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賃上げこそ景気回復のカギ。それなのに何故……/ブログ『五十嵐仁の転成仁語』より転載
http://www.asyura2.com/11/senkyo104/msg/965.html
投稿者 wordblow 日時 2011 年 1 月 19 日 21:35:53: 0b5D99uguBdUI
 

いろいろ意見が異なる場合も多いのですが、以下にブログ『五十嵐仁の転成仁語』の記事、「賃上げこそ景気回復のカギ。それなのに何故……」を転載いたします。日本の経済構造と春闘について考えるための参考になりますよ。


>(引用開始)

 景気が悪いということは、モノが売れないということです。売れないのは、買う人が少ないからです。 買うお金がなければ、モノは売れません。売れるようにするためにはどうすればよいのでしょうか。買えるだけの収入(可処分所得)を増やせばよいのです。
 それなのに何故、賃金を上げようとしないのでしょうか。可処分所得を増やせば購買力が高まり、内需が拡大し、景気が良くなり、経済も成長するというのに……。

 今日の『毎日新聞』に「春闘『1%上げ』の攻防 労組『5年で賃金回復』」という記事が出ています。「経営側は雇用重視」という見出しとともに……。
 昨日、日本経団連が「経営労働政策委員会報告」を決定し、春闘がスタートしました。すでに連合は、「給与総額の1%増」という方針を決めていますが、「ベアや賃金改善は(今春闘で)争点にはならない」と、けんもほろろの対応です。
 今日の『日経新聞』の一面には、「賃上げ要求 トヨタ労組見送り」という記事も出ています。「労使交渉に影響力のあるトヨタ労組の動きで、要求段階から賃上げなしの流れが産業界に一段と広がる見通し」で、「産業界の主要労組では日立製作所やパナソニック、NECなど大手電機各社の労組も賃金改善を求めない見通しとなっている」そうです。

 今年の春闘は、始まった途端に、終わりそうな気配です。経営側は、「賃金改善は争点にならない」と言い、連合の主要組合は「賃金改善を求めない」と言うのですから……。
 これこそ、典型的な労使協調でしょう。労使が足並みを揃えて、「賃金改善」を避けているというわけですから……。
 それが春闘に向けての方針だというのですから、笑止千万です。何のための労働組合なのでしょうか、これで景気が回復するとでも考えているのでしょうか。

 『毎日新聞』の記事によれば、「厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、09年に一般労働者の賃金はピークの97年に比べ5.1%減少しており、『減少分を1%ずつ、5年かけて復元させる』ことを目指す」のが、連合の「1%増」方針の意味だといいます。
 「だが、97年当時に比べて今日、所定内賃金は7%も低下している。その復元なのに、なぜ『1%』なのか。拳を振り上げた直後に、頭を垂れてしまっている感がある。それっぽっち?とガックリ来る人も少なくないのではないか」との批判もあります。これは、私の論攷「歪む社会 経営者よ目をさませ」が掲載された『ひろばユニオン』11年1月号の「扉のことば」です。
 『ひろばユニオン』は連合系の学習誌で、84頁には、自動車総連や電機連合の名刺広告が掲載されています。その雑誌の巻頭言が「それっぽっち?」という賃金改善でさえ、要求を手控えるというのですから呆れてしまいます。

 ところで、労働者の賃金や所定内賃金のピークが97年であったということは重要です。この年の4月から消費税が3%から5%に引き上げられたのをはじめ9兆円の負担増によって景気が一気に悪化し、日本社会が大きく変容してしまったからです。
 また、翌98年から賃金が下がり続けているということは、2002年から07年まで5年間続いた「戦後最長の好景気」のときでさえ、労働者の賃金は改善されなかったということになります。そのため、企業が生み出した付加価値における人件費の割合を示す労働分配率は、02年から07年まで一貫して下がり続けてきました。
 その結果、労働者の購買力が低下して深刻なデフレ・スパイラルに直面したにもかかわらず、09年の資本金10億円以上の大企業の内部留保は244兆円にもなり、手元資金は52兆円も積みあがりました。10年第3四半期の上場企業の連結決算は前年同期比80%増で、半数が増収増益になっています。

