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永田町異聞
2011年03月02日(水)
予算案賛成の小沢氏に関する朝日の奇妙な記事
政治記事というのは奇怪なもので、記者の憶測や解釈、あるいは当事者以外の政治家から漏れ聞いた話が、事実のように語られる。
たとえば、今日の朝日新聞、蔵前勝久記者の署名記事。小沢一郎氏が新年度予算案に賛成票を投じたことについて。
「予算案に賛成したのは、首相が簡単には退陣しないことを見越し、しばらくは党に足場をとどめて来るべき政局に備えるためだ。」
どこか、この文章自体に、違和感をおぼえないだろうか。小沢氏が予算案に賛成した意図を書いているのだが、どうしてそんなことが小沢氏の広報官でもない蔵前記者に分かるのか。
小沢氏がそう言ったという書き方でもなければ、蔵前記者がそう推測するという書き方でもない。
いわば主体のない文章。言霊が人間から幽体離脱して誰のものか分からなくなったようで、われわれ読み手の視点が定まりにくいのである。
この手の文章は、少なくとも二つの主体(人間)が入り混じり、誰がどの位置から見ているのか、視点がぼやけ、誤ったイメージやメッセージを送るもととなる。具体的に検証してみよう。
二つの主体とは小沢氏と蔵前記者のことである。いや、正確に言えば、蔵前記者と、蔵前記者の遠近法で描く小沢氏が、文章のなかで交錯しているといえる。
すなわち、小沢氏が行動や意思の主体と感じられるこの文脈の中に、実は小沢氏本人は存在していないのである。
分かりやすくするために、この記事を別の文章に書き直すとすれば、こんな感じになるだろう。
まず、蔵前記者の見方を書く場合。
「小沢氏が予算案に賛成したのは、首相が簡単には退陣しないことを見越し、しばらくは党に足場をとどめて来るべき政局に備えようと考えたためではないかと、(筆者=蔵前記者は)思う」
次に、他の政治家、あるいは官僚や秘書の見方を書く場合。
「○○によると、小沢氏は、首相が簡単には退陣しないことを見越し、しばらくは党に足場をとどめて来るべき政局に備えるため、予算案に賛成したらしい」
もうひとつのケース、すなわち小沢氏が予算案賛成の意図を蔵前記者に語ったのなら、素直に小沢氏がそう言ったと書けばいいだけのことで、この記事から見る限り、小沢氏に直接、取材したとは考えられない。
そこで、蔵前記者の記事をあらためて見てみよう。
「予算案に賛成したのは、首相が簡単には退陣しないことを見越し、しばらくは党に足場をとどめて来るべき政局に備えるためだ。」
小沢氏が言ったのでもなく、蔵前記者の主観なのか、他の誰かの見方なのかもはっきりしない、まるで神のお告げのような一文である。
そして蔵前記者はこの文章に続けて次のように書く。
「1日夕には党常任委員会が終わった後に党員資格停止処分への不服申し立てを提出。処分への反論をÅ4の紙8枚に書き連ねた。」
小沢氏が予算案に賛成したことを、さも重大な意味があるかのごとく取り上げたわりには、そのことを掘り下げもせず、党員資格停止処分に不服だという話にあっさり移っていく。
そのあと、会派離脱の16人のうちの一人に「これは『一の矢』だ」と言ったとか、親小沢派議員のパーティーで、解散になる可能性もあるから準備を急ぐよう支持者に訴えたとかいう話をつなげて、「倒閣 時機探る小沢氏」と見出しの躍る記事に仕立て上げた。
結局のところ、中身そのものは、最近の小沢氏にまつわる断片的な話をくっつけただけの「盛り合わせ記事」に過ぎない。
「小沢一郎は腹黒い」という、マスメディアの勝手な定理“”から出発したものの、論理的に筋書きを組み立てることができず、気迷いがちな「作文」になってしまったのではないか。
ただし、全体的な印象が、「倒閣へ陰謀をめぐらす小沢一郎」という感じになっているという点で、朝日としては納得の記事なのかもしれない。
それにしても、せめて署名記事くらいは、執筆者本人が何に価値を置く立場なのかという「本位」を定め、事実と推測の別を明確にして、一切ごまかしのないように心がける必要がある。
そうでなければ、読む側は人間から離れた言葉の群れと向かい合って戸惑うか、有無を言わせぬ神のお告げにひれ伏すしかなくなってしまうだろう。
記事の書き方の旧態依然とした習慣や伝統も、そろそろ変えるときが来ているのではないか。たまたま目についた蔵前記者の記事をとりあげたが、新聞界全体で取り組むべき課題である。
新 恭 (ツイッターアカウント:aratakyo)
http://ameblo.jp/aratakyo/entry-10818056763.html
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