http://www.asyura2.com/11/senkyo104/msg/743.html
Tweet |
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110112/356002/
1月14日、菅内閣発足7カ月にして2回目の内閣改造が行われ、菅第二次改造内閣が誕生した。つい先日まで「たちあがれ日本」共同代表だった与謝野氏が経済財政担当相として入閣したことで、海江田氏は経済産業相に横滑りし、海江田氏が担当していた科学技術担当相は玄葉国家戦略相が兼務することとなった。これらの政治情勢がどのように国家ICT戦略である「新IT戦略」に影響するのかを解説したい。
「私が入っていないのは奇異な感じがする。国家戦略相との任務分担をやって入っていくべきだと思う」。2010年11月2日の記者会見を受けて、新聞各紙は海江田経済財政・科学技術・宇宙開発担当大臣(当時)のこのようなコメントを載せた。「海江田はずしの玄葉寄せ」を本人が認めた形である。
ここで海江田大臣が「奇異」に感じたのは、予算編成に関する関係閣僚会議と包括的経済連携に関する関係閣僚会議の双方に、経済財政担当大臣としての自分が入っていないという現実である。国家戦略相とは民主党政調会長を兼務する玄葉国家戦略担当大臣のことだ。
確かに経済財政担当大臣が予算編成に関する関係閣僚会議に入っていなかったのは奇異と言える。そこで新聞各紙は、2010年9月の民主党代表選挙で小沢氏を推した海江田氏への当てつけではないかと勘ぐったわけだ。
これをICT業界の視点で見てみると、実はさらに明確な「玄葉寄せ」が存在していることがわかる。
国家ICT戦略は、科学技術担当相の職掌であるが、実際には「新たな情報通信技術戦略(以下、新IT戦略)」の予算付けの確認や進捗管理は、海江田大臣(当時)が担当していた内閣官房高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(以下、IT戦略本部)ではなく、玄葉国家戦略相が所管とする「新成長戦略実現会議」で行われているのだ。ここでも「海江田はずし玄葉寄せ」がなされていた。
確かに「新IT戦略」は「新成長戦略」の重要な要素であるから、その実現会議で議論されるのは論理的である。また、IT戦略本部では、「国民本位の電子行政に関するタスクフォース」「医療分野の取組に関するタスクフォース」「ITSに関するタスクフォース」の3つのタスクフォースを現在も粛々と進めている。
しかし、新IT戦略自体の予算化のチェックと計画の進捗管理がIT戦略本部でなされないのであれば、この本部の戦略的な位置付けは骨抜きにされたのも同然といえるだろう。
新IT戦略について海江田大臣(当時)は、内閣府和田政務官から毎月の定例会議でたまに報告を受けていたようだが、これとて他府省の政務三役会議と比較すると寂しい限りの政務二役会議だ。つまり、ここまで政府では、国家ICT戦略を担うべき海江田科学技術担当相(当時)が新IT戦略でリーダーシップを発揮する余地はほとんどなかった。
1月14日の内閣改造で、玄葉国家戦略相は、これまで海江田氏が担当してきた科学技術担当相も兼務することとなった。これで、国家ICT戦略に関する「玄葉寄せ」が完成したわけだ(図1)。玄葉国家戦略相は民主党政調会長を兼務するので、民主党のICT政策をも所管する立場ではあるが、これまで同氏が新ICT戦略策定に貢献したという話は聞いたことがない。つまり現在、新IT戦略は内容に精通した実質的なリーダー不在の状況なのである。
ただし、これには異論もある。それは「科学技術担当相だった川端前文部科学大臣だって、新IT戦略構築にそれほど深くかかわっていなかったではないか。それと比べれば現状はさほど悪くない」といった議論だ。だが、これはICT戦略を所管する科学技術担当相のリーダーシップ不在という政府の根本的な欠陥という意味では何ら前向きな議論ではないし、川端前科学技術担当相の時代に実質的なリーダーシップをとっていた原口前総務相が更迭された現状では、かなり状況は悪化しているといえるはずだ。
さらに露骨な「原口はずし」
2010年9月の民主党代表選挙で小沢氏を支持した原口前総務相に対する「原口はずし」はもっと露骨だ。
まずは、2010年9月17日の内閣改造で、新IT戦略の骨格である「原口ビジョン」を策定した同氏が、総務大臣という国家ICT戦略にとって重要な役職を外された。原口氏は、衆議院総務委員会委員長に就任している。
もちろん、総務委員会はICT関連を議論する場でもあるので、完全な「原口はずし」とは言えない。また、同氏は民主党情報通信議員連盟(以下、IT議連)の会長にも就任し、今でも党のICT議論をリードしているので、本人も「はずされた」という意識は当初は薄かったのかもしれない。しかし、原口氏が新ICT戦略への影響力が最も高く、ここまでリーダーシップを発揮してきたのは衆目の一致するところであり、その同氏が要職をはずされたことは、これまでの経緯を知る者であれば皆、残念に思うであろう。
さらに2010年11月に実施された事業仕分け(再仕分け)では、原口前総務相の肝いり政策が如実に仕分けられており、12月の特別枠要望を評価する政策評価会議でも厳しい評価を受けている。
