音だということをね」
「準備不足だとか・・。たしか去年の秋の段階で、300小選挙区のうち、100選挙区ほど、候補者が決まっていないと聞きましたが」
「そう、その一番の原因は、『カネ』だ。議員が激減したので、政党交付金も大幅に減額された。しかも、経団連は自民党への献金を『見直す』と言っている」
「自民党式『集金構造』が瓦解したんですね。『与党であることの旨み』がいかに大きかったか。」
「自民党は『与党であること』が唯一の結集軸だった政党だからね。いまだに存在しているのが不思議なくらいだ」
「また、負債も相当なものらしいですね。09衆院選で70億円の借金をしたのが響いて、100億円強の借金があるそうです。この状態で、総選挙はキツいでしょう。これでは、候補者に『カネ』を渡せない」
「前原は、そういう自民党の窮状を知っていたから、予算委員会で質問に立つことがわかっていた西田に、取引を持ち込んだんだ」
「取引・・うう〜ん、たしかに、マスターが言いそうないつもの『陰謀論』めいてきましたね」
「そうだろう?(笑)自民党にとっては、(次期総理候補である)前原が外相を辞め、菅の政権がもう少し続いたほうが好都合だ。細川厚労大臣に対して、今やっているように、のらりくらり時間稼ぎをしつつ、確実に勝てるところまで菅政権を追い込んで、そして解散に持っていけば、楽に勝てると踏んだ。だから、今、解散はしたくなかった。菅は、もうしばらく政権を維持して、6月の『税と財政の一体改革』で成果を出せば、長期政権を見込めると夢見た。前原は、なんとしてでも、ヤーさんとのことが大きくならないように、それだけは、避けたかった。そのうえで展開されたのが5日の予算委員会に於ける西田と前原の『茶番劇』だ。この一挙で、三者の利害は、三方、丸く収まる」
「ははあ、あれは『ヤラセ』だったんですか?」
「僕が『なにか変だな?』と思ったのは、だ。西田が前原に献金していた焼肉屋のおばちゃんを『日本国籍の方ですか?』と訊いたとき、即座に『在日の方です』と、あっさり認めたことだ。前原氏の信奉者なら『潔(いさぎよ)い態度だ』と感銘を受けるだろうが、信奉者でもなんでもない僕には、違和感でいっぱいだ」
「『日本国籍ですか』と訊かれたら『違います』、『それでは何人ですか』と訊かれ『在日の方です』と、普通、会話の流れはそうなりますよね。でも、この場合は、間をすっ飛ばして、いきなり『在日です』と、自分から率先して明らかにしている。何か、セリフが決まっていたみたいな・・たしかに、若干の違和感は残ります」
「ふたりで、前日に打ち合わせをしていたんだよ、と、マスターなら言うだろうな」
「言いそうですね(笑)何のことはない、対立しているように見せかけて、その実、裏で手を握っていたということですか」
「そうだ。『前原が外国人の献金問題で外相を辞任した』という形が、三者にとってベストだったんだ」
「菅は次期総理の受け皿が消えたことで延命の目が出てくる。自民は今、されたら困る解散を先送りできる。前原は、ヤバイスジとの関係を有耶無耶にできる」
「考えてみれば、55年体制のときも、自民党と社会党は、表で対立しているように見せかけながら、裏でしっかりと連携していた。これが、ニッポンの『議会政治』の真の姿だ。これを打ち破ろうとして、何度もぶつかっては、砕け散るのを繰り返してきたのが・・」
「わが小沢一郎というわけですね。わかりました。さすが、川本さん、マスターが絶対に言いそうなことをきかせてもらいました。それでは、僕はそろそろ・・」
「もう帰るのかい?もうすぐ、あの藤あや子みたいに色っぽい、奥さんと交代するんだが・・」
「え?奥さんが来るの?じ、じゃあ、もう少しいようかな・・」
「こんなはずじゃなかった」
「いや、思ったとおりだ」
熱い期待をもって政権交代を支持した多くの国民は、民主党に対してイエローカードを突きつけている。外交内政ことごとく寒々しい民主党政権のていたらくは、いったいなにが原因なのか?明るい展望は開けないのか?
参院選惨敗、菅・小沢代表選、尖閣問題、多発失言…迷走民主党の現状と今後を探る。彼らはなにを考えているのか。
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