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2011年1月17日 (月)
必須の三大配慮欠く菅政権消費大増税方針を糾弾(植草一秀の『知られざる真実』)
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-d3be.html
国民の多くは財政事情の悪化を心配している。家計の感覚で捉えてみても、税収が予算の半分以下しかないのは異常である。不足する部分を借金で賄っていれば、いずれ借金地獄に陥るのは当然である。
いまはゼロ金利で金利負担が極端に低いが、何らかの要因で金利が急上昇すれば利払い費が比例して急増する。財政の困難はその局面で一気に増大する。
国民は財政の窮状を心配しているし、財政状況を立て直すために、国民が応分の負担をしなければならないとするなら、その負担を負うことを真剣に検討するだろう。財政再建に向けた取り組みそのものを国民は否定していない。
しかし、財政再建を進めてゆくときに、必ず守らねばならないことがら、守らねばならない順序がある。為政者はこの点を銘記しなければならない。
どうしても守らねばならないことは、次の三つである。
第一は、政府支出の無駄排除を優先すること。国民に負担を求める前に、政府支出の無駄を排除することが優先されなければならない。日本の財政事情が悪化して長い時間が経過するのに、財政再建にむけての本格的論議がなかなか進まない最大の要因がこの点にある。
鳩山政権が発足して事業仕分けが始まった。鳩山前首相は、増税論議を行う前に政府支出の無駄排除を徹底的に行うことを明示した。4年間の衆議院任期中は増税に手をつけないことを確約した。これが正しい姿勢である。
事業仕分けを実施して判明したことは、政府支出が無駄の塊であることだった。国民に判断を委ねれば、ほとんどの討議対象が廃止すべき支出であった。
ところが、事業仕分けの会議は実行されたが、肝心の支出削減はほとんど行われていない。最初に会議が行われた市ヶ谷の独立行政法人国立印刷局の体育館。印刷局にこのような体育館が必要であるわけがない。この売却は実行されたのか。
東京都心の一等地に公務員宿舎が大量に存在する。民間労働者は都心から離れた場所に住んで、懸命に通勤している。特権公務員だけが優遇されて良いわけがない。公務員宿舎を売却するだけで大きな財源を確保することができる。
ほとんどの公益法人は、役所が天下りのポストを確保するために創設したものである。この公益法人に巨大な財政資金が投入されている。官僚利権である天下りを根絶すれば、役所は天下り機関に財政資金を大量に注ぐ理由がなくなる。
事業仕分けで枝野幸男氏や村田蓮舫氏が、あたかも正義の味方であるかのように振る舞っていたが、単なるパフォーマンスにすぎないことが判明した。会議だけ盛り上げて、実績を伴わないのであるなら、時間も費用もかかる事業仕分けなど実施する必要がない。
事業仕分けで無駄が判明したのなら、予算編成で十分にその無駄を切り込まなければ、何の意味もない。
菅直人氏は増税、増税と絶叫する前に、政府支出の無駄排除を真剣に実行することを主権者国民に約束するべきである。政府支出の無駄排除をまったく実行しないまま、増税論議に突進しようとするなら、主権者国民は絶対にその「不条理」を容認しない。歳出削減なき消費税増税は必ず挫折するのである。
第二は、財政再建重視の政策が日本経済破壊を招かぬように留意することだ。1997年度の消費税増税、2001年度の小泉政権財政再建論は、二度とも日本経済の悲惨な崩壊を招いた。この経済政策失敗のために、多くの罪なき国民が苦しみの淵に追い込まれた。失業・倒産・経済苦自殺の悲劇が日本経済を覆ったのだ。
財政再建だけが頭を支配して緊縮財政政策に突進することは、経済崩壊の原因になるばかりでなく、財政再建にも害悪になることを認識しなければならない。
橋本政権は財政赤字をわずか2年で倍増させてしまった。小泉政権は28兆円の財政赤字を2年で36兆円に膨張させてしまった。ひたすら緊縮財政に突き進む「財政再建原理主義」は、経済を破壊するだけでなく財政も破壊してしまうことを認識しなければならない。
2011年度当初予算は、過去最強のデフレ予算になっている。97年度、2001年度を上回る超緊縮財政である。この下地があるなかで消費税大増税方針を決定すれば、日本経済が崩壊することは間違いないだろう。不況が深刻化することは、主権者国民の生活が破壊されることを意味する。
菅直人氏はこの点を見越して「国民の生活が第一」のスローガンを民主党ポスターから排除したのだろう。しかし、国民の生活を犠牲にする財政再建原理主義を主権者国民は容認しない。菅直人氏は、すでに主権者国民から不信任を突き付けられているが、主権者国民は菅直人氏が総理の椅子を手放すまで、不信任の意思を示し続けるだろう。
第三は、財政再建策を検討する際に、所得再分配上の配慮を十分に加味することである。国民の税負担を高所得の人に求めるのか、低所得の人に求めるのかで、結果としての所得分配の状況に大きな変化が生じる。
菅直人氏は、1990年以来、4分の1にまで減少している法人税を減税し、2倍近くに増加した消費税を増税しようとしている。所得分配の格差が拡大する方向に政策を進めている。
小泉竹中政治の市場原理主義に対する批判が強まったのは、小泉竹中政治により日本の貧富の格差が著しく高まったことが背景にある。企業は労働コスト削減に突き進み、非正規労働者が激増し、年間所得が少ない新しい貧困層が激増している。
このなかで、税負担の多くを消費税に求めることは、低所得者の生活をさらに圧迫する結果をもたらす。所得再分配後の所得水準をある程度平準化するには、高所得者への課税を強化することが検討される必要がある。
また、消費税の増税を検討する際には、生活必需品への非課税措置、低所得者に対する課税免除などの制度的な対応を実施することが不可欠である。そのためには、現在の帳簿方式による消費税納税をインボイス方式に変更することが不可欠である。
菅直人氏の消費税増税論議には、上述の三つの視点がすべて欠けている。政府支出の無駄を温存し、日本経済を破壊し、貧富の格差拡大を推進しようとする菅直人氏の消費税大増税方針を主権者国民は徹底的に糾弾し、菅直人氏を一刻も早く退陣に追い込まねばならない。
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