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週刊ポスト2011年2月18日号
2011年2月7日10時00分
エジプトの騒乱で、またしても日本政府の対応の鈍さ、危機管理の甘さが指摘されたが、この政権の能力を考えれば、残念ながら想定の範囲内の失策だ。30年間も国を支配してきたムバラク大統領の権力に蟻の一穴を穿ったのは、怒れる国民のデモとインターネットだった。ツイッターやフェイスブックで反体制派が結束、連絡を取り合ってデモを繰り返した。さらに外国に情報発信し、各国メディアに国の窮状を訴え続けたことで、独裁者は万事休した。
デモとネット――実は日本でも、権力構造に疑問を持つ市民たちの運動が広がっているが、やはり権力者と大手メディアによる巧妙な情報操作で、それが覆い隠されているのである。
昨年秋から全国で、「検察批判デモ」「小沢一郎支持デモ」が頻発していることを報じた大マスコミはほぼ皆無だ。昨年10月の銀座デモに始まり、ネットの呼びかけに応じて全国で自然発生的に同主旨のデモが起き、これまで3か月間に北陸から沖縄まで約15回も開かれ、北海道、東北でも今後、開催が検討されている。羊のようにおとなしい、といわれてきた日本国民が、権力に異を唱えて週に1度以上のペースでデモを行なうなど、40年も昔の学園紛争以来のことかもしれない。
また、インターネットの掲示板やブログ、ツイッターにも小沢支持サイトや検察批判発言が多い。小沢嫌いの大マスコミでさえ、読売新聞やフジテレビ・産経新聞のネット世論調査では、小沢支持が多数派という結果が出ている。ただし、こうした結果が大きく報じられることはない。
もちろん、市民運動が起きているからといって、小沢氏が日本の救世主であるわけではない。エジプトで市民が支持するエルバラダイ・前IAEA(国際原子力機関)事務局長にしろ、中国の民主化運動家にしろ、彼らが本当に今の権力者より国を良くして民衆を満足させるかは未知数だ。フランス革命を主導したジャコバン派のロベスピエール、サン・ジュストらは、恐怖政治で国民を苦しめ、最後は自ら断頭台に上がった。
それでも、現在の日本も含めて、正しい情報公開、情報伝達がない社会では、それに気付いた国民の自発的行動と意思は尊重されるべきだ。今の時代に、中国のような一党独裁、武力による弾圧がまかり通る国はまれであり、むしろエジプトのムバラク政権が一見、民主主義を装ってきたように、制度的には近代国家、しかし情報操作によって一部の既得権益集団が権力を独占するという手法こそ警戒しなければならない。
小沢氏は強制起訴された1月31日、今後は国民にどのように主張を訴えていくか、という本誌の直撃に、以下のように答えた。
「国民はかなりいろいろとわかってきているように思いますね。メディアが一番わかっていないんだ。僕はぶら下がりであれ何であれ、いったことをきちんと書き、伝えてくれるのであれば、いくらでも、どこででも話すんだがね。裁判だけでなく、政治がこのままでは大変になる。国民のために必要とされる限り、どこへでも行き、話をし、何でもやるつもりだ」
皮肉にも、こうした「国民を味方につけた言い方」に、大マスコミや権力者はカチンとくるようだ。
※週刊ポスト2011年2月18日号
[ 2011年2月7日10時00分 ]
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