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いろいろ意見が異なる場合も多いのですが、以下にブログ『五十嵐仁の転成仁語』の記事、「賃上げこそ景気回復のカギ。それなのに何故……」を転載いたします。日本の経済構造と春闘について考えるための参考になりますよ。
>(引用開始)
景気が悪いということは、モノが売れないということです。売れないのは、買う人が少ないからです。 買うお金がなければ、モノは売れません。売れるようにするためにはどうすればよいのでしょうか。買えるだけの収入(可処分所得)を増やせばよいのです。
それなのに何故、賃金を上げようとしないのでしょうか。可処分所得を増やせば購買力が高まり、内需が拡大し、景気が良くなり、経済も成長するというのに……。
今日の『毎日新聞』に「春闘『1%上げ』の攻防 労組『5年で賃金回復』」という記事が出ています。「経営側は雇用重視」という見出しとともに……。
昨日、日本経団連が「経営労働政策委員会報告」を決定し、春闘がスタートしました。すでに連合は、「給与総額の1%増」という方針を決めていますが、「ベアや賃金改善は(今春闘で)争点にはならない」と、けんもほろろの対応です。
今日の『日経新聞』の一面には、「賃上げ要求 トヨタ労組見送り」という記事も出ています。「労使交渉に影響力のあるトヨタ労組の動きで、要求段階から賃上げなしの流れが産業界に一段と広がる見通し」で、「産業界の主要労組では日立製作所やパナソニック、NECなど大手電機各社の労組も賃金改善を求めない見通しとなっている」そうです。
今年の春闘は、始まった途端に、終わりそうな気配です。経営側は、「賃金改善は争点にならない」と言い、連合の主要組合は「賃金改善を求めない」と言うのですから……。
これこそ、典型的な労使協調でしょう。労使が足並みを揃えて、「賃金改善」を避けているというわけですから……。
それが春闘に向けての方針だというのですから、笑止千万です。何のための労働組合なのでしょうか、これで景気が回復するとでも考えているのでしょうか。
『毎日新聞』の記事によれば、「厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、09年に一般労働者の賃金はピークの97年に比べ5.1%減少しており、『減少分を1%ずつ、5年かけて復元させる』ことを目指す」のが、連合の「1%増」方針の意味だといいます。
「だが、97年当時に比べて今日、所定内賃金は7%も低下している。その復元なのに、なぜ『1%』なのか。拳を振り上げた直後に、頭を垂れてしまっている感がある。それっぽっち?とガックリ来る人も少なくないのではないか」との批判もあります。これは、私の論攷「歪む社会 経営者よ目をさませ」が掲載された『ひろばユニオン』11年1月号の「扉のことば」です。
『ひろばユニオン』は連合系の学習誌で、84頁には、自動車総連や電機連合の名刺広告が掲載されています。その雑誌の巻頭言が「それっぽっち?」という賃金改善でさえ、要求を手控えるというのですから呆れてしまいます。
ところで、労働者の賃金や所定内賃金のピークが97年であったということは重要です。この年の4月から消費税が3%から5%に引き上げられたのをはじめ9兆円の負担増によって景気が一気に悪化し、日本社会が大きく変容してしまったからです。
また、翌98年から賃金が下がり続けているということは、2002年から07年まで5年間続いた「戦後最長の好景気」のときでさえ、労働者の賃金は改善されなかったということになります。そのため、企業が生み出した付加価値における人件費の割合を示す労働分配率は、02年から07年まで一貫して下がり続けてきました。
その結果、労働者の購買力が低下して深刻なデフレ・スパイラルに直面したにもかかわらず、09年の資本金10億円以上の大企業の内部留保は244兆円にもなり、手元資金は52兆円も積みあがりました。10年第3四半期の上場企業の連結決算は前年同期比80%増で、半数が増収増益になっています。
昨日、記者会見した日本経団連の大橋洋治副会長は、「(内部留保は)雇用ではなく、まずは設備投資に回し企業の成長につなげていくべきだ」と述べたそうです。何を、寝ぼけたこと言ってるんでしょうか。
