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岸博幸のクリエイティブ国富論
【第129回】 2011年3月4日
なぜ官邸は今、強気なのか?
経団連にも伝染した本末転倒の論理
来年度予算案が衆議院を通過しました。これで3月末、つまり今年度末までに来年度予算が成立するのは確実になりましたが、予算関連法案を成立させられる目処はまったく立っていません。本来、こういう状況になると内閣の存続自体が危ぶまれるはずなのですが、奇妙なことに、官邸は強気を維持しているようです。
■ 官邸が強気を増す2つの奇妙な理由
予算関連法案のうち特例公債法案が成立しないと、来年度予算の一般会計総額92.4兆円の4割強に当たる40.7兆円(赤字国債38.2兆円と埋蔵金2.5兆円)の財源を調達できなくなります。
このため、菅内閣としては、是が非でも特例公債法案の年度内成立を実現したいはずですが、国会には一事不再議の原則があり、一度否決された法案を再度国会に提出することはできないため、参議院で多数を占める野党の反対により否決されるのが確実な中では、その提出もままならない状況になっています。
内閣の大事な仕事の一つは、毎年度の予算及び予算関連法案をちゃんと成立させて、国民生活に支障が生じないようにすることです。そう考えると、このような状況では、本来は菅内閣の進退が問題になっておかしくないし、官邸も大騒ぎになっておかしくないのですが、どうも事態は全然違うようです。官邸周辺から入ってくる複数の情報では、官邸は逆に強気になっているようです。
その理由は基本的に二つに集約されます。
一つは、特例公債法案が成立しなくても、少なくとも6月頃までは困らないということです。来年度予算の予算総則の中で、最大20兆円までの政府短期証券の発行枠が設定されているため、政府の資金繰りという観点からは、数ヶ月は大丈夫です。かつ、国会の議決を経ずに発行できる借換債の発行や国庫内の資金融通などでも、当面の資金繰りは手当できます。
もう一つは、4月になれば世論は野党を非難し出すであろうという官邸の読みです。予算関連法案が成立しなければ、牛肉やチーズなどの価格は上昇するし、子ども手当は支給できなくなる(自公政権時代の児童手当に戻る)し、法人税の5%減税もできなくなるなど、国民生活には様々な悪影響が生じることになります。
加えて、予算関連法案が成立せず赤字国債も発行できなくなったら、投資家は日本の財政規律への懸念を強めるので、国債金利がじりじりと上昇を始め、景気回復に水を差すとともに財政破綻のリスクが強まるので、それも世論の支持回復への追い風になると考えているようです。
■ 経済を人質に取る政権と経団連の非常識
そうなれば4月からは政権支持率も多少回復するのでは、と官邸サイドは考えているようなのですが、しかし、これは政権を担う者としてあまりに無責任かつひどい対応ではないでしょうか。
このような考え方は、政策や国民生活よりも内閣の延命を優先させているに他ならないからです。より正確に言えば、菅政権は、日本経済を人質に取って延命しようとしているのです。本末転倒も甚だしく、この一事をもって菅政権は失格だと思います。
加えて言えば、ひどいのは菅政権だけではありません。民間の側もそれに加担している部分があると思います。
その典型例は経団連です。先月下旬に日本経団連の米倉会長は自民党の谷垣総裁と会談して、来年度予算案と予算関連法案の早期成立に協力するよう求めています。谷垣総裁は当然反対しましたが、この経団連の対応は常軌を逸しており、非常識と言っても差し支えないと思います。
経済界として来年度予算の年度内成立を願う気持ちは十分に分かりますが、そのために行動するならば、政権与党の側に対して「年度内にちゃんと成立させろ、それが無理なら退陣しろ」と迫るのが筋ではないでしょうか。
それなのに、逆に野党に対して「予算と予算関連法案の成立に協力しろ」と求めるというのは、呆れるしかありません。それを非難する報道が一切なかったことにも驚きました。民主党政権が一年半にわたって無茶苦茶なことばかりをやって、ある意味で政策に関しては非常識が当たり前になってしまうと、民間の側も同じように劣化するものなのでしょうか。
■ 時効は6月に延期か?
いずれにしても、これまでは3月に政権の交代があると言われていましたが、その時効は6月に延期された感があります。6月に通常国会が閉会するので、そのときまでに予算関連法案が成立していないと、経済には大打撃となるからです。加えて言えば、6月はTPP参加の是非の判断、税と社会保障の一体改革の取りまとめという政策の大ダマの期限でもあります。
しかし、日本経済を人質に取ってまで延命しようとする政権は、本来は一刻も早く退陣すべきではないでしょうか。政治家の一部には、3月に政権の交代が起きるであろうと言う人も多くいますが、それが本当に実現するよう、国会で厳しい論戦が展開されることを期待したいですし、3月13日の名古屋市議会選で厳しい民意が示されることも重要ではないでしょうか。4月の地方統一選についても同様です。
もうあまり余裕のない日本経済を早く再生させるためにも、日本国民は菅政権に対していい加減もっと怒るべきです。経団連のようなとんちんかんな対応をしては絶対にいけないのではないでしょうか。
http://diamond.jp/articles/-/11370
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