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民主党の小沢一郎元代表の政治資金問題で、小沢氏による衆院政治倫理審査会での説明が実現しない見通しになった。極めて残念な結果である。
小沢氏は出席の時期について「予算成立後を最優先とする」と条件をつけ、事実上、拒否する考えを政倫審会長に伝達した。これを受けて岡田克也幹事長が、出席を求める議決を断念する意向を示した。
小沢氏はまもなく強制起訴される。一人の刑事被告人として、法廷で潔白を訴える権利が守られるべきなのはいうまでもない。そこでは当然ながら「推定無罪」の原則が適用される。
しかし、政治家小沢氏に対しては言行不一致を指摘しなければならない。
小沢氏は検察審査会の2度目の議決で強制起訴が決まったあと、政倫審出席について「国会の決定にはいつでも従う」と述べていた。
最近は、「すでに司法手続きに入っている」から出席する合理的理由はないと主張する一方、政治家としての総合判断から通常国会中にはいずれ出席するとしていた。
東京地検が小沢氏の事務所などを捜索してからすでに1年。国会で説明する機会はいくらでもあったのに果たさず、いまだに条件をつけている。時間を稼ぎ、「逃げ切り」を図る戦術と見なすほかあるまい。
小沢氏自身が強調しているように、政倫審の生みの親は小沢氏である。
ロッキード事件で損なわれた政治への信頼をどう回復するのか。衆院議院運営委員長だった小沢氏が対処にあたり、26年前に生まれたのが政治倫理綱領であり、その実効を上げるための政倫審だった。
綱領にはこう記されている。
「われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯(しんし)な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない」
この言葉を、小沢氏は忘れたのだろうか。小沢氏がかたくなな姿勢を崩さず、政治家としての説明責任を果たさないのなら、小沢氏が唱道してきた政治改革は果たして真摯なものだったのか、原点から疑われることになろう。
この事態を受けて、民主党執行部は証人喚問や、離党勧告の検討に入る。小沢氏が政倫審出席を拒否する以上、当然の対応である。
これを見過ごし、何もせずに放置すれば、週明けに召集される通常国会はまたしても「政治とカネ」をめぐる不毛な対立に終始するだろう。
新年度予算をはじめ社会保障と税の一体改革、自由貿易と農業再生など、重要な政策課題は多い。そのための「熟議」の場を台なしにして良いのか。小沢氏と民主党執行部の双方が問われている。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1
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