03. BRIAN ENO 2011年12月10日 07:17:31: tZW9Ar4r/Y2EU
: 2aMGYmhAyE
以前、デシ様より、ご紹介いただいた訳詞 に関するものを、貼り付けてみます。I heard there was a secret chord that David played and it pleased the Lord But you don't really care for music do you Well it goes like this: The forth, the fifth, the minor fall and the major lift The baffled king composing Hallelujah Hallelujah Hallelujah Hallelujah Hallelujah ぼくはきいたことがある ダビデが主を喜ばせた秘密の和音があると でもあなたは、ほんとうは音楽を好んではいないんだろ? そう、それはこんな風に進んでいく 第四音、第五音、短調が、終わり長調が現れる ハレルヤを紡ぐ困惑した王 ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ この楽曲を理解するためには、旧約聖書に関する基礎的な知識がないといけない。古代イスラエル王国二代目の王であるダビデは竪琴の名手だった。旧約聖書には先代の王サウルが悪霊に悩まされているときも、彼の竪琴が王の症状を和らげたことが記されており、はじめの二つの行はその事実を背景として描かれている。 「ハレルヤ」という語自体が、ダビデが記した「詩篇」のなかで初出した語であり、ヘブライ語で「神を賛美せよ」を意味する。この詩全体が「詩篇」を模した構成になっていることもすぐに気づくだろう。 挿入句的な次の行において、"you"は、動詞が現在形であることを考えると、ダビデではありえない。つまり"you"は「主(しゅ)」、つまり神だろうと推測される。ここからは歌い手の個人的かつ、いささか不遜な態度が読み取れる。 そして次の行ではまたダビデの楽曲の話題に戻る。"the forth" "the fifth" "the minor" "the major" はすべて音楽用語であり、それぞれ「(音階における)第四音」「第五音」「短調」「長調」を意味している。短調とはマイナースケールと呼ばれ一般に暗い調子を持つ音階であり、長調とはメジャースケールであり、その反対に明るい調子を持つ音階だ。 最後の行の「困惑した」の具体的内容は次のヴァースで語られることになる。ここではあえて完全な文にせず、動名詞を用いながら時制を打ち消して、臨場感を感じさせている点にも注目してほしい。 Well your faith was strong but you needed proof You saw her bathing on the roof Her beauty and the moonlight overthrew you And she tied you to her kitchen chair She broke your throne and she cut your hair And from your lips she drew the Hallelujah Hallelujah Hallelujah Hallelujah Hallelujah あなたの信仰は厚いけれどそれを示さなければいけなかった あなたは彼女が屋上で水浴びをしているのを見つけた 彼女の美しさが月光とともにあなたの心を掻き乱した そして彼女はあなたを椅子にしばりつけ あなたの王権を打ち砕き、髪を切り落とした そしてあなたの唇からハレルヤを紡ぎださせた ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ ダビデ王はその治世中、自分の部下であるウリヤの妻であるバト・シェバを見初めてしまい、彼女と関係をもってしまう。そのために彼はてひどいしっぺ返しを食らうことになるが、このヴァースの初めの部分はそのことについて語っている。狂気(lunacy)の語が指し示すように、西洋では月の光が狂気をもたらすという伝承があり、それが三行目の歌詞に反映されている。 さて、ここまではダビデ王にまつわる逸話で歌詞を読解することができたが、ここからは別のストーリーが挿入されていることに気づいただろうか?かの有名な「サムソンとデリラ」である。ナジル人であったサムソンは神から驚異的な怪力を授かり、「士師」としてイスラエル全体の指導者であったが、決して髪の毛を切ってはいけないと厳命されていた。ところがサムソンは娼婦デリラに入れあげてしまい、ペリシテ人の策略により眠っている間に髪の毛を切られてしまう。ここで盲目的な劣情に溺れていくふたりの男の姿が重ねられている。ペリシテ人に捕らえられたサムソンは目をえぐられ、牢につながれる。そしてある日、ペリシテ人たちが彼らの神ダゴンへ勝利の祝いを行っているとき、神に祈り、その怪力を取り戻し、建物を崩壊させペリシテ人もろとも圧死する。最後の行はそんな姿を想像させてくれる。 Baby, I've been here before I've seen this room and I've walked this floor You know, I used to live alone before I knew you And I've seen your flag on the marble arch And love is not a victory march It's a cold and it's a broken Hallelujah Hallelujah Hallelujah Hallelujah Hallelujah ベイビー、ぼくは以前ここにいたんだ この部屋を見たことがあるし、この床を歩いたこともある 知っているだろう、ぼくはきみと知り合う前は一人で生きていたんだ そしてぼくはマーブルアーチの上のきみの旗を見た 愛は凱旋パレードじゃないんだ これは冷たく、壊れたハレルヤなんだ ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ これまでのヴァースが歴史上のストーリーを語ったものだったのに対して、ここからは歌い手自身のストーリーが展開されていく。