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「一部可視化」
はインチキだ
最高検は、法務省と共謀のうえで大阪地検特捜部による厚労省元局長の村木厚子さんえん罪事件を契機とした検察機構に対する社会的批判の高まり、同時に解体的危機の進行を押しとどめるために裁判員裁判の対象事件で実施している取り調べの一部録音・録画(可視化)を、東京、大阪、名古屋の各特捜部が捜査する事件にも導入することを明らかにした(一〇・一二・六)。一部可視化は、検察のストーリーに沿った容疑者の供述調書を補強するものでしかないが、改めてこの手法をコマーシャルとして動員してきた。全く反省していないことを自ら証明してしまったようなものだ。
さらにその姿勢をダメ押しで確定するように村木事件の「検証結果」(一二・二四)と称して前田恒彦元主任検事をはじめとする大阪地検特捜部の常習化した脅迫とデタラメな取り調べ、証拠捏造を繰り返してきた検察機構の組織的共犯関係、自白偏重主義と調書裁判の欠陥、えん罪再生産装置である代用監獄制度まで掘り下げることもなく、特捜部の延命を前提とした特捜部の「不祥事」としてきり縮め、自己保身と責任回避を目的とした報告書を公表した。早く終わりたくてしようがないのだろう。しかも被害者である村木さんや取調べ対象者に対する調査は一切やらず、身勝手なストーリーをまたしても作りあげた。あげくのはてに「再発防止」などと逃げ切るために押し出したが、取調べの全面可視化に触れることもなく一部可視化を提示してきた。また、前田元検事がこれまで関与していた四一の事件について証拠改ざんはなかったと言いだす始末だ。四一事件についてどのように関与し、取り調べたのか、具体的な証拠の再捜査などをしたことさえも明らかにすることができないのである。インチキ「検証結果」を撤回し、詳細な報告書を明らかにしろ。
法務省は、事前の最高検との謀議で決めたシナリオ通りに、この六月にも犯罪捜査の取り調べの一部可視化に向けた刑事訴訟法改悪案を準備しつつ、法制審議会に諮問して国会に提出するのだという。改悪法案阻止、全面可視化をかちとろう。
小沢「政治資金」
問題でも脅迫
この間、人権侵害とデッチアゲ捜査を繰り返してきた検察、警察の本質を「披露」する事態が続出している。取調べの全面可視化の早急な実現が求められていることを突きつけている。
第一は、一連の小沢一郎のカネ問題に対する検察の立ち振る舞いである。大阪地検特捜部の前田元検事は、当時、小沢民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件において元秘書の大久保隆規被告の取調べ(政治資金規正法違反)の応援で東京地検特捜部として行っていた。弁護側は公判前整理手続きで大久保供述調書の任意性に疑義があることを指摘し、裁判で争うことを通告した。調書の中には、大久保被告が取調べの当初では「収支報告書の作成は石川知裕秘書(小沢一郎元秘書、衆院議員)らに任せており、関わっていない」と否認していたが、前田の強引な取り調べによって「私に責任がある」とデッチアゲ調書を作られてしまった。検察は、前田によるデッチ上げが明白だったため防衛しきれないと判断し、五通の大久保調書を公判に提出しないと東京地裁に通告した(一・二〇)。
さらに石川被告、池田光智秘書に対しても東京地検は強引な取調べを行っていたが、勾留中の二人は、検事による「このままでは保釈されないから、話したほうがいい」などと脅され、「虚偽の自白」を強要されてきたことを弁護人に伝える手紙を出していた。弁護側は、五通の手紙を不当な取り調べの証拠として地裁に提出した。勾留中の手紙、メモ等は、不当な取調べを立証していく証拠能力が強く、これまでの裁判において証拠採用されるケースが多くなってきている。
検察犯罪はこれだけではない。石川の秘書に対して検察が「女性秘書に容疑者として取り調べる目的を告げずに呼び出し『逮捕できる』と威圧的な言葉を投げつけた。子どもが通う保育園や石川議員の事務所への連絡を懇願したのに禁止」(弁護側意見書)し、食事を与えず十時間も取り調べを強行していたのだ。石川弁護団は、検察が秘書の「違法」拘束を脅迫ネタにして石川に供述調書に署名を強要したことを告発している。
