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もがけばもがくほど深みにはまってゆく。それが与謝野馨を経済財政相に、枝野幸男を官房長官にそれぞれ起用する内閣改造人事であろう。ひょっとしたらこの目玉人事が政権崩壊の原因となり得るのではないかとさえ思う。それほどに無理があるのだ。とりわけ民主党政権批判を繰り返してきた与謝野は政権にとってはいわば“宿敵”であり、三顧の礼で協力を依頼するほどの人物でもない。それほど菅は自信喪失状態であったのかの証左となるのだ。
「与謝野人事」のもつ構造的な危険性はは二つの側面から指摘できる。一つは野党に好餌を与えたと言うこと。他の一つは党内の路線対立を決定的なものにした点だ。まず前者だが、与謝野の反民主党的言動は定評があり、その鋭い弁舌から言っても自民党時代は政権追及の急先鋒であった。与謝野はマニフェストを「選挙対策の文章にすぎない。財源に何の根拠もない」と批判「民主党に日本をまかせれば終わる」とまで言い切った。個人攻撃も激しく、首相・鳩山由紀夫を「東大出身のはずなんだけど、相当に頭が悪い」と侮辱した。著書の「民主党が日本経済を破壊する」も、民主党への警鐘に満ちており、野党にとっては“動かぬ証拠”がいっぱいだ。これが入閣したとなれば野党は、与謝野が鳩山の答弁の矛盾を指摘してきたのと全く逆の攻撃が可能となるのだ。菅は抜けしゃあしゃあと「民主党の流れとは大きなところでかなり共通性の高い政治家だ」と発言しているが「どこが?」と問いたい。
党大会では、参院議員・森ゆう子の「与謝野さんを内閣に入れて大増税。それでいいのですか」との、たまりかねたような不規則発言に、拍手が生じたように党内的にも深刻な路線上の亀裂を増幅させた。消費増税とマニフェスト見直しの象徴として与謝人事は躍り出たのだ。既に党内はマニフェスト固執・消費増税反対の親小沢と現実路線の菅との間で水と油のような路線対立が生じており、与謝野人事は火に油を注いだ。もはや親小沢グループには「憎しみ」のような感情が支配しようとしており、与謝野人事は対立を抜き差しならぬところまで持ってゆく材料に違いない。政権運営のノウハウで行き詰まった菅は与謝野という“龍玉”を入手したと思っているのだろうが、やがてとんでもない「癖球」であることが分かるだろう。
与謝野自身も「巧言令色鮮(すくな)し仁」を露呈させた。「百日の説法屁一つ」ともいえる行動だ。いくら論客ぶりを発揮して弁明しても、国民は行動を見る。選挙区で落選し民主党批判で辛うじて比例区に当選したのだから、有権者には説明できない。著書に「堂々たる政治」があるが、普通政界ではこうした人事を「一本釣りにかかった」という。さしずめ「堂々たるダボハゼ政治」であろう。菅は自民、公明などとのパイプに期待しているようだが、古来「昨日勤王今日また佐幕」の輩は映画でも水車小屋の前で斬られることになっている。野党がお人好しに与謝野に協力することなどあり得ない。都知事石原慎太郎が「なぜ沈みかけた船に乗るのか。政治家の資質の問題で、彼はこれで終わりだ」と胸のすく発言をしているのが正解だ。
一方「枝野官房長官」も、菅は重大な欠陥を見落としている。それは発言にごまかしがあることだ。最大のごまかしが事業仕分けで16兆8千万の財源が見つかるようなことを言っていて、見つからないことが判明したさいの、言い訳の“理論構成”の稚拙さだった。幹事長として指揮した参院選大敗北後の言動も、みんなの党代表・渡辺喜美からは「馬鹿かお前は」と批判された。「ぼくは弁護士出身ですから」が口癖だが、討論を聞いても発言は長いばかりでポイントがずれている。また弁護士特有の本能か、ポイントを外そうとしている。官房長官職は、首相と共にくまなくスポットライトが当たるポジションであり、ごまかしが利かない。枝野の姿勢なら官邸詰め記者の信望は得られまい。弁護士の仙谷由人で懲りたはずなのにまた弁護士の登場だ。こうして菅政権は改造したはいいが、新たな火種を2つも抱える結果となった。
【朝刊トップ3分勝負】
★朝日
与謝野氏は経財相 大畠氏は国交相 海江田氏は経産相
菅直人首相(民主党代表)は13日、たちあがれ日本を離党した与謝野馨氏を経済財政担当相に起用する方針を固めた。海江田万里経済財政担当相を経済産業相に、大畠章宏経済産業相を国土交通相にそれぞれ横滑りさせる。また、仙谷由人官房長官が兼務していた法相には江田五月前参院議長の就任が内定。党役員人事では、仙谷氏を代表代行、鉢呂吉雄国会対策委員長の後任に安住淳防衛副大臣を充てることを決めた。
★毎日
内閣改造:与謝野氏、経財相に 法相は江田氏
菅直人首相(民主党代表)は14日、通常国会(24日召集)を乗り切る「最強の態勢」を掲げ、内閣改造・民主党役員人事を行う。13日夜には同党の枝野幸男幹事長代理を首相官邸に呼び、仙谷由人官房長官の後任に起用することを正式に伝えた。
★読売
与謝野経財、江田法務…改造内閣が内定
民主党の枝野幸男幹事長代理の官房長官起用が決まり、たちあがれ日本を離党した与謝野馨・元官房長官が経済財政相として、江田五月前参院議長が法相として新たに入閣する。
★産経
きょう内閣改造 与謝野氏は経済財政担当相 海江田経産相 国対委員長に安住氏で調整 官房長官は枝野氏
菅直人首相(民主党代表)は14日、内閣改造と党役員人事を断行する。首相は13日夜、枝野幸男幹事長代理を首相官邸に呼び、官房長官への就任を要請、枝野氏も受諾した。参院で問責決議を受けた仙谷由人官房長官は党代表代行で処遇。13日にたちあがれ日本を離党した与謝野馨元財務相は経済財政担当相で起用し、海江田万里経済財政担当相は経済産業相、大畠章宏経済産業相は国土交通相にそれぞれ横滑りする。鉢呂吉雄国対委員長の後任には安住淳防衛副大臣を起用する。
★日経
与謝野氏、経財相に 経産は海江田氏 国交は大畠氏
きょう内閣改造 法相、江田氏に打診 国対委員長に安住氏
菅直人首相(民主党代表)は14日、内閣改造・党役員人事に踏み切る。たちあがれ日本を離党した与謝野馨氏を経済財政相に起用、海江田万里経財相が経済産業相、大畠章宏経産相は国土交通相にそれぞれ回る。仙谷由人官房長官は党代表代行に就き、後任には枝野幸男幹事長代理が就任する。国会対策委員長には安住淳防衛副大臣を起用する。
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/2011-01-14
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