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News Spiral
《第5回》陸山会事件公判傍聴記 ── 検事は作家!? 前田元検事が大久保氏についた重大なウソ
3月1日小雨。石川議員の証人尋問が終わったためか、今日は傍聴希望者が少ない。公判も第5回ともなると、報道関係者以外で毎回傍聴しているのも雑誌やフリーランスの記者がほとんど。くじびきまでの待ち時間や休憩中に雑談を交わす人も増えてきた。雑談のなかで裁判の行方が話題になることもあるが、媒体によって陸山会事件に関する報道スタンスは様々でも、今後の展開はまだまだ予測不可能という意見が多い。
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10時開廷。第5回公判午前の部では池田光智元秘書が検事から反対尋問を受けた。
検事は、政治資金報告書の記載について石川氏や大久保氏と共謀があったとする質問を続けるが、池田氏はさらりと否定。どうも尋問のやりとりが噛み合わず、退屈である。
というのも、検察側の描いている構図は「小沢事務所は完全なタテ組織で、すべて上からの命令で動いている」というものだが、池田氏の証言では、現実の小沢事務所は会計業務の引き継ぎすら最低限の部分しか行われておらず、しかも、石川氏が小沢事務所を退職後に北海道で立候補したので、問題となっている 4億円についても詳細は知らなかったという。一連のやりとりを聞いていると、第4回までと同じくように検察側の描いた構図と小沢事務所の実態の格差に驚く。
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13時15分、午後の法廷が再開。
大久保隆規元秘書が証言台に立ち、弁護側から質問を受ける。ここでも大久保氏は石川氏や池田氏との共謀を否定。その後、水谷建設の裏献金について聞かれた大久保氏は「断じてありません」と回答。弁護人が「何か言いたいことがありますか」との問いかけに、「水谷建設の社長の尋問があると思いますので、それを聞いてからお話したいと思います」と答える。水谷建設関連については、検察側による水谷建設関係者の証言が終わった後に反論し、それまでは何も答えないようだ。
引き続き、大久保氏が2010年1月の逮捕時に受けた前田恒彦検事(当時)による取り調べの様子を語りはじめる。
ご存じのとおり、前田検事とは郵便不正事件で証拠資料であるフロッピーディスクの更新日付を改ざんして逮捕され、懲戒免職された検事だ。以下、大久保氏と弁護人のやりとり。
(──は弁護人、「」内は大久保氏の発言、※は筆者の補足)
※以下の概要は傍聴人のメモから主要部分のみを抜粋して再構成したものです。
── これまでの公判で石川氏や池田氏の調書を見てどう思いましたか?
「まったく私のときもそうだったなと思いました」
── 石川さんの供述に「大久保さんがそう言っているのであれば、そうかもしれない」とあるが、それを読んだとき、どう思いましたか?
「前田検事にだまされたなあと思いました」
── だまされたとは?
「私は1月30日の調書で石川氏が私に会計について報告していると言われ、前田検事に『その話を受けてあげないと』と言われ、私は石川氏がしのびないとおもって調書のサインに応じたわけです」
── 報告された事実はなかったのですか?
「私はまったく知りませんでした。しかし、(前田検事が)『大久保さんが受けてあげないと』と言われ、1月30日の調書になりました」
── 1月23日の取り調べ報告書には、午後8時〜9時まで中断されています。それはなぜですか?
「その日は、小沢氏の事情聴取がありました」
── (聴取後の小沢氏の会見の)テレビを見るために中断したということですか?
「はい」
── 午後9時から前田検事と何を話しましたか?
「怒気を持って『小沢さんは嘘をついた。小沢さんの無事を祈るよ』と言われました」
── それを聞いてどう思いましたか?
