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オウムの関与が疑われた事件の経過
【オウム真理教研究】(上)江川紹子さんインタビュー 「遊び感覚」で殺人行為 暴走した「普通の人たち」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120624/crm12062407000000-n1.htm
2012.6.24 07:00 産経新聞
オウム真理教による凶悪事件を知らない世代が増える中、17年にわたって逃走を続けていた特別手配犯の高橋克也(54)、菊地直子(40)両容疑者が逮捕されるなど教団が改めてクローズアップされている。教祖の麻原彰晃死刑囚(57)=本名・松本智津夫=に率いられた教団と、多くの命が奪われた数々の事件を振り返る。(上)では、ジャーナリストの江川紹子さんに聞いた。
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オウム事件がなぜ起きたのか。それを一言でいうのは難しい。ただ、この特異な事件を起こした信者らは、はじめは「ごく普通の人たち」だったことを伝えておかなければならない。
事件が起きたのはバブルの絶頂期。好景気に浮かれる人の一方、むなしさを感じる人もいた。そこに精神的な救済をうたってつけ込んだのが、麻原彰晃死刑囚を教祖とするオウム真理教だった。
出家させて外部の情報を遮断。閉鎖的な環境のなか、自分たちこそが正しい、疑問を呈するものはすべて間違いだと教え込んだ。疑問を持つのは帰依が足りない、レベルが低いからだと。電流が流れ苦痛を与えるヘッドギアをかぶらせ、LSDや覚醒剤を使って幻覚を見させた。「(幻覚を)体験したのは教義が正しいからだ。オウムは真理だ」と。教祖の教えは絶対。信者らを思考停止にし、教団はブレーキのない車のような状態となった。
武装化に向かった際、どれだけの信者が本当に人を殺そうと思ってやっていたのか疑問だ。松本サリン事件で、サリンを噴霧した端本悟死刑囚は公判で「またバカなことやってるな、いたずらやってるなと感じていた」と証言している。
オウム事件には残虐性の一方、どこか「遊び感覚」のような現実離れしたところがある。仮谷清志さん拉致事件の際にも最初の指示は「村井(秀夫元幹部)の造ったレーザー銃を使え」というものだったし、ロボットや潜水艦を造ろうとしたり薬物を噴霧しようと何百万円もかけて買ったラジコンヘリを木にぶつけて大破させたり、ばかばかしいことをたくさんしている。
こうした「おもちゃ」で遊んでいるようなところと、殺人という恐ろしい行為が、まったく同じ次元で行われていたところにこの事件の怖さがある。
高橋克也容疑者はいまも教祖への信仰心を捨てていないように思える。逃亡生活で外部の人と心を交わす機会がなく、教祖との関係を超える大切なものができなかったからだろう。
人間は弱い。恐怖や不安につけこまれ、だれもがまっとうな思考を保っていけるかといえば、私はそんなことはないと思う。いまは景気も低迷し、不安を抱える人が多い。原発事故で、放射能が怖い気持ちにつけ込む「似非(えせ)科学」のようなものまで出てきている。当時以上の危うさを感じる。同じ轍(てつ)を踏んではならない。(談)
えがわ・しょうこ 昭和33年、東京生まれ。神奈川新聞記者として活動後、フリー記者に。坂本弁護士一家殺害事件をきっかけにオウム事件を追及。平成6年には自宅に毒ガスのホスゲンをまかれ、自身も命を狙われた。著書に『「オウム真理教」追跡2200日』など。
【オウム真理教研究】(中)危険思想、「麻原隠し」で今も信者獲得
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120624/crm12062407010001-n1.htm
2012.6.24 07:00
オウム真理教の前身の宗教団体「オウム神仙の会」は昭和59年2月に設立された。熊本県出身の麻原死刑囚が上京してヨガ道場を開き発展させた。当初、十数人だった信者は増加。入信者は高学歴で当時の社会に批判的な若者が多かった。
チベット仏教をうかがわせる教義や神秘性が信者の心をとらえた。麻原死刑囚は「尊師」として神格化され、出家信者は「正大師」「正悟師」などの序列でピラミッド型の階級社会を形成。幹部信者にはホーリーネーム(教団内での名称)が与えられるとあおり、財産の寄進や信者の勧誘を競わせた。教団内では「イニシエーション」(秘儀伝授)と称し、薬物などを使ったマインドコントロールで信者を縛り付けた。
オウム真理教に改称したのは62年7月だが、同年1月には麻原死刑囚はすでに殺人を意味する「ポア」という言葉を発していた。63年と平成元年には脱会しようとした男性信者を殺害するなどした。宗教法人の認可を受けたのは事件後の同年8月だった。危機感を抱き信者を取り戻そうとする家族とのトラブルも相次ぎ、その過程で元年11月、信者の脱会活動を支援していた坂本堤弁護士=当時(33)=と妻子を横浜市内の自宅で殺害、遺体を山中に埋めた。
