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昨年一二月二二日、水産庁が突然の謝罪会見を開いた。調査捕鯨事業において、水産庁職員が事業を実施する企業から無償でクジラ肉を受け取っていたことを認め、関与した職員五名を懲戒処分にしたというのだ。
調査捕鯨は、税金から毎年約八億円が投入される水産庁の補助事業。つまり、補助金を受ける側の企業が、監督官庁の職員にクジラ肉の高級部位を渡していたことになる。さすがに水産庁もこの行為が国家公務員倫理規程に違反していることを認めざるを得ず、今回の謝罪会見につながったわけだ。
しかし、ここに見逃してはならない点が三つある。まず、このクジラ肉を受け取っていた水産庁の職員が「漁業監督官」であることだ。漁業監督官は、司法警察官であり、捜査権・逮捕権を持ち、漁業関連の違法行為を取り締まるのが仕事。つまり、調査捕鯨船の違法行為を取り締まる立場の者たちが、監督すべき船の上でクジラ肉の高級部位を受け取っていたことになるのである。これでは、調査捕鯨船に違法行為があっても、取り締まることはできないだろう。 実際、グリーンピース(以下、GP)には元捕鯨船の乗組員から南極海で大量のクジラ肉を投棄していたなどの不正行為が告発されている。これらについて、今回処分された漁業監督官はどのように対処してきたのだろうか。
二つ目は、この謝罪会見のタイミングだ。もともと、調査捕鯨事業におけるクジラ肉の不正は、二〇〇八年五月にGPが暴露したことで社会の認知度が高まり、これに伴い漁業監督官がクジラ肉の譲渡を受けていることも判明した。つまり、水産庁は懲戒処分を発表するまでに実に二年半もの年月を要したことになる。
これは、私とGPジャパンのスタッフである鈴木徹に対しての刑事裁判を見極めてから判断したということであろう。私と鈴木は、〇八年にクジラ肉の不正を指摘する過程で入手した高級クジラ肉二三キロ入りの箱の確保方法を巡り、窃盗・建造物侵入罪に問われた。その後、二年間にわたって青森地裁で刑事裁判を闘ってきた。
一〇年九月、懲役一年、執行猶予三年の判決が下されたが(控訴中)、この判決は、調査捕鯨におけるクジラ肉に関する不正についても認めている。このことで水産庁は職員を処分せざるを得なくなったのであろう。しかし、今回の水産庁発表では、クジラ肉に関連する不正が本件に留まらず、実際はもっと大きいという可能性には言及していない。内部告発者は裁判所で、クジラ肉が国会議員にも渡されていると克明に証言していたにもかかわらず。
そして三つ目は、「知る権利」という観点だ。この二年半、私たちは市民の「不正を指摘する権利」、そして「知る権利」は民主的な社会を形成するにあたって、もっとも重要な権利の一つであると主張してきた。
市民・NGO・ジャーナリストが政府や大企業の不正を指摘する際、刑法に抵触する行為を伴うことは現実的にないとはいえない。しかし、公益を目的として行なわれる行為を厳しく罰することが、民主的な社会を形成するという「法の精神」に合致するのか。
今回の水産庁の謝罪や裁判所の判決で、クジラ肉の不正を指摘する行為には公益があったことが証明された。しかし、クジラ肉の不正自体は水産庁の職員五名の懲戒処分で済まされ、その不正を指摘した私たちは、メディアの行き過ぎた犯罪者報道を受け、二年以上にわたり刑事裁判にかけられ、さらに執行猶予付きとはいえ、懲役刑を受けるかもしれないのだ。
クジラ肉裁判は、仙台高裁に現在控訴中であり、裁判期日は未定だが、高裁では、この不正のさらなる追及と、不正を暴く権利が尊重されることを願う。
また、この機会に「日本の文化」でも「科学的調査」でもない、調査捕鯨の真相が広く知られるようになればと思う。この事業が、国際的に日本の信頼をどれだけ失墜させているかもそろそろ客観的に判断すべきだ。
佐藤潤一・グリーンピースジャパン事務局長
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