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安愚楽牧場経営破たんとその前年の宮崎口蹄疫事件
2011年8月、安愚楽牧場が経営破たんした。その後、今年6月経営陣の詐欺容疑での逮捕がされた。刑事責任の追及がされることはよいことだと思う。しかし、反面、後味の悪さもある。
まず、安愚楽牧場の経営陣の自転車操業による被害だけでなく、その被害を取り戻したいという投資家の希望に付け込んだ2次被害が既に発生してしまっていたことだ。つまり、警察による介入がされた時点ではこの事件の被害者はある意味しゃぶり尽くされてしまっていたということ。その意味で、警察による介入がもっと早く行われていたらと言う残念さがある。
しかし、今回の安愚楽牧場事件ではもっと重大なことがある。それは2010年の宮崎口蹄疫事件で安愚楽牧場はかなり重要な役割を果たしていたはずだからだ。2010年の宮崎口蹄疫事件では約1000億円を超す被害が出た。それだけ大規模な感染拡大が起こっていたのだが、その感染拡大の原因として一部マスコミで報じられたのが安愚楽牧場だった。つまり、安愚楽牧場での口蹄疫発症が隠された結果、それが感染拡大を招いたというものだ。確かに、安愚楽牧場での管理はかなりいい加減なものであり、またはっきりと口蹄疫感染が分かった後もその隠ぺいが行われ、その結果感染拡大が起こったのは一面の事実だろう。しかし、問題は、実を言うともっと深刻だ。
つまり、宮崎県での感染拡大の真の原因は安愚楽牧場による口蹄疫感染隠ぺいにあるわけではないからだ。真の原因は行政の対応にある。
口蹄疫は潜伏期間が1週間ほどある。しかし、ウィルスの吐き出しは感染の翌日から始まる。つまり、症状があらわれたときには既に1週間程度ウィルスの吐き出しが行われ相当程度に感染拡大してしまっているのだ。だから、口蹄疫感染の第一例が確認されたら、その牧場の全家畜を即刻処分して、かつ半径20キロとかまたは50キロ程度の牧場に立ち入り検査をして血液検査をし、発症前に感染を確認して、感染した家畜がいた牧場の全家畜を発症する前に即刻処分することが必要だったのだ。
しかし、2010年の宮崎では、発症前の立ち入り検査はほぼまったく行われなかった。牧場からの発症の報告を待ってから処分が行われたのだ。行政はただ単に各農場へ電話をかけ、発症しているかどうかの確認をしていただけだという。同じ宮崎の2000年の口蹄疫発症の時は発症前の立ち入り検査がセオリーどおりに行われ、ほとんど被害を出すことなく収束したのだから2010年の感染拡大はある意味故意に行政が放置した結果だとさえ言えるのだ。
しかも、被害補償が不透明に行われた。つまり、どこの牧場がどの程度の金額の補償を受けたのかは全く公表されていないし、そもそも、補償された家畜全体で、その明細が非常に大まかにしか公表されていない。本来なら例えば肥育牛での評価ランクが何通りあり、それぞれのランクごとの金額とその頭数までは公開されてしかるべきだったが、単に肥育牛何頭、乳牛何頭と言う発表しかされていない。
また、行政に対して裁判が起こされているが、それは宮崎県が県所有の種牛を不法に移動したというものであり、感染確認に関する不作為の責任を問うものではなかった。
今、改めて2010年宮崎口蹄疫事件を振り返ってみると、見事に情報コントロールがされていたなと思う。宮崎で感染拡大が進んでいてもなかなか全国規模での報道はされなかったし、全国規模での報道がされたのちも行政による発症前の感染確認についての不作為は全く報道されなかった。そして、そういう状態で写真週刊誌による安愚楽牧場での発症隠しが報道されたのだ。宮崎県内だけでなく全国的に、あの1000億円もの被害を出した感染拡大の責任は安愚楽牧場にあると思われている人たちが多く居るはずだ。安愚楽牧場はそういった悪名を引き受けることによりある程度の補償の優遇を受けていた可能性がある。
低金利は既に10年以上続いている。また、牛の出荷価格の低迷も相当前から始まっていたはずだ。だから、安愚楽牧場による出資募集がほぼ詐欺に近いものになっていたのは少なくとも10年程度前にははっきりしていたはずだ。本来ならこの時点で監督官庁が経営に介入して、営業停止などをさせておけば今回のように日本史上最大と言われる数千億円もの被害を出すことはなかったはずだ。
2010年の宮崎口蹄疫事件は行政による不作為だけでなく、宮崎大学の獣医学部、農学部、宮崎県内の獣医師、宮崎県内のマスコミ、そして同じく全国の関係者全体が何が本当はおかしいかを知りながら放置した結果起こったものだ。直接の関係者である行政の責任が最も重いが、その他の関係者もその責任を果たしていたとはとても言えないだろう。そして、その結果、多くの家畜の命が無駄に失われ、多くの地元農家の方が苦しみ、更に、1000億もの税金が費やされたという意味で全国民が被害を受けたのだ。
今、福島第一原発事故についてもほぼ同じようなことが繰り返されている。原子炉の地震時の監視カメラ映像や4号炉の爆発時の映像などが隠ぺいされているし、原発作業員の人件費や除染費用の危険手当など年に数百億円を超える規模で誤魔化しが行われてい、それがきちんと追求されていない。