事業仕分けで廃止または見直しとなったのは「新ICT利活用サービス創出支援事業」「アジアユビキタスシティ構想推進事業」「地域ICT利活用広域連携事業」「地域コンテンツの海外展開の推進」などで、これらには2010年の事業仕分けで指摘されたにもかかわらず、原口前総務相の指示で復活させた類のものが含まれている。また、「フューチャースクール推進事業」は通常の概算要求が廃止とされ、特別枠要望分も政策評価会議でCランクの評価とされてしまった。原口前総務相の肝いり政策として最も有名な「光の道構想」はようやく政策評価会議で生き残りが決まったが、それでもAランクではなくBランクだ(表1)。http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110112/356002/?ST=govtech&P=2
原口前総務相が2010年11月17日のテレビ番組で、事業仕分け(再仕分け)について「変な刀で(事業を)切り刻んで、一生懸命やっている人たちの心を折ってはだめだ」と批判したのは、このような事情があったからである。
概算要求段階まで原口氏が現職の総務大臣であった総務省と、経済産業省の特別枠要望に対する政府の政策評価会議での評価結果を見ると、さらに露骨な「原口はずし」の実態が見える。
経産省はICT関連で総務省の2倍の予算を要望していたが、その83%がAランクでほぼ要求どおり。Dランクはひとつもない。それに対して総務省のICT関連項目はAランクが8%しかなく、Dランクが19%も存在する(図2)。http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110112/356002/?ST=govtech&P=2
実は経産省は、補正予算の中にうまく要望項目を入れ込んでおり、補正予算は国会承認済みなのでAランクが多いのだが、総務省はそのようなワザを使わずに正面から政策評価会議に乗り込んだのだ。政治主導で正面突破を図った総務省と、官僚の知恵でするりとかわした経産省の違いとも言えるが、重要政策を補正予算に入れ込めなかった時点で「原口はずし」は確定しているのだ。
ICTの重要分野を担う総務省はこれまで原口前総務相のリーダーシップの下で、気持ちよいほどの「政治主導」を発揮してきたのだが、9月の菅改造内閣誕生、原口前総務相更迭を受けて、予算編成の場でもかなり劣勢に立たされた。
筆者は一度、総務省でICTを担当する平岡副大臣に、「原口はずし」の状況から今後いかに総務省が挽回するのかを質問したことがあるが、その答えは「原口はずしは存在しない」であった。立場的に認めるわけにはいかないだろうから筆者も馬鹿な質問をしたものである。
しかし、現実の予算編成過程では、みごとなまでの「原口はずし」が菅改造内閣の下で行われているのだ。政治主導の総務省が正面突破で予算を削減される反面、官僚主導の経済産業省が粛々と予算化を進める現状は、「原口はずし」を原点に発生した皮肉な現象と考えてよいだろう。
喪失した国家ICTのリーダーシップ
新IT戦略を担当する科学技術相に実質的なリーダーシップがなく、これまでそれを補完してきた原口前総務相もはずされている現状は、国家ICT戦略の観点では、致命的な状況と言える。これは国家CIO(最高情報責任者)/CTO(最高技術責任者)不在と言い換えてもよいかもしれない
一方、既に新IT戦略は工程表化されており、これからはそれらを粛々と推進していけばよい、という論理も成り立つ。しかし、民間企業でCIOを経験したり、企業の情報化に携わったりした業界人であれば、明確な意思と熱意を持たないでリストにしたがって工程を推進するだけのIT化推進は大変危険なことだと直感的にわかるはずだ。
つまり進捗に従って工程を推進すること自体が目的化してしまい、問題が起きたときに本来の趣旨を忘れて対処療法に走り、結局、初志貫徹がなされずに妥協の産物が生まれて最終的に失敗する可能性が高いからである。財政逼迫という問題を抱える状況で、国家戦略としての大局的な見地からの優先度を持たず、効率性という「変な刀」で予算を仕分けてしまう現状は、まさにそのような危機が顕著に現れていると思われてならない。
国家CIO構想は、現政権の中でも議論されていた。ただ、現在は官房副長官をCIOにというレベルで語られており、ICTに精通したプロをCIOに置くというところまでは至っていないばかりか、国家としてのICT戦略を所管するCTOというレベルにも至っていない(ちなみに米国では既に国家CTOと国家CIOが別個に任命されている)。そしてこれらの論点は、既にIT戦略本部では議論すらされていない
奥井 規晶(おくい のりあき)
インターフュージョンコンサルティング代表取締役会長
1959年神奈川県出身。84年に早稲田大学理工学部大学院修士課程修了。日本IBMでSEとして活躍後,ボストン コンサルティング グループに入社。戦略系コンサルタントとして事業/情報戦略,システム再構築,SCMなどのプロジェクトを多数経験。その後,アーサー・D・リトル(ジャパン)のディレクターおよび関連会社のシー・クエンシャル代表取締役を経て,2001年にベリングポイント(元KPMGコンサルティング)代表取締役に就任。2004年4月に独立。経済同友会会員,日本キューバ・シガー教育協会専務理事。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK104掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。