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模索しながら死刑囚役/仲代達矢 名張毒ぶどう酒事件のドラマ/「無罪信じて」演技
中日新聞 2012.04.13 夕刊 9頁 放送芸能面
半世紀以上も無実を訴え続けている名張毒ぶどう酒事件の奥西勝死刑囚(86)。事件を取り上げた東海テレビのドラマ「塀の中の約束(仮題)」で、実在の死刑囚という難役に仲代達矢が挑んだ。「冤罪と信じるから受けた」という覚悟に、少年時代に終戦を経験した“戦中派”の国家観、俳優人生六十年の矜持が垣間見える。(浅野宮宏)
映画「切腹」(一九六二年)の撮影中に事件が起きたと記憶している。事件を追ったドキュメンタリー「毒とひまわり」(二〇一〇年、東海テレビ)でナレーターを務めた際、多くの資料や書物に当たり「証拠があると思ってたのに。まさか自白で犯罪が成立するなんて」とがくぜんとした。
「人が人を裁くことは難しい」。刑事裁判の難しさを教えてくれた元裁判官の義父から下級審の判断を覆す厳しさを打ち明けられた記憶もあいまって、かたくなな司法に疑問を呈する。「問題は真実の追求。なのに冤罪だったらどうするんでしょう。疑わしきは罰するべきではないのに。裁判官とか直接かかわった人ばかりじゃなく、人間として私も含めて。償えないですよね」
奥西死刑囚より六歳若い三二年生まれ。軍国少年だった。「鬼畜米英と言っていた大人が、八月十五日を境に親米派に。子ども心に人間不信というか…」。体制をうのみにしない批判精神が根付いた。「まったく不自由で日本中が貧乏。食べ物もなく、毎日空爆で逃げ回って生きるのがやっと。終戦で自由になったけど、奥西さんはもっとすごい不自由さを五十年もね」
日本を代表する俳優として実在人物も数多く演じ、常に役との距離感を保ってきた。だが、独房で生かされている奥西役に初めて手法を変えざるを得なかった。「心境は計り知れないし。役者は、扮するとか、なり切るとかよく言うけど、僕が奥西さんを演じる、なり切るなんて、とてもできない」
いわゆる“再現ドラマ”にしたくない。「だったら、仲代達矢がこの状況に追い込まれたらどうなるのか。そういうつもりで受けた。だから無罪と信じなければできなかった」と言い切る。
「つらい、苦しいという感情ばかり演技で出しても、なかなかこの作品には、俳優として太刀打ちできない。ともかく難しいことだけは確か」と模索を続けた。「俳優になってちょうど六十年。素晴らしく、よくできた台本。私にとって記念碑的な作品になる」
六月下旬に放送予定。ほかに樹木希林、天野鎮雄、山本太郎らが出演する。
◇
近く再審か
名張毒ぶどう酒事件 1961年3月、三重県名張市で開かれた懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した。奥西勝死刑囚は一審無罪、二審で逆転死刑、最高裁で確定した。事件は、自白偏重など刑事司法の課題が凝縮され、7回の再審請求で2005年4月、いったん裁判のやり直しが決まったが、取り消された。最高裁に差し戻された名古屋高裁が近く、あらためて再審決定するのか、注目されている。
中日新聞社
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