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「ヒゲの隊長」佐藤正久議員も激怒! 民主党政権下 あまりにひどい防衛省の政治利用
週刊朝日 2月15日(火)15時19分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110215-00000301-sasahi-pol
防衛省が国家防衛という本来任務から大きく逸脱し、政治的な動きを見せている。憲法違反の言論封殺だと批判も浴びる「通達」を発するやら、自民党政治家らの講演を監視していると指摘されるやら……。あたかも敵国スパイの攪乱工作まがいの所業だが、防衛省に自省する気配は微塵も見られない。異常事態だ。
民主党政権になって以降、防衛省がどうもおかしい。
「本来任務を離れた“政治的利用”がはなはだしい」
と自衛隊幹部が指摘する。
まずは、昨年11月に出された通達である。
同月3日、航空自衛隊入間基地で開催された式典で、自衛隊に協力する民間団体の代表があいさつの中で、尖閣諸島における中国漁船衝突事件の際の民主党政権の対応をあげつらい、
「菅政権をぶっつぶしましょう」
などと発言した。
その直後、防衛省文書課が作成し、北沢俊美防衛大臣以下、政務三役が了承して事務次官名で10日に発せられたのが、「隊員の政治的中立性の確保について」と題された通達だった。
その内容は、自衛隊の主催行事などに外部団体が参加する場合、「政治的行為をしているとの誤解を招く恐れがあるときは団体の参加を控えてもらう」などと明記したもので、さらに自衛隊員の外部行事への参加にも制限を設けている。
これに対し、もちろん自民党から、「言論封殺だ」との批判がさっそく飛び出したが、複数の自衛隊関係者からは、
「集会に招く相手方の思想・信条まで踏み込んで情報収集せよということになる」
などと困惑の声が漏れた。
最近、明らかになったのは別の動きだ。
1月24日付の産経新聞は、元陸上自衛隊イラク先遣隊の「ヒゲの隊長」こと佐藤正久・自民党参議院議員や、元航空幕僚長の田母神俊雄氏らの講演や会合に、防衛大臣直轄の防諜部隊である「自衛隊情報保全隊」が潜入し、現役自衛官の参加者などをチェックしていたと報じた。翌25日、佐藤氏は会見し、自身の講演で保全隊員の潜入を確認したと明らかにしている。
これに対し、北沢大臣は、
「潜入監視はない」
などと国会で否定したが、複数の自衛隊関係者は本誌の取材に、保全隊による監視活動は前述の通達を受けたものだったと証言した。
政権批判や政敵を封じるようなこれらの動きについて、元防衛大臣の石破茂・自民党衆議院議員は、
「通達は憲法に違反したもの。自民党政権なら考えられない。言論統制であり、新聞があまり問題視しないのも不思議だ。(保全隊は)上の命なくして動く組織ではない。指示があったに決まっている」
とあきれ返った。
自民党は、この講演への監視活動と、前述の通達の問題をあわせて国会で追及する姿勢だ。逢沢一郎国対委員長は1月25日の会見で、北沢大臣に対する問責決議案の提出の可能性にまで言及している。
これだけでも大問題だが、防衛省の“政治利用”はまだ尽きない。佐藤氏は、
「防衛省は私を自衛隊行事に参加させないような通達まで出そうとしていた」
と言って、「大臣官房文書課」と書かれた文書を示した。「自衛隊各種行事等における国会議員の招待等について」と題され、平成21(2009)年12月の日付がある。
この内容は、自衛隊の駐屯地や基地などの行事に国会議員を招く場合、出身地であったり、議員事務所があったりする議員以外は制限をするというものだ。
防衛省内に今もパイプがあるという佐藤氏は言う。
「私のような参院比例区選出の議員は、事務所が置かれていない地域はだめ、秘書らの代理出席もだめ、とまで明記してあるんです。これは私を狙ったもの。北沢さんは私を敵視して、『いちばん嫌いなのが佐藤だ』と言ってますから」