暴走していた地検特捜部は、検察審査会が小沢一郎について起訴相当と議決(一〇年四月)後、石川被告に再聴取したが、石川の「違法な資金と思わなかった」という供述変更に対して、検察が「供述を変えると、小沢氏からの圧力があったと検審の印象が悪くなり、小沢氏が強制起訴される」「それじゃ上が納得しない」などと恫喝していた。この五時間にわたる再聴取を石川は録音しており、不当な取調べを立証していくために証拠申請した。
つまり、検察審査会が強制起訴の根拠としたのが小沢秘書たちの「供述調書」だったが、検察の大久保調書撤回とデッチ上げ調書の存在によって「陸山会」土地取引事件裁判、検察審査会の小沢強制起訴の前提が瓦解することになってしまうのだ。慌てふためく検察は、報道に対して石川再聴取について「検審がどうのとか、強制起訴とか、不適切な言葉を使ったと思う」と認めつつ、「全体の流れ、文脈があるわけだから、限られた言葉だけを取り出して判断するのは危険。録音した人の思惑もあるわけだから」などと強弁するしかなかった。またしてもデッチアゲストーリーを土台にしたえん罪生産マシーンの効力発揮を再露呈しつつ、根拠説明ぬきで「任意性に問題はなく、刑訴法上、取調べに違法性はない」と開き直ることしかできないほど追い詰められ、墓穴を掘っているのだ。
菅政権は、「政治とカネ」問題のケジメをつけるなどと豪語し、政権延命のバネとして小沢問題を政治利用し、検察犯罪をも動員してミエミエの茶番劇の政争を展開している。取り調べの全面可視化にブレーキをかけ続ける法務省・警察庁官僚に忠実な菅政権の腐敗・堕落を許してはならない。
「知的障がい」者
へのデッチ上げ
第二のメルクマールである事件は、大阪の男性が大阪府警によって現住建造物等放火容疑で不当逮捕(一〇年一月)・勾留(一一ヶ月以上)されていた権力犯罪だ。取調べの全面可視化が早急に必要な事態が発覚した(朝日新聞/一・二〇)。
男性は状況などについて詳細に説明できない「知的障がい」を持っていたが、府警にデッチ上げ逮捕され、大阪地検堺支部に手前勝手な調書を作られてしまった。起訴されたが、検察の補充捜査で自白調書の信用性に疑いが生じ、公判維持ができないと判断した検察幹部は、自らのミスを隠蔽しつつ起訴を取り消し、釈放した。朝日新聞は、地検の一部可視化による取調べDVDを入手し、分析したところ男性が検事によって誘導され、そのまま追認しているところが映っていた。検察幹部は、逃げ切ることができず「検事が男性の言葉をまとめすぎた」と認めざるをえなかったが、「捜査自体は違法ではなく、起訴当時の判断に問題はなかった」と支離滅裂な言い訳で遁走するしかなかった。
東京弁護士会の副島洋明弁護士は、「今回は、障がいの特性を確認できる様子が偶然にも録画されたというが、実際は取り調べの一部を録画するだけでは調書の作成過程が適切だったか判断できない。知的障がい者が捜査対象になった場合には、障がいの専門家を立会わせる制度が必要だ」と強調し、全面可視化の実現を訴えた。
ヤクザまがいの
暴力・人権侵害
第三は、大阪府警によるヤクザ丸出しの「拷問」取調べだ(一〇年九月)。遺失物横領容疑で大阪の男性が任意で府警に七時間も不当拘束され、人格否定、家族に対する脅しも含めた罵詈雑言を受けた。男性は、この「拷問」をICレコーダーで隠し録音していた。府警の取り調べ警察官による「警察をなめとったらあかんぞ。殴るぞ」「一生を台無しにするぞ」「家族までいったる」などとどなったり物をたたいたりする音が記録されていた。男性の肩、太ももなどを叩き、パイプいすを蹴るなどの暴行まで強行していた。
男性は弁護団に支えられ府警を特別公務員暴行陵虐容疑で地検に告訴した。また、この録音を社会的に明らかにし、メディアが一斉に報道して府警に抗議が殺到した。府警防衛のために大阪地検は、脅迫罪で略式起訴で収拾しようとしたが、府警・地検との共倒れを恐れた大阪簡裁は「略式不相当」(一〇・一二・二八)と判断し、公判審理することになった。任意の取り調べでも全面可視化が必要であることを証明する事件だった。
全面可視化否定
する「検討会議」
