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「民主党の小沢一郎元代表は、このところにこやかだ。憑きものが落ちた感じだ」
ベテランの民主党関係者から年明け早々、こうした話を聞かされた。今月中に政治資金規正法違反で強制起訴される立場であることを思えば、そんなにのんびりしていられるの、といぶかしんでしまう。と同時に、諦(てい)観(かん)の境地に達し、すでに自らの先行きについて、弱気になっているのかな、とも思う。
聞けば、昨年末、頻繁に行われた小沢氏を支持する議員グループや秘書会との会合では、かつてみられた無愛想さは影を潜め、進んでお酌もし、「ガハハハハ」と口を開けて笑うこともあったのだという。
「政治とカネ」の問題をめぐる国会招致で、菅直人首相や岡田克也幹事長らから「出ろ、出ろ」と攻勢をかけられ、小沢氏の支持グループには反発が増幅。両院議員総会を開いて首相を代表から引きずりおろすシナリオまで出ていたのに、いつのまにやら、そんな威勢のいい声もかき消されてしまっている。
三が日も過ぎ、正月気分も抜けたころ合いに、劣勢の感が否めない小沢氏が、これからどう反転攻勢をかけていけばいいのか、有志のメンバーが都内のホテルで顔を合わせた。だが、妙案は浮かばず、「菅政権は、小沢氏が目指した改革をしていない。何のための政権交代だったのか」「消費税率引き上げは安易な増税路線だ」などと、首相批判が続出する“ガス抜き”の場にしかならなかったそうだ。
思えば、小沢氏には選挙対策といい、政局の切り回しといい、いつでも「小沢神話」がついて回った。そして勝負どころでは、何らかの果実を手にしてきた。だが、神話の裏付けとなってきた小沢流の政治手法、つまりは、カネや少数精鋭による密室的で強引な事の進め方とかが、すでに時流に合わなくなっているのだろう。
象徴的な事例が先の民主党代表選だった。首相有利との前評判を覆すべく、小沢氏は、有力支援組織の連合など業界団体をくまなく回り、支持グループの引き締めにも躍起となったが、結果は、何のサプライズもなく、首相に寄り切られた。
当時、小沢氏の陣営に詰めていた秘書の一人はしみじみと語る。
「みんな小沢氏にウルトラCの方策があるのだと期待していた。ところが、ふたを開ければ予想通りの結果で、何の巻き返し策もなかった。等身大の小沢氏をみた思いだった」
強制起訴されれば、裁判が最高裁まで行くのは必至。となれば、「3〜5年は裁判に忙殺される」(関係者)とみられている。小沢氏の支持グループには、小沢氏が政治の師と仰ぐ田中角栄元首相の例を引き合いに出し、離党して党内に隠然たる影響力を行使すればよい、との声もくすぶっている。昭和51年、ロッキード事件で受託収賄罪などに問われ自民党を離党。その後も「キングメーカー」として、自民党に君臨した田中氏の残像を重ね合わせているのだ。
こうした“安直”な見通しが出回っていることに、とあるベテラン秘書は冷ややかだ。
「田中さんには、『政治とカネ』の問題があっても、人柄で人を引きつける魅力があった。批判はあっても、人気もあった。小沢氏とは比べようがない」
ましてや当時の田中派には、竹下登元首相、金丸信元副総理ら海千山千の人材が豊富におり、選挙地盤が脆(ぜい)弱(じゃく)で、なおかつ政治経験の乏しい若手議員で大半を占める今の小沢グループとは、政治の妙味を知り尽くしているかどうかの一点で天と地ほどの差があるのは歴然だ。「小沢院政」が敷ける環境など整いようがないではないか。
小沢氏が強制起訴される事態を見据え、首相らはすでに、党規約や倫理規則に基づき、一定の処分を出す構えをみせている。倫理規則の4条には「処分」の項目があり、「党員資格の停止」「離党の勧告」「除籍」を明記している。
首相周辺によれば、小沢氏への処分について、首相らは「離党の勧告」「除籍」を想定しているのに対し、仙谷由人官房長官は「党員資格の停止」を唱えているという。いずれにしても、首相が「小沢切り」の姿勢を一貫して崩していないのは疑いなくも、4日の年頭記者会見では、議員辞職も念頭に小沢氏自らが出処進退を判断するべきだとまで発言した。
「小沢氏が置かれた状況はこれまでになく厳しい。復権の突破口を開けたらたいしたものだ」
自民党のころからの小沢氏を知る民主党のベテランは、小沢氏は万策尽きたとみている。新党を結成しても、衆院解散・総選挙があれば、多くが落選の憂き目をみるだろう。政界をかき回すほどの勢力になるとは到底、思えない。
単独離党して政界の表舞台からひそやかに姿を消していく−。政権交代の立役者にしてはもの寂しいが、そんな末路を小沢氏がたどることも、なくなはない。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/110110/plc1101101201003-n1.htm
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