 昨日、記者会見した日本経団連の大橋洋治副会長は、「(内部留保は)雇用ではなく、まずは設備投資に回し企業の成長につなげていくべきだ」と述べたそうです。何を、寝ぼけたこと言ってるんでしょうか。
 この大橋さんの発言からすれば、「経営側は雇用重視」という『毎日新聞』の見出しは間違いだということになります。経営側は、賃金改善でも雇用でもなく、「まずは設備投資」だと言っているのですから……。
 以前、法人税引き下げの条件として雇用拡大を求める意見に対して、日本経団連の米倉会長は記者会見で「私が約束したとしても経済界がやってくれるかどうか。経団連は予測値を提出済みだ。資本主義でないようなことをやってもらっては困る」と述べて反論しました。「経営側は雇用重視」というのは、記者の思いこみにすぎません。

 この記事を読めば、大橋副会長は内部留保が積み上がっていることを否定しなかったようです。それを賃上げや雇用ではなく、設備投資に回そうというわけです。
 こんなにモノが売れないときに、設備投資によって生産を拡大しようというわけですから、いったい何を考えているのか、と言いたくなります。問題は消費不況にあるのですから、拡大するべきは生産ではなく消費でしょう。
 購買力を高めて消費を拡大するためにこそ、多額に積み上がった内部留保を使うべきです。連合の古賀会長は5日の会見で「賃金増額は消費を喚起し、内需を活性化する。これが企業収益につながる」と主張したそうですが、こちらの方が正論です。

 前掲の『ひろばユニオン』に掲載された拙稿「歪む社会 経営者よ目をさませ」で、私は次のように書きました。この論攷を、ぜひ、日本経団連の米倉会長や大橋副会長、それに、賃上げ要求を手控えようとしているトヨタ、日立、パナソニック、NECなどの連合傘下の大手労働組合幹部の皆さんに読んでもらいたいと思います。

 生産者は同時に消費者であり、生活者でもあるということを忘れないようにして欲しいものです。社会の利益を犠牲にして会社の利益を図ろうとする経営は歪みを生み、やがては、会社がよって立つはずの社会のあり方をも歪めてしまうでしょう。今日の日本は、そのような方向に行きつつあるのではないかと、大きな懸念を抱くのは私だけでしょうか。
 そのような方向から転換し、会社の利益が従業員や地域社会などのステークホルダー(利害関係者)全体の役に立ち、社会の利益にもなるような会社こそ、今日の企業経営のあるべき姿ではないでしょうか。賃金の引き上げは、そのための第一歩なのです。それによって内需を拡大し、景気を回復することこそ、今日の苦境から脱出できる唯一の活路なのではないでしょうか。労働組合の取り組みが、いま社会全体のために求められているのです。

<<(引用終了)


記事の冒頭に、五十嵐氏はこう書かれています。

「景気が悪いということは、モノが売れないということです。売れないのは、買う人が少ないからです。 買うお金がなければ、モノは売れません。売れるようにするためにはどうすればよいのでしょうか。買えるだけの収入(可処分所得)を増やせばよいのです。
 それなのに何故、賃金を上げようとしないのでしょうか。可処分所得を増やせば購買力が高まり、内需が拡大し、景気が良くなり、経済も成長するというのに……」
と。

この論理が納得できない方もいらっしゃるのでしょうか。あるいは、これを左翼特有の論理だと受け取る方もいらっしゃるでしょうか。とすれば、あなたは誤解しています。引用者の私自身は、あきらかに左翼(社民、共産、昔の新左翼)ではなく、保守本流、保守リベラルに共感しているからです。

