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急浮上! 「解散」「辞職」「居直り」でもない菅内閣「第四のシナリオ」 「造反のマジックナンバー」にあと1議席/長谷川 幸洋
現代ビジネス 2月25日(金)7時5分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110225-00000001-gendaibiz-pol
政局が大きく揺れ動いている。
私は23日のコラムで「菅直人首相に残る選択肢は3つに絞られた。すなわち衆院解散・総選挙か内閣総辞職、あるいは居直りだ。いずれにせよ、解散・総選挙が近い」と書いた。
菅が自ら解散しない場合でも、次は事実上の選挙管理内閣になって解散・総選挙を迫られるとみたからだ。
ここでもう一つ、新たなシナリオを加えたい。わずか一日で情勢が急変している。
それは各議員がいまの議席を維持したまま政界再編に至る可能性である。解散・総選挙を経ずして現有議席のまま政権の組み替えが起きるかもしれないのだ。
政局に新たな一石を投じたのは原口一博前総務相である。原口は23日、国会内で地域主権改革を目指す新しい政策集団「日本維新連合」を旗揚げした。このグループは非議員も参加する「日本維新の会」とは別で、国会議員だけが参加している。
注目されるのは、参加した議員の顔ぶれと人数である。
原口のほか山岡賢次や川内博史、松野頼久など小沢一郎元代表に近い議員たちが総勢57人も集まった。この57人は強弱はあるにせよ、いまの執行部に批判的スタンスとみていい。このタイミングで「原口の呼びかけに賛同した」というだけで、政局に絡む覚悟がないはずがない。
57人のうち参院議員は5人。あとは全員が衆院議員で新党大地が1人、無所属が1人、残りは民主党である。衆院の民主党会派である「民主党・無所属クラブ」に参加した議員だけを数えると51人に達する。
この51人という数がもつ意味は絶妙だ。なぜか。
衆院で内閣不信任案が提出されたとき、あるいは首班指名選挙になったときに、過半数確保をめざす民主党執行部を脅かすに十分であるからだ。
衆院定数は480議席。いま欠員が2あって慣例で投票しない議長を除くと過半数は239になる。これに対して民主党・無所属クラブの保有議席は307。したがって307から239を引いた68議席を1議席でも上回る造反が起きると、過半数を確保できずに負けてしまう。
菅が内閣総辞職を選んで民主党が次の首班候補を衆院に送りこんでも、69人以上が反乱すれば、首班指名選挙で勝てないのだ。野党がいずれ提出するとみられる内閣不信任案の採決でも同じである。69人以上が造反すると、不信任案が成立してしまう。
日本維新連合に集まった民主党会派の衆院議員は51人なので、69人には18人足りない。だから菅は安心かといえば、そうとも言えない。なぜなら、先に民主党会派からの離脱届を出した16人の衆院議員のうち日本維新連合にも名を連ねたのは2人だけで、14人は加わっていないからだ。
つまり、日本維新連合の51人に別枠の反乱分子である14人を加えると、65に達する。菅と仙谷由人党代表代行が実権を握る党執行部にとっては「造反のマジックナンバー」である69に、あと一歩まで迫っているのだ。
*** 首班指名で造反が起きる ***
造反する可能性がある議員はほかにもいる。
小沢に近い鳩山由紀夫元代表の側近である中山義活衆院議員ら9人も「東京維新の会」設立に動いていると報じられた。鳩山を含めて、こうした議員たちが反「菅・仙谷ライン」で一致団結すれば決定的な勢力になる。
ようするに菅・仙谷ラインが事実上の「菅亜流政権」樹立を目指しても、衆院の首班指名選挙で負ける可能性が出てきた。
そうなると、菅の手による解散・総選挙を避けて内閣総辞職から菅亜流政権あるいは選挙管理内閣へという道を選んだとしても、仙谷たちの思惑通りの内閣は発足しない。それどころか、首班指名選挙から即・政界再編の幕が上がる可能性がある。
内閣不信任案をめぐる投票でも同じだ。69人以上の造反によって菅内閣への不信任案が可決成立すれば、菅は解散・総選挙か内閣総辞職するしかない。そこで解散しない場合は、やはり次の首班指名選挙で政界再編に突入する形になる。
民主主義国家における政権奪取は最終的に数の勝負である。原口は当然、以上のような可能性を胸に秘めて行動しているはずだ。
こうしたシナリオが現実になるかどうかは、分からない。そもそも原口の言動をみると、菅支持なのか菅打倒なのか、もうひとつはっきりしない面もある。
原口が雑誌への投稿で激烈な菅批判をしたかと思えば、一転して菅を支えるかのような発言に軌道修正したのは、日本維新連合への参加議員をできるだけ増やすためには「反執行部姿勢」を鮮明にしすぎないほうがいい、という判断があったかもしれない。若い議員たちの心理は揺れ動いている。
ただ原口の動きと小沢側近である松木謙公農林水産政務官が辞任した一件が同時進行だったのは、けっして偶然ではないだろう。
来年度予算案が年度内に成立するための衆院通過のタイムリミットは来週の3月2日だ。今週末から来週にかけて、政局は大きなヤマ場を迎える。
(文中敬称略)
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