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フリーランスライター畠山理仁の「永田町記者会見日記」 第28回:その1
2011-1-13up
●2011年1月5日、総務大臣の記者会見をUST生中継。
「申し訳ありませんでした」
まずは国民の皆様にお詫びを申し上げたいと思う。
2011年1月5日、私は片山善博総務大臣の記者会見をUstreamでインターネット生中継した。
これは総務大臣の記者会見を主催する総務省記者クラブの「ルール(記者クラブに加盟していないフリーランス記者個人の資格による動画の撮影)」を破るものだった。
私はこの日の会見で「大臣の情報公開に対する姿勢」を質問すると同時に「今、記者クラブのルールを破ってインターネット中継をしています」と告げたのだ。
私のこの発言が、不幸にして記者会見の進行に混乱を招いてしまった。
大臣が貴重な時間を割いて出席する記者会見の途中であるにもかかわらず、私は総務省記者クラブの幹事社(1月・2月)を務める共同通信の記者から、「今、生中継しているということですか」「これは、私どもには御連絡をいただいていない、ですよね」「どういう御判断で、今、なさっているのですか」と、お咎めを受けたのだ。
総務省HP「片山総務大臣閣議後記者会見の概要」
(2011年1月5日・2問目の質問「記者会見のオープン化(1)」のやりとり)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/02koho01_03000154.html
私がなぜ総務省記者クラブのルールを破ってインターネット中継をしたのか。
それは無編集の映像が広く国民の目に触れる形で記録として残ることは、「国民の知る権利」に資すると思ったからだ。
現在、総務省は記者会見の動画を公式には公開していない(首相官邸・外務省・文部科学省・農林水産省などは行なっている)。
また、記者クラブメディアであるテレビ・新聞・通信社などには「紙面のスペース」や「放映時間」という限られた枠がある。そのため、会見すべてを無編集で「ダダ漏れ」することは事実上不可能だ。
つまり、公式な記者会見における「視覚・聴覚からの情報」は、記者会見の場に参加する記者たちが「独占」している。
これは本当にもったいない。私は記者会見の場に参加した者として、こうした情報を「国民の目に触れる形で残したい」と思ったのだ。
●「二次使用のリスク」という不可解な理由。
それでは、なぜ私の行動は記者クラブによって咎められたのか。それは記者クラブ側が「個人の資格による動画撮影禁止」という「勝手なルール」を設けているからだ。
記者クラブによると、ルール設定の理由は次のとおりである。
「撮影者の意図と関係なく、インターネットなどで公開した映像が、第三者によって二次使用されるリスクがあると指摘する意見があった。そこに映っている人の発言・質問などが、本人の意図した内容と異なって、一部だけ使われると全体の真意が伝わらないこともある。それを危惧する意見があった。」
【2010年12月29日、総務省記者クラブの幹事社(筆者注・当時)である毎日新聞記者より、会見開放を求める会の渡部真(フリーランス編集者)への電話連絡】「記者会見・記者室の完全開放を求める会ブログ」
http://kaikennow.blog110.fc2.com/blog-entry-18.html )
これは理由になっていない。なぜなら記者クラブメディアの映像“だけ”が「二次使用されるリスク」から免れる根拠など、どこにもないからだ。
むしろ高価な機材で撮影された記者クラブメディアの映像は、フリーランスの記者がホームビデオや安物のWebカメラで撮影した映像よりも「二次使用されるリスク」が高いとさえいえる。
その一方で、記者クラブメディアかフリーランスかにかかわらず、記者会見で得た情報をそれぞれの責任で「編集」して公開することは普段から行われている。編集過程で「発言・質問などが、本人と意図した内容と異なって、一部だけ使われると全体の真意が伝わらないこと」も、不幸にして度々起こっている。
こうした場合、記者会見の場にいなかった国民は「切り捨てられた前後の情報」を知ることができない。つまり、判断する材料、事後に検証する材料が十分に与えられていないということだ。これはとても不幸なことだろう。
私はその観点からも、記者会見での情報を時間枠にとらわれずにインターネットに「残しておく自由」を獲得することは、国民の知る権利に資すると思っている。
●「フリー記者個人」による動画撮影は国民の不利益か?
