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国会があす召集されて政治の季節再来です。私たちが目にするのは新たなステージでしょうか、それとも、またも繰り返す政権瓦解(がかい)と再編でしょうか。
頻繁にやりすぎだ、政治をおかしくしている−などと読者からもしばしば批判をこうむる世論調査ですが、今回はさすがに注目度が高かったのではありませんか。
菅再改造内閣の発足を受けたメディア各社の電話調査。内閣支持率はおしなべて回復したものの微増にとどまりました。5ポイントから9ポイントといったところでしょうか。
支持率30%前後の危険水域から菅直人首相が脱せないでいることに変わりはありません。
◆婦唱夫随のけんか腰
政権交代の「期待外れ」感、民主党政権の体たらくへの、世間一般の厳しい空気がわかります。
一方、意外性で波紋が収まらない与謝野馨氏の経済財政相起用には、内外の批判と攻撃にさらされるダメージを計算した上でのことかは知りませんが、政策論議で中央突破を図る首相の意気が感じられて興味深いものがあります。
暮れから年初にかけて菅首相の「けんか腰」言動が際立ちます。
麻生自公政権の中枢にいた与謝野氏起用もそうですが、先日の民主党大会では社会保障や税の議論に参加しなければ「歴史への反逆行為だ」などと野党を挑発していました。
首相の伸子夫人が講演で、支持率を理由に夫が政権を投げ出すことはないという趣旨の発言をしています。
首相もネット放送番組で「徹底的にやってみる。気持ちがなえて辞めることはしない」と。夫唱婦随ならぬ婦唱夫随の雰囲気が…。
攻撃性と高揚感。それは与謝野人事に続く国会対策の布陣にも表れます。野党の問責決議で渋々官房長官を降りた仙谷由人氏。党代表代行として自民や公明党との裏折衝にも当たるんだそうです。
◆市民的保守の政治家
首相はその仙谷氏を与謝野氏が担当する社会保障・税一体改革の党側責任者に据えました。それが野党の神経を逆なでしようが知ったことでない、とばかりに。
菅首相が地金を見せているのです。サラリーマン家庭に育ち市民運動を経て、長い小政党暮らしから政権党のトップに立った。
素封家、お大尽といった従来型首相像とは縁遠く、言葉は悪いのですが「粗こつ」とか「ずるさ」を、首相の表情や物腰に見てとる人が少なくありません。
その辺を元首相の中曽根康弘氏がかねて喝破しています。半年ほど前のインタビュー(二〇一〇年六月十七日付、朝日新聞)で「菅君は市民的保守の政治家だ」として次のように評しています。
「彼は財政再建で自民党と協力していいという。権力をとれば自分の政治理念を実現するために自民党と一緒にやる」「菅君はウイングを左から右に広げるだろう。政策をかなえるために権力機構の中にあえて入っていくわけだ」
そういえば昨年来の国会演説でも菅首相は、自民党政権のもと先送りされてきた懸案の処理に意欲を示しています。
「政策面で本気でやり遂げたいのは、財政再建の糸口をつかむこと。そして、次の世代につなげていきたいと、最近よく言っています」−夫人の著書の一文です。
民主党マニフェストへのこだわりがさほど感じられないのも首相の特徴といっていいでしょう。
「高邁(こうまい)な理想より現実路線」の人。地金をさらし、なりふり構わず、この国会に打って出ようとしている。そんなふうにも見えてきます。
与謝野氏らを軸に進むはずの医療、介護、年金といった社会保障改革の政府案づくりは、野党時代に民主が口を極めて批判した自民党政府の政策に酷似していくだろうとささやかれます。財源など理由に。
そして菅政権の視野に消費税の増税が入ってきています。となれば民主と自民を隔てる政策の違いは無きに等しい。首相が狙うのはそうしたステージなのでしょう。
これと信ずる政策実現のためには、挑発も妥協も、何でもするということなのかもしれません。
もちろんそれも政権に体力があっての話。だから時間との競争、短期決戦です。小沢一郎氏の政治とカネの行方もやっかいですし、マニフェスト逸脱が党内外にハレーションを引き起こすなら一気に政変の可能性も否めません。
◆自民も堂々の論戦を
リングはこの国会です。きょう党大会の自民党。菅政権を衆院解散に追い込めば政権奪回できると勢いづいています。
ただし要注意です。ゆとりのまだあった時代とは違います。徹底対峙(たいじ)の戦法が不毛に流れるようならば国民は恐らく支持しない。
首相の挑発をどうこなすか、代わって政権を担うに足る、理にかなった堂々の論戦を求めます。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011012302000049.html
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