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正月期間中、箱根駅伝以外ほんとうに見るべきテレビ番組はありませんでした。しかし、まったくなかったわけではありません。2日NHK衛星第1で午後8時から2時間放映された「アメリカ同時多発テロから10年 歴史学者J・ダワーが“テロとの戦い”の真相に迫る▽世界は平和を実現できるか」は十二分に見応えがありました。
ダワー氏は、アメリカの現状は極端なナショナリズムを“愛国主義”に置き換えイスラム教徒を排除しようとしていると指摘したうえで、「イラク戦争は間違いだった」と断言しました。しかし、愛国主義一色でアメリカが染め上げられていたとき、アメリカで「イラク戦争に反対」と言うことには勇気のいることも事実なのです。社会が雪だるまのように転がり始めたとき、「NO」と言ってその前に立ちふさがるのは困難です。私は番組を見ながらそう強く思うと同時に、日本で今起きている現象に思いをはせました。
「政治とカネ」。このキーワードは菅直人首相はじめ与党議員から自民・公明の野党議員、さらに新聞・テレビ・雑誌の全マスコミ、そして一般市民の7割以上が普通に使い、小沢一郎氏に説明責任を迫っています。小沢氏への追及が始まった西松建設違法献金事件、そして資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件。私自身はこの二つの事件を巡る東京地検特捜部の動きとマスコミの連動を当初から検証していますが、特捜部が見立てをし、その通り捜査を行ったものの、結局はその見立ては何ら証明されず、最後は不起訴に終わった、いわば“巨大な虚構”に過ぎませんでした。
しかし、“虚構”は転がる過程でマスコミを通じて大音響のこだまを生じさせ、首相から大阪のおばちゃんまで、何かといえば「政治とカネ」というようになりました。小沢氏のどこが、なぜ問題なのか? きちんとした検証抜きのレッテル貼りは、言葉のファシズムではないのでしょうか。
毎日新聞 2011年1月10日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/wadai/torigoesyuntarou/news/20110110ddm012070038000c.html
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