村木えん罪事件による大阪地検の危機を発火点とする検察機構の全国的波及、および治安弾圧体制の瓦解を恐れた法務省・警察庁官僚らは、緊急避難として法相の私的諮問機関として「検察の在り方検討会議」を開催させた(一〇年一〇月)。そして、この三月にも集約する。
会議の座長は死刑反対論者であったはずが転向し、死刑執行を強行した千葉景子だ。日弁連から「(千葉)前法務大臣は、今般の不当起訴事件(村木事件)の公判継続中に現職の法務大臣であったものであり、第三者性が確保されるかどうかについて重大な懸念がある。法務省が真に失われた検察への信頼を回復しようとする立場にあるかどうか、重大な疑問がある」と批判されるほどだ。すでに千葉は、法務省官僚との合作で「被疑者取り調べの録音・録画の在り方について」中間報告で「全事件の可視化は多大な負担」「現実性にも欠ける」などと合唱していた。こんな千葉を座長とする検討会議は、最初から取り調べの全面可視化を弾圧するための装置として準備したものでしかない。会議の委員メンバーを見れば、その目的が明らかである。事務局を法務省に忠実な連中で配置し、一四人の委員のうち検察の裏金隠しに奔走し、裁判員制度導入の下手人となった但木敬一元検事総長、佐藤英彦元警察庁長官、井上正仁東京大学大学院教授、後藤昭一橋大学大学院教授、龍岡資晃元福岡高等裁判所長官、原田國男元東京高等裁判所判事らが可視化反対派としてスクラムを組み、全面可視化推進派をマークしているという。
検察裏ガネ
問題の解明を
検討会議の委員である江川昭子さんは、昨年の「待ったなし! 今こそ可視化の実現を 〜冤罪はこうして作られる〜」取調べの可視化を求める市民集会(一〇・一二・二)で「検討会議の事務局は、検察官僚だ。可視化実現派の私が発言するたびに反対派の委員が常に対抗的に発言をしてくる。こういうマンツーマンディフェンスの中で論議をしている」と批判している。検討会議反対派の敵対策動を許さない厳しい監視が必要だ。
とりわけ大阪地検特捜部問題を根本的に切開するというならば、決裁プロセス、機構のいじくりなどでゴマカスのではなく、検察の裏金作りと使い込みの犯罪を取り上げる必要がある。検討会議の出発点から、検察組織の裏金問題に触れようとしない官僚らの意図が明白なのである。
そもそも大阪地検の腐敗・堕落の始まりの一つは、歴史的な裏金作りを隠蔽してきた組織的犯罪に起因している。決定的な発覚が裏金作りを繰り返し告発してきた元大阪高検公安部長だった三井環の不当逮捕だ(〇二・四・二二)。大阪地検特捜部は、三井さんが裏金問題を告発するためにテレビ出演する直前に詐欺・電磁的公正証書原本不実記録・同供用、公務員職権乱用で逮捕し、起訴してしまった。裁判では懲役一年八カ月の実刑が確定し静岡刑務所に追い込まれた。三井さんは、出所後、『ある検事の告発 「正義を殺した検察・裏ガネ作りの全貌』(双葉新書)など精力的に検察批判本を出している。検討会議は、検察の腐敗・堕落を検証するというならば三井本を資料として論議してみろ。犯罪者たちが己の犯罪を裁くことはできないから裏金問題をとりあげないのだろう。全面可視化推進派は、検討会議で検察裏金問題について議題提案し、徹底的に追及せよ。
取り調べ一部可視化は、すでに検察庁、警察庁が裁判員裁判の強行を踏まえて取調べの自白部分、供述調書を被疑者に読み聞かせ、署名・押印させ、自己の供述内容に間違いないと語っているような状況を録音・録画することを試行している。しかしその実態は、取調べ側の立証に都合がいい「よいとこ撮り」を優先し、人権侵害に満ちた自白の誘導と強要、「拷問」に近い脅迫場面を記録することはない代物だ。だから法務省と最高検は、一部可視化法制化に踏み切ろうとしているにすぎないのである。
最高検の村木さんに対する「謝罪」とは、そんな意図を含んだものでしかない。国家権力の足利事件、布川事件、志布志事件、氷見事件のえん罪被害者に対する「謝罪」も同様だ。これ以上、代用監獄下による密室での取り調べ、「拷問」に近い脅迫による供述調書でっち上げによるえん罪被害者を生み出さないために、その第一歩として全面可視化制度を導入させなければならない。(遠山裕樹)
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