また、「売れるようにするためにはどうすればよいのでしょうか。買えるだけの収入(可処分所得)を増やせばよいのです」も、単純にして正しい論理だと考えますが、そんなの賃上げを正当化するための欺瞞的な言い訳にすぎない、と受け取る方がいらっしゃるのでしょうか。

これでギリギリの国民生活なんだし、菅・民主党は自民党政権以上の増税をたくらんでいるし、収入が増えなくちゃ内需が増えるわけはない、ならどうでしょうか。

それでも納得できないとしたら、国家財政に厚く援助されたアメリカ製品とか途上国の安価な製品を輸入すればいいじゃん、と考える日本の破壊論者です。主にグローバリゼーションを理由にして、人件費を原料費や設備費と同一に考え、その削減に血眼になってきた悪徳商人たちと同じ国賊です。なお、たった1%の賃上げがデフレ深刻化させると主張する経済オタクは、さすがにバカにされるだけですよ。

※ブログ『五十嵐仁の転成仁語』は、ここです
 

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コメント
 
01. 2011年1月19日 22:48:08: PPAJr6WqwQ
国内だけであればすべての企業が賃上げすれば、競争条件は同じだからモノが売れなくなるということはない。
むしろ購買力が上がるからモノが売れるという理屈はある。

しかし、輸出企業は外国が相手だから競争に負けるというだろうが、どこででも作れるようなものは作っていないから好業績なのだから影響は限定的だ。

だから問題は、中小企業だ。

中小企業の場合、先に賃上げという支出が増えることに耐えられるかどうかだ。
いずれ賃上げの効果で購買力が増えてモノが売れますよと言われてもそれまで持ちこたえられなければ何にもならない。

それをどうするか。

しかし、賃上げは義務ではないのだから中小企業がそれに従うことはない。
大企業の労使だけが率先すればいいだろう。

同時に、同一労働同一賃金、派遣労働などの改善も早く解決しなければならない。


02. 2011年1月19日 23:34:44: ZzeDzvCEVw
経済界の大手(経団連企業)などはすでにTPP体制にシフトしていると見るべき。
円高ドル安の中でのTPP参入はコスト圧縮できるところでやるしかない。
ある意味基準のない人件費を圧縮=少なくともベア0で固定しなければ外に向い
て出て行けない。
国内需要・国民購買力? そんなの知ったことか!
戦場はすでに世界、TPPではアメリカ市場での生き残りだ!

第二次太平洋戦争に向かう中、国民大衆=労働者は「欲しがりません勝つまでは」
の精神で、ベアはあきらめよ!
連合は当然に翼賛体制に入るべき。
ついでに増税に耐えてでも、戦時を生き抜け。

戦勝の暁には、労働者、中小零細企業は生きてられますか?

それも知ったこっちゃない。(経済)戦時下、全ての目的は戦争に勝利すること。
経団連国家体制護持だけが全てに優先する!


03. 健奘 2011年1月19日 23:43:49: xbDm84QDmOFmc : rYd4I1Qido

> 生産者は同時に消費者であり、生活者でもあるということを忘れないようにして
> 欲しいものです。社会の利益を犠牲にして会社の利益を図ろうとする経営は歪み
> を生み、やがては、会社がよって立つはずの社会のあり方をも歪めてしまうでし
> ょう。

現実は、さらに逼迫していると思います。どういう意味かと言うと、今の経営者や経営者をサポートする政治家の考えは、市場経済を自らつぶすという意味で、そうなるということです。

なぜかと言うと、今の見通しでは、社会保証の給付額は、2020年には、およそ100兆円になります。家計に100兆円の給付をするということは、家計収入の約4割が公的な性格を持つということです。

給料総額を増やせない状態を続けると、まず、そうなります。

それより深刻なのは、給与総額を増やせないような状態を続けると、消費税をあげようが企業減税をしようが関税を撤廃しようが、国債を日銀に引き受けてもらう以外に、政府は予算を組めないような貸借関係が出来上がることです。