ただし、この文書は通達として出される寸前で止まった。
「選出方法で議員を差別するのは問題で、この通達はさすがにまずいということで、結局、出されなかった。でも、それ以来、これまで来ていた行事の招待状が来なくなり、代理出席した私の秘書だけ紹介されないこともあった。自衛隊の関係者に理由を聞くと、『勘弁してください、上からいろいろ言われていて』と言うんです」(佐藤氏)
佐藤氏が国会でこの文書を問題にすると、防衛省は「検討過程の文書」だと認めた。昨年11月25日の参議院外交防衛委員会では、答弁に立った北沢大臣が、
「こういう文書を佐藤議員が持って、こういう場で言うこと自体、私は大変不満です。できれば、どこから入手されたか、自衛隊の将来のためにぜひ教えていただきたい」
と、ネタ元を明かせと言わんばかりの発言をしている。
さらに、こんな証言も飛び出した。冒頭の自衛隊幹部がこう語る。
「監視の目は野党や自衛隊の現役やOBだけでなく、身内の民主党内にさえ向けられています。菅内閣改造直後の昨年9月、防衛族の前原誠司氏が外務大臣に就任したことを警戒して、防衛省内の前原人脈を洗い出し、リスト化しようという動きがあったのです」
防衛と外務は国家防衛の両輪だが、見解を異にし、ぶつかることも少なくない。そんな影響もあったのか。
ただし、これも実行寸前で未遂に終わったという。
「陸海空の制服組および内局の背広組のうち、前原氏と面識のある幹部をすべてリストアップすることが官房で検討されたようです。しかし、前原氏の議員歴は長く、勉強会や個別事案の問い合わせなど接する機会が多いため、ほとんどの幹部が当てはまる。意味がないと、作成しないことになったのです」(同幹部)
この件について佐藤氏も、
「そういった噂は私も聞いている」
と話した。
それにしても、一連の問題では、北沢大臣ら政務三役だけでなく、防衛省を束ねる官房までが“政治的”に動いているようだが、いったいこれはどういうことか。
「出世のためでしょう」
と自衛隊関係者が言う。
「次官ポストを射止めるためには政治力が要る。我々“制服組”が命を張って国を守っている一方で、官房の“背広組”は茶坊主のように大臣におもねっているのです」
そして、こうあきれ返る。
「人事闘争に政敵のあら探し。これではまるで共産政権のようです」
佐藤氏も官房の“茶坊主”ぶりに辟易としているようで、こんな事例を挙げた。
「官房は、私のブログなどをチェックし、コピーして大臣に届けたりしているそうです。『こんな批判してますよ』って。バカですよね。自民党が北沢大臣の問責決議に言及すると、『自民党はどれだけ情報を持っているのか聞いてくれ』と防衛省幹部から頼まれた新聞記者もいると聞いています」
本誌は北沢大臣および防衛省に、前原氏に関する調査などを確認し、見解を求める質問状を出した。すると、報道官、報道室長、文書課長の3人が異例にも編集部を訪れ、
「事実無根。500%ない。記事にはしないでいただきたい。記事が出れば大臣名で抗議します。場合によっては法的措置も考えます」
と通告。国会では認めた「検討過程の文書」の存在まで否定した。さらにしつこく記事が出るかどうかを探るなど、異常な反応を見せたのである。
前出の石破氏は、
「やっていいことと悪いことがある。……この国はどうなってしまったのか」
と全体を俯瞰して嘆く。
他方、佐藤氏はこう憂えた。
「自衛隊は国民のものなんです。党の自衛隊とか、あるいは大臣の私的な自衛隊になってはおかしいんですよ」
まさに、そのとおりだ。尖閣問題や北朝鮮の動向など、国家防衛の観点から防衛省が対処すべきことは山積している。そんななかで、大臣や防衛省の背広組らは、いったい何を防衛しようとしているのだろうか……。 (時任兼作)
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