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鳩山由紀夫元総理が、「抑止力」という言葉は「方便」と言われればそうかもしれないと発言したことが大きな波紋を呼んだ。鳩山氏は、外務・防衛両省は新しい発想は受け入れない土壌があったのではとの質問に対して「本当に強くあった。私のようなアイデアは一笑に付されていた」と発言している。さらに、こうも語っている。
「(海兵隊は)沖縄にいることでパラダイスのような居心地の良さを感じている」「相手は沖縄というより米国だった。最初から私自身が乗り込んでいかなきゃいけなかった。これしかありえないという押し込んでいく努力が必要だった」
「今頃になって、あまりに言葉が軽い」とこの「鳩山発言」は大変に不評だが、本質的な構図を告白している点に注目したい。私たちが、予感していた通りに鳩山元総理は「県外移設」を真剣に考えていたが、外務・防衛両省の安保官僚と背後にいるアメリカに締めつけられて屈伏したという構図だ。
2010年4月25日、私は沖縄にいた。沖縄県内の各市町村から大結集して「県内移設反対」を明確にした県民大集会が行なわれれた。全市町村長、全県会議員、国会議員が雛壇に並び、仲井真知事が挨拶するという「島ぐるみ」の意思表示だった。
ところが、この集会の前日に「普天間基地の移設先は辺野古に決定」というニュースが出回る。こうして、沖縄県民の意志と正反対の方向で、アメリカのコントロール下に置かれた政府は「自民党政権下の現行案に回帰」を決定していく。
私から見れば、かなり穏便な鳩山民主党が掲げていた「緊密で対等な日米関係」という言い方でさえ、「とんでもない反米だ」という受け止め方がされていたのは驚きだ。「緊密」はいいが「対等」はけしからんということ。
基地問題で言えば、「辺野古に基地はつくれない。もう一度、再協議しよう」という政権をアメリカは認めないということなるである。これまでの自民党政権が「忠実なポチ」と信じきっていたからか、「鳩山・小沢ラインは反米」と決めつける傲岸不遜な態度に出た。
沖縄基地問題の本質が見えた瞬間だった。アメリカの虎の尾を踏んだ鳩山内閣は崩壊し、小沢前幹事長も退陣する。その一部始終を見ていた菅直人政権は、「日米合意順守」「親米路線」で波風を立てないという「教訓」を汲み取ったように私には見えた。
日米合意を急いだ鳩山政権から、社民党は連立政権を離脱。その数日後に鳩山総理は「政治とカネ」「普天間問題」の責任を取ると辞任表明をした。本来なら、「沖縄基地問題」の失敗を認めた退陣であるなら、後継内閣には仕切り直しが求められていたはずだ。
ところが、連日のように「普天間はどうした」と書いていたメディアも、ウソのように静かになりました。久しぶりに「鳩山発言」で沖縄基地問題を取り上げたメディアは、後継内閣がこの問題にどう向き合っているかを検証しないまま、日米関係に悪影響と騒ぎ立てている。
鳩山氏が語った言葉も軽いが、この問題を語らない人々の心はもっと軽いのではと思う日々だ。
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