「今回は小沢先生は逮捕されませんでしたけど、これから逮捕されるのではないかと思いました」
ここで検事が異議申し立てをする。
検事:前田検事の調書は証拠採用されておらず、任意性を争うことになっていません。
弁護側もすかさず反論。
弁護人:これまでの証言にあるように、「切り違え尋問」が行われています。最低限、明らかにしないといけない範囲で認めていただければと思います。
※捕足。「切り違え尋問」とは、たとえばAとBの両方が否認しているのにAに対して「Bは認めてるぞ」と嘘を言ってAの供述を取り、その後にBに「Aは認めたぞ」といって供述調書を取ること。こういった手法を用いて得られた供述調書は証拠能力が否定される。弁護側は大久保氏、石川氏、池田氏の事情聴取のなかで切り違え尋問が行われていたと主張。大久保氏に前田検事の事情聴取の様子を明らかにさせ、石川氏、池田氏の「切り違い尋問」によってサインを迫られたもので、任意性がないと主張するつもりのようだ。
その後、弁護人と検事の応酬が続く。
そこで裁判官が「いったんお待ち下さい」と言って、裁判官3人が退廷する。検事の意義について協議するつもりのようだ。少しざわつく法廷。
5分後、裁判官3人が法廷に戻ってくる。全員起立し、裁判官に一礼。着席後、裁判官が検察官の異議について発言。
「異議を棄却します」
裁判官は、公判前整理手続きに提出されていた資料でないことをふまえ、最低限の範囲で前田検事の調書について質問することを認めた。
引き続き、大久保氏と弁護人の尋問。
── 小沢氏への捜査を避けたかったのは、どんな理由からですか?
「我々秘書が小沢先生から任されたいたにもかかわらず、こういう事態になったことを申し訳ないと思いました。小沢先生が逮捕されれば重大なことになると思いました」
※思わず大きな声になる大久保氏。それに対して弁護人が「ちょっとテンションを抑えて・・」と注意。
── 前田検事の取り調べの時、事務官は同席していましたか
「事務官は席を外していました」
── 前田検事と1対1で事情聴取をしていたのですか
「はい。1対1です」
── びっくりしたことはありましたか?
「ご自身でPCを使って、『これ作家の時間だから』『司馬遼太郎みたいなものだよね』と言っていました。その時に突然『ここで大久保さん登場!』『これはあなたの発言!』と、私の方を指さして発言しました」
※前田検事が調書を一人で造りあげていたことを証言する重要な場面なのだが、大久保氏がジェスチャーを交えながら証言するので、法廷に笑いをこらえる声がもれる。大久保氏を最も近い位置で見ていた石川氏も池田氏も、笑いをこらえているようだ・・。一方、裁判官は冷静に「このしぐさが記録に残るようにしてください」と書記官に指示する。
── そのほか、あなたは前田検事にどのようなことを言われたのですか
「『石川さんは大久保さんに累が及ばないようにと話しているのに(大久保氏への報告・了承を認めているということ)、あなたもそうしないといけないでしょ』と言われました」
── 石川さんが大久保さんへ報告したことを認めた調書にサインしたのは2月2日です。大久保さんは、1月30日に調書にサインしたときに前田検事からはそう言われたのですか
「はい。間違いありません」
── 1月30日の調書では、平成17〜19年の報告書については、東京に行った折りに、もしくは森岡にいたときにFAXなどで池田さんから報告を受けたとなっています
「そのような事実はありません」
── そのような事実がないのに、なぜ調書にサインしたのですか
「『池田さんがそう言っているのであれば、そうなんでしょう』と言いました」
※捕足。大久保氏が収支報告書について石川氏と池田氏から報告を受けていたとの調書にサインしたのは1月30日。一方、池田氏は1月29日に「大久保氏に報告していた」との旨の調書にサインしているが、このとき、池田氏は「石川も大久保も報告していたことを認めている」と言われ、サインしていた。つまり、池田氏が調書にサインした時点では、実際には誰も共謀について認めておらず、池田氏の担当検事がウソをついていたということになる。
ちなみに、石川氏が調書にサインするのは2月2日で、前田検事が大久保氏に語った「石川も認めている」という言葉もウソだったということだ。これが、冒頭の大久保氏の発言である「前田検事にだまされた」につながる。この後、さらに前田検事の奇行が証言される。
── 前田検事の聴取で、記憶に残っていることはありますか
「いつもは朝から取り調べがあるのですが、刑務官の呼び出しが遅い日がありました。11時すぎに呼ばれた日のことです。その時、前田検事は目が真っ赤で、お酒に酔っているような感じだったので、『検事さん、どうしたんですか』と聞いたら『朝5時までやっちゃった』と。『大阪から一緒に応援に来ている若い検事と虎ノ門の寿司屋で朝5時まで飲んでいた』と言っていました」
── その後輩とは(池田氏の取り調べをしていた)花崎検事のことですか
「後輩とは言っていましたが、花崎検事とは言いませんでした。大阪から一緒に来た検事ということでした」
── その時、何を言われましたか
「『あなたも大変だね。あなたの子どもも犯罪者の子どもということで、結婚もできないかもね』と」
── そのほかの話は?