そうなるまでに、もう、10年もかかりません。いろいろなケースを想定し試算してもそうなります。

国債を日銀に引き受けてもらうということは、今までの考え方では、郵貯などの銀行の資産が大きく毀損することになります。なぜなら、国債の拠り所は、これから上がるだろう税収だと考えているのですから、その考えが現実でなければ、拠り所を見失うことになるからです。

結果、銀行の経営がなりたたなくなります。

  −−−

だからこそ、考え方を変える時代に入っているのだと思っています。考え方を、単に、現実に合わせるだけです。

言葉を、現実に合わせます。「消費」でなく、「遊び」ないしは「楽しむ」というように。現代は、他人が遊ぶのを手助けするのが、過半の仕事ですから。

アップルの製品は、皆が遊ぶためでしょう。より遊んでもらうことで、より磨かれた物やサービスが生まれます。

古い感性や考え方では、良い物もサービスも生まれにくいでしょう。。。。今の経営者の古い感性では、下請けはできても、豊かに遊ばせる、それが難しく、沈没していくってことでしょうね。

「消費」というのでは、経営者にも訴えられないのですよ。たぶん、二宮金次郎的な人たちには。。。。豊かに遊ぶ、貴族的に。

5万円の物なんか。。。50万円だったら面白そう、そういった感性。彼らは、目覚めると思います。


04. 2011年1月20日 00:12:33: qRUVJlMZAs
URLがずれています。

1月18日(火) 賃上げこそ景気回復のカギ。それなのに何故…… [春闘] [編集]
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2011-01-18


05. 2011年1月20日 00:26:12: W0FCodhFK6
>>04さん

センクス(投稿者)。


06. 2011年1月20日 03:47:26: bBCbE9PEpY
元労組専従をしておりました。
だからといって労組を完全擁護する訳ではありませんが、本記事に賛成の立場です。
労組をよくご理解されていない読者は『連合はこのご時世に何言ってるんだ?』と思われる方も多いかと思います。
しかし、春季生活闘争は共闘です。
牽引役のトヨタ自動車労組をはじめ、主要産業労組が交渉前から旗を降ろしてしまえば、共闘が成り立たなくなります。
賃金・一時金は本来、企業毎の支払い能力によって決まるものでありますが、春闘では賃上げ交渉だけでなく、新卒初任給も同時に決定乃至確認されます。
ベア要求を見送るということは、必然的に新卒初任給は据え置かれるということです。
優秀な人材を確保すべく(賃金面での)企業努力はなくなります。
では、その隙に2番手以降等の企業が優秀な人材を確保する為の企業努力(ベア容認⇒初任給up)をするかというと、そうではありません。
何故なら、経営側も共闘だからです。
従って、連合や牽引役のトヨタ自動車労組がインパクトを示さなければ、本来の春闘という機能は役目を果たさなくなってしまうのです。
ここまでの説明だけでは、中小企業はどうするんだ?といった疑問は払拭できないでしょう。
中小企業の前に、大手企業の子会社という存在があります。
親会社の業績が悪ければ、どれだけ好業績をあげた子会社でも親会社を上回る妥結が存在しません。
また、子会社の賃金・一時金水準が親会社よりも良いといった企業グループは存在しません。
親会社の賃上げなくして子会社の賃上げは有り得ないのです。
続いて、中小企業です。
組織が比較的小さい中小労組は、同業の大手労組要求方針を見てから要求案を作成している労組が大多数です。
大手労組がベア要求しなければ、必然的に中小労組はベア要求できる環境ではなくなってしまうということです。

ここまでベア要求を強く主張してきましたが、あくまで要求段階だからです。
実際には労使間で交渉をする中で、それぞれの事情を加味しながら妥結に至る訳ですから、交渉前から狼煙を消してしまうというのは如何なものかと思います。
ましてや個人消費がこれだけ冷え込んだ状況や法人税減税を考えると・・・。


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