2年の衆院選では、「真理党」を名乗り25人が出馬するが、全員落選。麻原死刑囚は非合法活動を辞さない姿勢を鮮明にし「国家転覆」という思想に到達。教団は山梨県旧上九一色村に広大な土地を購入し、「サティアン」と称する施設群を建設して活動拠点を移しサリンや自動小銃を製造、武装化を進めた。
6年6月には「自治省」「建設省」などの省庁制を導入、疑似国家的な組織を形成し信者数は国内のほかロシアなども含め1万人になった。同月には教団が民事訴訟を起こされている長野地裁松本支部の裁判官官舎を狙ってサリンを噴霧した松本サリン事件を起こし8人を殺害。これ以後も猛毒のVXを使用した殺人事件などを引き起こした。
教団の関与が疑われる事件が相次いだが、宗教団体であるため警察当局は捜査に慎重な姿勢を崩せなかった。しかし、7年2月、教団から脱会しようと身を隠していた女性の所在を聞き出そうと、兄で東京・目黒公証役場事務長、仮谷清志さん=当時(68)=への逮捕監禁致死事件が発生すると状況は一変。事件に使用した車から信者の指紋が検出され、警視庁が捜査に乗り出した。
強制捜査が迫った同年3月20日、警察の目をくらませるため教団は地下鉄サリン事件を起こす。朝の通勤時間帯に官庁街に向かう地下鉄車内でサリンを散布し13人が死亡、6千人余りが負傷した。警視庁などは2日後の22日、上九一色村の教団施設を強制捜査。5月16日には、施設の天井裏に隠れていた麻原死刑囚を発見し逮捕、幹部らも続々と逮捕され教団は8年に宗教法人格を失った。
一連の事件から17年。教団は主流派「アレフ」と、上祐史浩代表による「ひかりの輪」に分派して活動を継続。公安調査庁によると、信者は両派で約1500人。アレフは麻原死刑囚の生誕祭では「未来永劫(えいごう)、麻原尊師についていく」と強い帰依心を示し、脱麻原を強調するひかりの輪も「欺瞞(ぎまん)的な“麻原隠し”を進めている」としている。
両派の新規信者獲得者数は21年から100人台で推移し、23年は213人と増加。現在でも若者の間に根を張ろうとしている。
■サリン ナチス・ドイツが開発したとされる神経ガスの一種。純粋なものは無色無臭で常温では液体。毒性が非常に強く少量でも吸収すると視野が狭くなる、吐き気、けいれんなどの症状が起こり短時間で死に至る。
【オウム真理教研究】(下)麻原死刑囚は独房で車いす 裁判再開で見通し立たぬ死刑執行
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120624/crm12062407010002-n1.htm
2012.6.24 07:00
オウム真理教による一連の事件の裁判では、これまでに麻原彰晃死刑囚を含む13人の死刑が確定している。昨年11月に「最後の被告人」とされた元幹部、遠藤誠一死刑囚(52)の上告が棄却され終結したかに見えたが、平田信被告(47)ら特別手配犯3人の逮捕で裁判は再び幕を開ける。麻原死刑囚らが証人として公判に出廷する可能性もあるだけに、死刑執行の時期にも影響を与えそうだ。
遠藤死刑囚の確定までに起訴されたのは189人。坂本弁護士一家殺害事件▽松本サリン事件▽地下鉄サリン事件の3大事件のいずれかに関与した19人のうち13人が死刑、5人が無期懲役、1人が有期刑となった。
中でも麻原死刑囚の公判は異例の展開をたどった。1審で弁護団は「事件は弟子たちの暴走」と主張。麻原死刑囚は、法廷で不規則発言を繰り返し途中から口をつぐんだ。検察側は薬物密造4事件の起訴を取り下げるなど公判短縮を図ったが、1審だけで7年10カ月の期間を要した。
1審は257回の公判の末に死刑を宣告。2審の弁護団は「被告に訴訟能力がない」として公判停止を求め控訴趣意書の提出を拒否したが、東京高裁は訴訟能力を認めて控訴を棄却。特別抗告も棄却され、控訴審が開かれないまま死刑が確定した。麻原死刑囚は現在、独房で車いすを利用して過ごしているという。
一度は終結した裁判だが、平田被告の出頭や、菊地直子、高橋克也両容疑者の逮捕で事件は再び動き出した。3人の特別手配が続いたのは共犯者の起訴から刑の確定まで時効が停止する刑事訴訟法の規定で時効が成立していなかったほか、高橋容疑者らの逮捕容疑に適用された殺人罪は法改正で時効が撤廃されているため。
平田被告は爆発物取締罰則違反罪で起訴され、裁判員裁判の対象。24日に勾留期限を迎える菊地容疑者は猛毒VX事件にも関与したとされる。高橋容疑者についても裁判員が複数の事件を審理、難しい判断を迫られる局面も想定される。
裁判の「再開」は死刑執行にも影響を与えている。3人の公判では、麻原死刑囚ら元幹部が証人出廷する可能性もある。こうした事情から共犯者が公判中の場合は刑を執行しないケースが多く、法務関係者の一人は「麻原死刑囚らの執行時期はさらに見通しがたたなくなった」としている。
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