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2011.01.14
■1月某日 菅直人総理から携帯に電話が入る。
筆者が毎月連載している琉球新報文化欄の「沖縄幻視行」の1月8日付の「閉塞状況の日本政治 有権者裏切る民主政権」の記事について、「たまたま手元にあって読んだばかりなので電話した。何かと誤解を受けやすいので」という弁明だった。別に抗議というわけではなく、自分の気持と立場を理解してほしいという趣旨の電話だった。
新聞社がつけた中身出しには「(民主党は)万死に値する罪」「対米従属、自民と同じ」とあるので、かなり手厳しい菅民主党政権に対する批判である。
菅総理とは、野党時代には新宿ゴールデン街や銀座の裏通りのバーで飲んだり、沖縄でもゴルフをやったり飲んだりした仲だ。奥さんの伸子夫人や長男の源太郎君とも何回か飲んだことのある関係だ。いわば、家族ぐるみのウワシン読者としての付き合いもあった。
しかし、それも菅氏が総理になってからは、途絶えていた。お互いに携帯番号は交換していたが、総理就任直後に日米合意=辺野古新基地容認を速攻で決めたことで、こちらががっかりして電話する気にもなれなくなった。
菅氏は野党時代には沖縄をよく訪れていたし、もう少し沖縄の事情も県民の気持もわかっていると人物だと思っていた。せめて、「日米合意はもう一度再検討してみたい」とでもいえばいいものを、外務・防衛官僚の言い分を丸呑みした発言に心底がっかりしたのが正直なところである。
いくら個人的付き合いがあったからといって、野党時代のようなわけにはいかない。
一国の総理ともなれば、政権交代のマニフェストである「国民の生活が第一」を最優先に全力で取り組んでもらわなければならない。ところが、菅総理は、参謀役に抜擢した仙谷官房長官の多大な影響もあるのだろうが、だんだんと政権交代の理念と逆ベクトルの方向に踏み出した。政権交代によって日本は大きく変わると期待した筆者の思いは次々と裏切られた。
ジャーナリストの立場からいえば、日本の最高権力者に就任した菅氏に対して容赦のない批判を浴びせることは職業倫理としての当然のことである。
その菅総理は民主党が党大会を終えた翌日、内閣改造を断行した。問責決議で退任した仙谷氏の後任に枝野幹事長代理を抜擢した。ビックリである。枝野氏は反小沢の急先鋒の一人。党内対立を助長させるだけで、内憂外患をかかえる民主党が挙党一致体制を作るには不適格な人事である。何よりも内閣の要である官房長官がつとまる能力があるとは思えない軽量級だ。
さらに驚いたのは「たちあがれ日本」を離党した与謝野馨を経済財政大臣に起用したことだ。与謝野氏は自民党時代から消費税引き上げの急先鋒である。極右タカ派政党から引き抜いて重要閣僚に抜擢する真意がわからない。民主党内でもおそらく異論続出だろう。
筆者的には病み上がり後の与謝野氏に対するイメージは「死神」でしかない。与謝野氏には公明党とのパイプや小沢一郎との交友もあることから、政治的な思惑を秘めた人事を断行したつもりかもしれないが、少なくとも政権交代に期待した民主党支持者はますます引いてしまう人事だろう。しかも海江田経済産業大臣とは東京一区で宿命のライバルとして長年戦ってきた関係性もある。それをどうするのか。
全体的に変わり映えのしない閣僚、党役員人事といえる。意外性のある閣僚人事起用もなし。やはり、菅総理の政治的リーダーシップも政治センスもどこかが欠落しているのではないか。
菅総理との電話で、お互いに意見交換する機会があればいいし、「何かあったら連絡してくれ」ともいわれたが、いまさら何を言っても始まらないという気がする。
菅総理には仙谷代表代行、最近は空気の読めない堅物ぶりを強める岡田幹事長、官邸や霞が関官僚、財界、米国という巨大な権力組織がぴたりと脇を固めており、菅総理本人もロボットの役回りを強いられている立場だろう。
権力者が孤独で悲しい宿命でもあることは同情できなくもないが、日本は自民党時代よりもおかしな「官僚内閣制」の方向に逆戻りしそうな閣僚人事と言わざるを得ない。
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