この大橋さんの発言からすれば、「経営側は雇用重視」という『毎日新聞』の見出しは間違いだということになります。経営側は、賃金改善でも雇用でもなく、「まずは設備投資」だと言っているのですから……。
以前、法人税引き下げの条件として雇用拡大を求める意見に対して、日本経団連の米倉会長は記者会見で「私が約束したとしても経済界がやってくれるかどうか。経団連は予測値を提出済みだ。資本主義でないようなことをやってもらっては困る」と述べて反論しました。「経営側は雇用重視」というのは、記者の思いこみにすぎません。
この記事を読めば、大橋副会長は内部留保が積み上がっていることを否定しなかったようです。それを賃上げや雇用ではなく、設備投資に回そうというわけです。
こんなにモノが売れないときに、設備投資によって生産を拡大しようというわけですから、いったい何を考えているのか、と言いたくなります。問題は消費不況にあるのですから、拡大するべきは生産ではなく消費でしょう。
購買力を高めて消費を拡大するためにこそ、多額に積み上がった内部留保を使うべきです。連合の古賀会長は5日の会見で「賃金増額は消費を喚起し、内需を活性化する。これが企業収益につながる」と主張したそうですが、こちらの方が正論です。
前掲の『ひろばユニオン』に掲載された拙稿「歪む社会 経営者よ目をさませ」で、私は次のように書きました。この論攷を、ぜひ、日本経団連の米倉会長や大橋副会長、それに、賃上げ要求を手控えようとしているトヨタ、日立、パナソニック、NECなどの連合傘下の大手労働組合幹部の皆さんに読んでもらいたいと思います。
生産者は同時に消費者であり、生活者でもあるということを忘れないようにして欲しいものです。社会の利益を犠牲にして会社の利益を図ろうとする経営は歪みを生み、やがては、会社がよって立つはずの社会のあり方をも歪めてしまうでしょう。今日の日本は、そのような方向に行きつつあるのではないかと、大きな懸念を抱くのは私だけでしょうか。
そのような方向から転換し、会社の利益が従業員や地域社会などのステークホルダー(利害関係者)全体の役に立ち、社会の利益にもなるような会社こそ、今日の企業経営のあるべき姿ではないでしょうか。賃金の引き上げは、そのための第一歩なのです。それによって内需を拡大し、景気を回復することこそ、今日の苦境から脱出できる唯一の活路なのではないでしょうか。労働組合の取り組みが、いま社会全体のために求められているのです。
<<(引用終了)
記事の冒頭に、五十嵐氏はこう書かれています。
「景気が悪いということは、モノが売れないということです。売れないのは、買う人が少ないからです。 買うお金がなければ、モノは売れません。売れるようにするためにはどうすればよいのでしょうか。買えるだけの収入(可処分所得)を増やせばよいのです。
それなのに何故、賃金を上げようとしないのでしょうか。可処分所得を増やせば購買力が高まり、内需が拡大し、景気が良くなり、経済も成長するというのに……」
と。
この論理が納得できない方もいらっしゃるのでしょうか。あるいは、これを左翼特有の論理だと受け取る方もいらっしゃるでしょうか。とすれば、あなたは誤解しています。引用者の私自身は、あきらかに左翼(社民、共産、昔の新左翼)ではなく、保守本流、保守リベラルに共感しているからです。
また、「売れるようにするためにはどうすればよいのでしょうか。買えるだけの収入(可処分所得)を増やせばよいのです」も、単純にして正しい論理だと考えますが、そんなの賃上げを正当化するための欺瞞的な言い訳にすぎない、と受け取る方がいらっしゃるのでしょうか。
これでギリギリの国民生活なんだし、菅・民主党は自民党政権以上の増税をたくらんでいるし、収入が増えなくちゃ内需が増えるわけはない、ならどうでしょうか。
それでも納得できないとしたら、国家財政に厚く援助されたアメリカ製品とか途上国の安価な製品を輸入すればいいじゃん、と考える日本の破壊論者です。主にグローバリゼーションを理由にして、人件費を原料費や設備費と同一に考え、その削減に血眼になってきた悪徳商人たちと同じ国賊です。なお、たった1%の賃上げがデフレ深刻化させると主張する経済オタクは、さすがにバカにされるだけですよ。
※ブログ『五十嵐仁の転成仁語』は、ここです。
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