「身の上話を始めて、『私もやっちゃいけないことをやってしまいました。私はこの事件で検事を辞めようと思っています』と話しました」
※捕足。村木事件での前田検事のフロッピーディスク改ざんが大阪地検内で最初に問題になったのは2010年1月のちょうどこの頃。前田検事は陸山会事件の応援で東京にいるとき、上司から改ざんについて問い合わせがあった。この日の深酒の理由がそこにあるかどうかはわからないが、大久保氏の証言は注目に値する。
続いて、2009年3月に大久保氏が逮捕された西松事件に尋問が移る。
── 西松事件で逮捕されたとき、調書にサインしていますね
「平成21年3月3日に逮捕されて、こういうことになった。何とか私だけで終わらせたいということで、調書にサインしました」
── 裁判官調書にはどう答えたのですか?
「西松建設から(違法な)献金を受けたのではなく、西松建設に関連する政治団体に寄付を受けたと話しました」
── それなのに、検察官の調書ではそうなっていません
「私は、他の人に事件が広がることを避けるため、本当のことが言えませんでした」
── 調書には「西松側」から献金を受けたという言葉があります。この「側」とは何ですか
「(西松建設に関連する)政治団体も含まれているので、西松建設ではなく、西松建設側の『側』という字を入れるよう、山本検事に言ったためです」
── 「側」という字にこだわった理由は
「『側』というところを強調して、調書のなかにある『やましいところ』という部分は後でわかってもらえると思いました。西松建設からの献金であれば、企業団体献金を受けることのできる政党支部で受ければいいからです」
※大久保氏は、事件が他の事務所関係者や小沢氏に波及することを怖れ、検事が望む調書にもサインしたという。だが、大筋では検事の調書を受け入れながらも、『側』という一字に自らの本心を残し、裁判で証明するつもりだった。
そのほか、西松事件での大久保氏の調書では、収支報告書の署名を自分で行ったと証言するものもあるが、大久保氏は否定したにもかかわらず、最後にはサインしてしまった。こんなものは検事が筆跡鑑定をすれば、大久保氏以外のサインだとすぐにわかりそうなものだが、検事はそういった基本的な捜査もしてなかったようだ。
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弁護人の尋問が終わったところで休廷。休憩をはさんで、15時25分再開。続いて、検事が大久保氏に反対尋問を行う。
大久保氏は石川氏や池田氏に比べて声が大きく、饒舌な印象。秘書寮のための土地を購入した理由については「若い秘書が結婚適齢期になり、家族と一緒に住まわせることがないということで、(小沢氏の自宅の近くで)条件に合う土地が見つかった」からだという。また、水谷建設に関する質問には、弁護人からの質問と同じく、「公判前整理手続きで弁護士が話された最低限のレベルで、話をしたいと思います」と回答を拒否。水谷建設関係者の証言の後で、話をするものと思われる。
なかでも、大久保氏の声が大きくなったのは、検事に「あなたが罪をかぶることのメリットは?」と聞かれたとき。大久保氏は怒気も交えながら返答する。
「私としては、罪をかぶるという気持ちはありませんでしたが、たとえ無実であっても、次々に関係者が逮捕されれば、小沢先生だけではなく国会議員の先生や支持者の方々に多大な影響を受けますので、私だけで止めたいと思いました。無実なのに、どういうわけなのかこういう事件になった。政権交代のためにがんばってきたのに、なぜこんなことになるのか。これは謀略だと思いました。だから、私だけで止めたいという気持ちでした」
