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[真相深層]DNA型鑑定、威力どこまで 4.7兆人に1人識別 「科学的証拠」過信には危うさ[日経新聞]
東京電力女性社員殺害事件はDNA(デオキシリボ核酸)型鑑定が決め手となって再審の開始が決定し、服役していたネパール人男性は釈放され、帰国した。DNA型鑑定が過去の判決に見直しを迫り、再審のカギを握る流れはこれからも続きそうだ。だが科学の力だけですべてが解決するわけではなく、過信は禁物である。
DNA型鑑定は、血液や汗、皮脂などから検出したDNAの塩基配列の繰り返し回数を調べ、個人を識別する。日本では1989年から犯罪捜査で使われている。
たとえば犯行現場に髪の毛が落ちていれば、溶液を使ってそこからDNAを精製・抽出する。そのうえで必要な塩基配列の部分を鑑定に十分な量までコピーして増幅。これを分析装置にかけ、DNAの型を判定するという仕組みだ。
2010年に再審で無罪となった足利事件に続き、15年も前に起きた東電社員殺害事件の確定判決見直しが決まったのは、精度が飛躍的に向上したDNA型鑑定を抜きには考えられない。
導入当初の鑑定方法は現在と異なり、DNAの型が別人と一致する確率は「1千人に1.2人」程度だった。だが2003年に鑑定法が切り替わって「4兆7千億人に1人」にまで向上。単純計算で、識別能力は約56億倍向上したことになる。
指紋以来の武器
警察庁は事件現場に残された遺留物と、容疑者から採取・分析したDNA型を登録してデータベースを構築。容疑者の特定などに活用している。
自動分析装置の導入などで、より古く、より微量の血液などからも鑑定が可能に。東電の事件では、新証拠となった体液は微量だったため、当時の旧式の方法では鑑定が難しかったという。足利事件では、川底から見つかり、十数年間常温におかれていた着衣からDNAを検出している。
全国の警察が昨年実施したDNA型鑑定は約21万3千件。この10年で約80倍に増え、「指紋以来の捜査の大きな武器」となっている。足利、東電両事件は、威力を増した最新の鑑定がいま起きている事件だけでなく、数十年も前の事件にも科学の光を当て始めたということでもある。
「無実の人を罰することは当然、許されない。しかし、確定判決が認めた数々の状況証拠による立証を、いまになってDNA型鑑定がすべて覆してしまう事実には戸惑いを感じる」。捜査関係者がこう話すように、その威力は強大だ。
同じ資料でも差
半面、「科学的証拠」は結果を妄信したり、引きずられたりしてしまう危うさをともなう。実際、足利事件では捜査段階で実施した不正確なDNA型鑑定をもとに容疑者を決めつけるような調べが行われ、いったん有罪が確定した判決もこの誤った鑑定が支えになった。
同じ血液などの資料でも、保存の状態や鑑定の手法によって異なる結果が導かれるケースもある。再審を請求している別の事件では、検察側と弁護側がそれぞれ推薦した専門家が鑑定にあたったが、双方の見解は一致せず審理が続く。
資料の混入など、人為的なミスが取り返しのつかない結果を招くこともありうる。2010年には神奈川県警が警察庁のDNA型データベースに誤った情報を登録し、無関係の男性の逮捕状を取った問題が起きている。
どんなに科学的証拠が客観的で信頼性が高いといっても、鑑定が厳格に実施されそれが正確に評価・判断されなければ意味がない。こうした条件が整って初めてDNA型鑑定は威力を発揮する。
(編集委員 坂口祐一)
[日経新聞5月23日朝刊P.2]
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