2010年宮崎口蹄疫事件は一応その影響が県内にとどまったが福島第一原発事故はその放射能漏れの影響は全国どころか地球規模になっている。しかも、地震によってかなりの程度原子炉が壊れたことはほぼ明白と言っていいがほとんどそのことについては無視されている。だから、このまま次の原発事故が近い将来起こってしまうだろうことはほぼ確実だ。
宮崎の事件ではその関係者の多くは本当に起こっていることが何かを理解していただろう。そしてその上で自分はあまり被害を被らないからと知らん顔をしたはずだ。しかし、福島第一原発事故では、低線量被曝の影響が何年も遅れて表面化することから既に自分が被害を受けていることに多くの関係者が気がつかれていない。また、このままでは次の原発事故が避けられなことについてもその可能性があまりに甘く見られている。
そもそも、東電の経営陣に事故時の監視カメラ映像を見た人がどれほどいるのだろうか。全国の電力会社の経営陣に4号炉の爆発映像を見た方は存在するのだろうか。事故時の内閣だった菅政権の閣僚の方たちやその後の政権の閣僚の方たちも事故時の監視カメラ映像や4号炉の爆発映像を見られているのだろうか。推測でしかないが、多分、中央官僚を含めて、ほとんどの関係者がこういった情報にアクセスできていない可能性が高い。それほどまでに今の日本は自分自身の運命に対して当事者能力がない。
一番の不幸は、こういった実態を知らされないままやがて来る被害を受けるしかない一般市民だろう。
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http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/154233/
狙われた「安愚楽牧場被害者」
2013年06月22日 11時00分
Wの“詐欺”悲劇か――。戦後最大級の消費者被害を生み出した「安愚楽(あぐら)牧場」(栃木県那須塩原市)に、とうとう強制捜査のメスが入った。警視庁は18日、元代表取締役ら3人を逮捕した。今回の逮捕容疑は預託法違反。これを契機に全国の被害者約7万3000人、被害金額約4200億円を「だまし取った」ことによる詐欺での立件が本丸となる。全容解明への期待が高まる一方、安愚楽の被害者がさらに金をだまし取られるケースが相次いでいることが判明した。
警視庁捜査2課は18日、元代表取締役の三ケ尻久美子(69)、元取締役の増渕進(59)、大石勝也(74)の3容疑者を特定商品預託法違反(不実の告知)の疑いで逮捕した。
逮捕容疑は、安愚楽牧場の経営破綻直前の2011年4〜7月ごろ、オーナーと呼ばれる出資者約100人に対し、保有する牛の頭数が大幅に不足し約定通り割り当てる牛がいないのに、「牛はいる」と書かれたパンフレットや実在しない牛の耳番号を記載した契約書を送付するなどして勧誘した疑い。
11年8月の経営破綻から約2年を経てついに当局が動いた。和牛オーナー制度は、経営破綻の数年前から出資金を配当に充てる「自転車操業」に陥っていた疑いもあり、警視庁は詐欺容疑も視野に実態解明を進める。
同日、会見した被害対策弁護団の紀藤正樹弁護士らは今回の逮捕に納得してはいない。それもそのはず。「詐欺による起訴、再逮捕を強く期待したい」からだ。
預託法違反と詐欺には大きな違いがある。「牛がいないのに、いるかのように宣伝したこと」(紀藤氏)が前者。一方、その上でお金を払わせることを目的とした行為が後者に該当する。中には億単位の出資者もいるが、被害者は多額の金をゴミにしてしまった。詐欺容疑が適当であることは言うまでもない。弁護団としては「詐欺を固めるために、(預託法違反で)強制捜査に入ったという認識」を持っている。
政府に対しても、他の和牛商法業者が軒並み破綻していく中で、安愚楽の健全性をしっかり調査しなかったために余計な被害者を出してしまったことへの責任を追及していく方針だ。
さらに、安堵もしていられない事態が起こっている。「二次被害についても報道してもらいたい」と弁護団の副団長である鈴木喜久子弁護士は訴えた。安愚楽の被害者を狙い撃ちにして「あなたの被害金を取り返してあげる。つきましてはこんな投資話がございます」と近づいてきた詐欺グループに被害に遭う事態である。
「我々が開いた被害者への説明会の会場にまで来て『あなただけに話がある』と持ちかけてきた者までおりました。おそらく安愚楽からリストが漏れたのでは…」(鈴木氏)
こうなると泣きっ面に蜂どころではない。
「正確にはわかりませんが、数百件は二次被害が起きたそうです。中には1000万円単位の金を取られた方も」(同)
逮捕された3人の破産手続きで得られた金を含めてもなお、被害金額の4%しか資産回収が見込まれていない現実がある。「その情報が今日の逮捕で大々的に報道されますと、焦った方がまただまされることも。特に高齢の方に気をつけてもらいたい」
つまり「返ってくる金額はこれっぽっちかい!?」と嘆く人が、「被害金を取り戻せますよ」とありもしない詐欺話を持ちかけられ、引っかかってしまうのではないかという危惧だ。日本を震撼させた安愚楽の騒動はただでは終わりそうにない。
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