ここで公正を期するために、少し時計の針を戻す。
一昨年秋の政権交代以降、各省庁の大臣記者会見では「記者会見のオープン化」が進んだ。大臣主導で一部フリーランスの記者が参加できるようになったところもあれば、記者クラブ側の自主的な判断でオープン化が進んだところもある。
そんな中、総務省記者クラブは昨年1月5日という比較的早い段階で「オープン化試行」に取り組んだクラブだ。この点は事実として評価しているし、国民の一人として感謝もしている。
だからこそ、総務省記者クラブが「フリー記者個人の資格による動画撮影禁止」という奇妙かつ独特なルールを設けていることが、私にはどうしても解せなかったのだ。
もう一つ事実を正確に記しておくと、総務省記者クラブは「非記者クラブの記者」すべてに動画撮影を禁止しているわけではない。
総務省記者クラブの基準を厳密に適用すれば「動画撮影が禁止されているオブザーバー」資格となるであろうCS放送「朝日ニュースター」は、従来から記者会見の動画を撮影している。そして「速報!!記者会見」という番組まで持っている。(*「朝日ニュースター」は、総務省記者クラブには加盟している)
また、「オープン化試行」で“非記者クラブメディア”としての参加が認められた「インターネット報道協会加盟社」には、動画の撮影やインターネット中継も認められている。
実際、これまでにも「ビデオニュース・ドットコム」や「ニコニコ生放送」などが記者会見のインターネット生中継を行ってきた。
しかし、彼らにも人員の都合などがある。そのため、毎回、会見に参加して撮影や生中継を行なえるわけではない。
そのような場合に、たまたま会見に居合わせた私のようなフリーランスの記者が手持ちの機材でインターネット中継を行なったとする。
いったい、この行為のどこが国民の不利益になるのだろうか。
●「引き続き検討」という記者クラブの嘘。
私を含めたフリーランスの記者たちは、昨年1月のオープン化試行当初から、この奇妙な差別的条項の改善を何度となく求めてきた。それに対して、その時々の記者クラブ幹事社は「記者クラブ加盟社が参加するクラブ総会で諮ります」との回答を続けてきた。
付け加えると、任意団体にすぎない記者クラブの総会は、フリーランスの記者が参加・傍聴することができない。それどころか議事録も残されない。
もし、これまでなされた記者クラブ側の回答が「本当」で「誠実」なものであれば、私もまだ我慢できていたはずだ。だが、この回答には嘘があったのだ。
私はこの一年間、幹事社が交代する度に、何度も「クラブのルールは変わったのか。私は質問権のないオブザーバー参加制度についても改善を求めているが、その点についても進展はあったのか」とたずねてきた。
それに対するクラブ側の回答はいつも決まっていた。「引き続き検討していく」というものだ。
ところが昨年のある時期、私が新しく幹事社となった社の記者に同じ質問をしたところ、「先のクラブ総会ではその話は出なかった」と聞かされた。つまり「引き続き検討」どころか、幹事社間での「議題の引き継ぎ」すら行なわれていなかったことがわかったのだ。
私はこうした記者クラブ側の不誠実な対応に怒りを感じた。しかし、ここでルールを破って動画撮影を敢行し、「出入り禁止」を言い渡されてはたまらない。記者会見で質問する機会すら失われ、このような理不尽な問題が「なかったこと」になってしまう。
だから私は唇を噛んで、ぐっとこらえた。
現在、名ばかりとはいえ会見の主催権を記者クラブが持っているのは事実だ。そして歴史的経緯からみても、私はその権利を簡単に権力側へ渡すべきではないと考えている。
さらに言えば、記者クラブメディアの多くが加盟する日本新聞協会は「記者会見は広く開放すべき」との見解を10年前に発表していた。私はこの時点では、記者クラブには「報道に携わる者としての良心」があると思って、淡い期待を抱いていたのだ。
だから私を含めたフリーランスの記者たちは、記者クラブに何度も裏切られながらも、この1年間、真摯な態度で幹事社に「記者会見のオープン化要望」を伝え続けてきたのだ。
それを受けて昨年12月、ようやく記者クラブ幹事社の朝日新聞・毎日新聞の記者2人が、フリーランスの記者たち8人から要望を聴取する機会が設けられた。
しかし、聴取後に行なわれたクラブ総会で出された結論は、「従来通りフリーランスの記者個人の資格による動画撮影は禁止」「参加枠の拡大については引き続き検討する」というものだった。
一年経っても一歩も進まない……。
私はこれまで最大限の敬意を払ってきた記者クラブに対し、大いに失望した。
●国民が知らなかった記者クラブの「閉鎖性」。
記者クラブの記者たちは、税金で建てられた庁舎の中に「記者室」という家賃無料のオフィスを提供されている。光熱費も無料だ。そして記者室の入り口には「クラブ員以外立ち入り禁止」と大書された張り紙が貼られている。
実は彼らの閉鎖的な「占有」には法的根拠がない。あるのは昭和33年に出された大蔵省管財局長の通達だけだ。
この現状には、憲法89条違反ではないかとの指摘(公共の財産の目的外使用)もある。そんななか、彼らが無料で記者室を独占的に使用し、記者会見の参加資格、運営ルールを決めている根拠はなんだろうか。
それは彼らが庁舎内を拠点として継続的に取材を続けることにより、権力監視、国民の知る権利に資するという前提があったからではないか。
そんな彼らが“非記者クラブ記者の自由な取材活動”を不当に制限することに、大義はあるのだろうか。
そしてこの実態は、一切、国民に知らされることはない。記者クラブ問題は、記者クラブにとってタブーだからだ。
そんな状況下では、このまま記者クラブとの交渉を続けてもおそらく進展はないだろう。
私はこの1年間の記者クラブとのやりとりを通じ、自分の拙い経験と、個人の責任でそう判断した。
私は粘り強く交渉を続けてきた先輩方とは違い、たった1年間しか「総務省記者クラブのルール」を順守できなかった。
私は1月5日に続き、1月7日も記者クラブのルールを破って淡々とインターネット中継を続けた。それは「国民の知る権利」を不当に妨害している記者クラブの「閉鎖性」を、片山大臣はもちろん、記者クラブの方々、そして国民にも気づいてほしかったからだ。
http://www.magazine9.jp/hatakeyama/110113/index1
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