だが、大久保氏の饒舌が続いたのはここまで。検事が東北ゼネコンの小沢事務所担当者を事情聴取した際に集めた調書をもとに、大久保氏による政治資金を依頼したときの様子を聞かれると、一転して声が小さくなる。以下、検事と大久保氏のやりとり。
(── は検事、「」内は大久保氏の発言、※は筆者注)
── 平成16年のパーティー券のことで、前年より購入額を減らしたA建設の担当者に「手のひらを返すのか」と大声で言ったのか
「そういうことを言った覚えはないのですが、「今まで通りお願いします」ということを言ったと思います」
── 『たったの20万円ですか』ということは言いましたか?
「『たった』という言い方をしたかどうかは覚えていません」
※一問一答では伝わりづらいが、実際の大久保氏の回答は、あっちにきたり、こっちにきたりで内容もあいまい。検事にも「できるだけ《はい》か《いいえ》で答えてください」と促されるも、声は小さくなり、「え〜」や「あの〜」といった言葉が急に多くなる。記憶を探っている部分もあるのだろうが、強い態度で政治献金を要求していたことを聞かれる部分については歯切れが悪い。引き続き、検察から複数の建設会社に献金要求をしていたことを追及され、談合への介入についての尋問に移る。
── B建設の担当者の供述に、談合では小沢事務所の意向に従ったとの供述がありますが
「そういった事実はないと思います」
── 担当者がウソを言っている?
「事実と違うところがあります」
── 西松建設から陳情を受けたことは?
「あります」
── ダムの発注についての力添えについて依頼されましたか?
「そういう主旨のことは話されたと思います」
── 『西松にしてやる』ということは言いましたか?
「そういう虚勢をはって言ったことはあるかもしれません」
── わからないように献金を受けていたのはなぜですか
「そういうことではないと思います」
── ゼネコンの下請け業者から50万円ずつという方法で献金を受けていた理由は
「そういう献金をしてくださる方が、そういう形の献金の形を希望されたのでは・・」
── どうしてそういうことをしていたのですか?
「どういう形でお願いをすれば献金していただけるのではということで、そういうお願いをしていました」
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法廷ではじめて証言台に立った大久保氏は、前田検事の取り調べの様子を明らかにすることで、特捜部の捜査手法の問題点を浮き彫りにさせた。もちろん、この証言は弁護側の尋問で明らかになったことであり、検察側はまだ反論を行っていない。第7回公判以降で取り調べ検事が出廷することになっているので、その際にも「切り違え尋問」について弁護側は追及する可能性が高い。
一方、攻守変わって、検察から東北ゼネコンについて聞かれた大久保氏は、防戦で精一杯。これまでの公判で精彩を欠いていた検察側にとってみれば、はじめて攻勢に出ることができたともいえる。とはいえ、東北ゼネコンに関する事実は本裁判の罪状である政治資金規正法とは直接関係なく、あくまで背景事実にすぎない。それでも繰り返し背景事情に言及するのは、検察の狙いは、背景事情と小沢事務所の政治資金の管理の複雑さを五月雨式に示すことで、裁判官に3人の被告人の悪い印象を与えたいようだ。
【追記】
第6回公判は3月2日に行われました。傍聴記は近日中にアップします。
〈構成・文責:《THE JOURNAL》編集部 西岡千史〉
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/03/31.html
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