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年初から、全国紙の社説がどこも同じように消費税増税とTPP参加を主張し、マスコミの要望通りの年頭所感を発表した総理大臣の菅直人を翼賛していることが話題になっている。
共産党(「しんぶん赤旗」)は、「5紙共同社説」だと言ってこれを批判している。同党が引き合いに出しているのは、60年安保の時の「7紙共同宣言」だが、何も半世紀前にまで遡らなくても、主要紙がみな同じ論調をとったことは、最近にもあった。
10年前の2001年、小泉純一郎政権が発足した時のことである。当時、朝日新聞や毎日新聞は、読売新聞以上に歓呼の声をもってこの政権を迎えた。政党でも、当時、経済思想の左側から小泉政権を批判したのは共産党だけだった。社民党の土井たか子党首は「改革」という言葉を肯定的に使っていた。
社民党でさえこのていたらくだったから、民主党の鳩山由紀夫代表や自由党の小沢一郎党首が、当時自民党を経済軸上の左側から批判したという事実はない。それどころか、鳩山由紀夫にいたっては2001年の国会で、「抵抗勢力」と戦うポーズをとっていた小泉純一郎に対して、国会の質疑で共闘を申し出たほどだった。
マスコミも、小泉構造改革を経済軸上の左側から批判することなど一切しなかった。当ブログが以前からずっと朝日新聞の経済関係の主張が新自由主義的だと批判してきたことは、継続してお読みいただいている読者の方はご存知だと思うが、これはブログ開設のずっと以前から朝日新聞に対して抱いている不満であって、今でも2002年10月26日付の朝日新聞が自民党内の「竹中いじめ」を批判する社説を掲載した時や、2005年の郵政総選挙の投票日に、朝日新聞が「小泉首相はこれまで見たこともない型の指導者だ」とか「単純だが響きのいいフレーズの繰り返しは、音楽のように、聴く人の気分を高揚させる」などと書いた社説を読んだ時のことをよく覚えている。
小泉政権当時は、同政権の経済タカ派的な政策を朝日や毎日が支持し、イラク戦争への自衛隊派遣などの外交・安全保障政策を読売や産経が支持するという色分けができていた。その傾向は基本的には現在も多少残っていて、防衛大綱が「動的防衛力」をうたった時にも、朝日の社説は懐疑的だったし、毎日の主筆・岸井成格はテレビで、こういう大きな問題を民主党がろくな議論も経ないで進めていると指摘していた。
だが、その岸井成格も「毎日の社論を護憲から論憲に変えた」と自画自賛している人間だ。朝日は前主筆の船橋洋一がずいぶん社論を右に傾けた。概して、朝・毎は外交・安全保障政策面で徐々に右に寄ってきている。経済政策における読売はどうかというと、これはナベツネの新聞であり、ナベツネは昔から「市場原理主義」批判はしていたものの、直接税の税率をもっともっと下げて、消費税率をバンバン上げろというのが持論で、貿易自由化も同様に以前からのナベツネの持論だったはずだ。小泉政権時代に同政権の経済政策に多少懐疑的だったのは、単に竹中平蔵のようなエキセントリックな新自由主義者とナベツネのウマが合わなかっただけなのだろう。
こう考えると、現在の「5紙共同社説」の論調は今に始まったものではないといえるかもしれない。幸いというべきか、北海道や中部のブロック紙を含む地方紙には、菅政権の政策を批判する論調もかなり強い。特に、TPPについては地方紙にかなり強い批判が見られる。
つまり、「5紙共同社説」対地方紙という対立構図がある。中央対地方であるとともに、経団連対一般国民の対立構図もある。ここで注意すべきは、「全国紙」というのが、実際には「東京と大阪のブロック紙」に毛が生えたようなものでしかないという事実である。たいていの都道府県には有力な地方紙があるが、東京と大阪にはない(東京新聞は中日新聞が「都新聞」を買収した新聞であり、「中日新聞東京本社」が発行している)。たいていは地方紙のシェアがもっとも高い。地方紙の中には、地元選出の代議士と関係の深い新聞もいくつかあり、そういう新聞には社説がなかったりするが(自民党政権時代に政権批判を載せにくかった事情でもあるのかもしれない)、全国紙には見られない鋭い政権批判を載せる新聞もある。中でも、北海道新聞と沖縄の2紙(沖縄タイムスと琉球新報)が特に目立つ。地方紙その地方ごとの財界には弱いが、全国紙の場合は日本の財界、つまり経団連に弱いという共通の特性がある。「政治主導対官僚主導」など、マスコミがミスリードするまやかしの対立構図であり、本当の対立構図は「経団連対一般国民」なのである。
だから、東京で経団連の主張を代弁する朝日新聞なんかを日々読んでいると、気分が重くなる。朝日なんかを読む方が悪いと言われそうだが、他紙をとったところで同じであり、それなら、昔から良くも悪くも(良いところなどほとんどないが)日本を代表する新聞と言われている朝日をとって、ブログでこれを批判した方が良いだろうと思っている。
そうは言いながらも、この記事も書き始めるまで時間がかかり、書いている今も気分が乗っていない。小泉・竹中の構造改革路線への批判が強まった時期も、つい最近あったばかりだから、ずっと寒い日が続いている時よりも、比較的暖かい日のあとに寒くなった方が体にこたえるのと同じ理屈である。「5紙共同社説」にはやはり圧迫感というか威圧感がある。
小沢派に期待を寄せる人もいるが、小沢一郎は昔から日本の政治家の中でももっとも強硬な自由貿易論者であり、TPPにも特に反対していないことだけ指摘しておく。政治・経済に限らず、大事なのはまず事実を正視することであり、信仰によって歪められた、あるいは捏造された虚構に基づいた議論は一切意味を持たない。
事実を見据えると、ますます心が挫けそうになってしまうのだが、それでも現実を見て、なおかつ前に進もうという気持ちが求められる時代なのだろうと思う。
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