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菅直人首相(64)のもとで、「永田町のユダ」こと与謝野馨経済財政担当相(72)と「影の首相」こと仙谷由人民主党代表代行(65)という2人のヒールが大増税タッグを結成した。消費増税と社会保障改革を舞台に野党の取り込みを目指し、仙谷氏が党の「税と社会保障の抜本改革調査会」の会長に就任、閣内の与謝野氏と共闘することになったのだ。ただ、与謝野氏は民主党がマニフェストに掲げた年金改革案などに強い異論を唱えており、早くも閣内から不協和音が出始めている。
「影の首相」は党に入っても存在感を増すばかりだ。岡田克也幹事長(57)は17日の記者会見で、党本部でこれまで使っていた部屋を仙谷氏に譲り、自らは官房長官にスライドした枝野幸男前幹事長代理(46)の小さめの部屋に移ることを明らかにした。
「私の部屋の方が若干広いということもあるが、枝野さんの入った部屋の方が、事務局に近いもんですから便利だと。『おーい』と呼ばないとなかなか声が聞こえないというのも、いかがなものかなと思ってね」
主導権争いをしているはずの岡田氏が白々しく言い訳すればするほど、かえって仙谷氏の影響力をアピールしてしまうとはなんとも皮肉だ。
岡田氏は同じ会見で、仙谷氏が税と社会保障改革の調査会長に就任することを明らかにした。閣内に入った増税論者の藤井裕久官房副長官(78)の後任にあたる。岡田氏は「代行には野党とのやりとりや国会のバックアップなどもお願いしようと考えている」とも述べた。
「税と社会保障」は、菅首相が野党と大連立するための道具として突如ブチあげたツール。菅首相は17日夜、社会保障と税制のあり方について2009年度の税制改革関連法案の付則に「2011年度中の法整備を目指す」とあることを念頭に、「法律が与野党超党派の議論を求めていると理解している」と述べ、与野党協議に本腰を入れる考えを示した。
野党との交渉役は当初、たちあがれ日本から一本釣りした与謝野氏との見方が強かった。
しかし、首相官邸筋は「自民党を除名処分になった与謝野氏に交渉役が務まらないのは最初から織り込み済み」と説明。さらに「与謝野氏は野党が食い付かざるを得ない改革案を練る役。寝技もできる仙谷氏が、硬軟織り交ぜながら野党を溶かしていく」と2氏の役割分担を語るのだ。
要するに、菅首相は最初から、野党包囲網を作るうえで「軍師=与謝野氏、実戦=仙谷氏」という2人のヒールの使い分けを考えていたというわけだ。
しかし、この作戦が実を結ぶかは極めて不透明だ。
与謝野氏はかねてから、民主党が一昨年の衆院選マニフェストで掲げた年金改革案を猛批判。「『月額7万円以上の最低保障年金を全国民に創設し、財源を全額消費税で賄う』というのでは、費用が何十兆円、35〜40年もかかる。消費税も20%近くまで上げなければならない」と主張し、毎月保険金をかける社会保険方式を続けるよう唱えている。
これに対して、細川律夫厚生労働相(67)は「私どもは当然、マニフェストで書いてある年金制度を含めて改革していくことになる」と牽制。枝野氏も17日、「本質的に(与謝野氏と民主党案は)大きな違いがあるわけでない」と取り繕ったが、深い溝があるのは明らかだ。
さらに、与謝野氏は民主党の目玉政策である子ども手当についても、「バラマキで、親が消費に回す保証などない」などと即時廃止を訴えていただけに、マニフェスト堅持派の小沢一郎元代表(68)や鳩山由紀夫前首相(63)に近い議員グループは「政権交代の意味がなくなる」と猛反発している。
与謝野氏がこうした声を乗り越え、民主党内を納得させる改革案を作れるのか。それとも菅首相が党分裂を視野に「マニフェスト堅持路線」と決別するのか。仮に案がまとまったとしても、参院で問責決議を受けた仙谷氏に与野党協議の調整役など務まるのか−。
「ヒール」2氏が政界の荒波を乗り切る航路は見えぬままだ。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110118/plt1101181629001-n1.htm
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