歌い手のいる「ここ」には、以前にもいたことがある「ここ」であり、それ以降の文から歌い手は現在恋人と離れ孤独な状態にあることがわかる。 4行目のマーブルアーチとはロンドンのハイドパークにある凱旋門のことだが、女性器を指す古いスラングでもある。"flag"には旗という意味のほかに、「ブラシなのどの毛先」という意味もあるので、この文は性的な暗喩であると解釈される。そして愛とは凱旋パレードのように「華々しい」ものではなく、「冷たく」「壊れた」ハレルヤだと語られる。 Well there was a time when you let me know What's really going on below But now you never show you that to me do you But remember when I moved in you And holy dove was moving too And every breath we drew was hallelujah Hallelujah Hallelujah Hallelujah Hallelujah 昔ぼくに教えてくれたことがあったね 一体何が起きているのかを でも今ではぼくに何も見せてくれないんだね でも思い出して欲しい、ぼくがきみと同居しはじめた頃を 聖霊が消えてしまった時を ぼくらの呼吸ひとつひとつがハレルヤだった時を ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ ここで歌詞は、"you"に「恋人」と「主」の二重の意味がかかる状態になる。かつて何でも話してくれた恋人が、今では疎遠になってしまい、以前のことを思い出して欲しいと捉えることも可能であり、一方で神から見放され、聖霊が消えてしまい、預言の下されなくなった王の姿を描き出していると解釈することもできる。 Maby there's a god above But all I've ever learn from love was how to shoot somebody who outdrew you And it's not a cry that you hear at night It's not somebody who's seen the light It's a cold and it's a broken hallelujah Hallelujah Hallelujah Hallelujah Hallelujah 恐らく神はぼくらの上にいるのだろう でもぼくが愛から学んだことは きみより速く拳銃を抜くやつを撃つことだけ そしてきみが夜叫び声を聴いたりはしない それは光を見た人間ではない それは冷たく、壊れたハレルヤなんだ はじめの行にある「神」"a god"が"the god"でないということが、第一ヴァースの"you don't really care~"における醒めた視線と共通している。「神は愛なり」の言葉からわかるようにキリスト教における神は愛と同義語である。しかし「ぼく」が愛から学んだことは「きみ」を守るために、敵を撃つことだった。そして「ぼく」は「光をみる」=「希望を見出」してはいない。なぜなら「きみ」が耳にするのは冷たく、壊れたハレルヤなのだから。 I've heard there was a secret chord That David played, and it pleased the Lord But you don't really care for music, do you? It goes like this The fourth, the fifth The minor fall, the major lift The baffled king composing Hallelujah
Hallelujah, Hallelujah Hallelujah, Hallelujah Your faith was strong but you needed proof You saw her bathing on the roof Her beauty in the moonlight overthrew you She tied you To a kitchen chair She broke your throne, she cut your hair And from your lips she drew the Hallelujah Hallelujah, Hallelujah Hallelujah, Hallelujah Maybe I've been here before I know this room, I've walked this floor I used to live alone before I knew you I've seen your flag on the marble arch love is not a victory march It's a cold and it's a broken hallelujah Hallelujah, Hallelujah Hallelujah, Hallelujah There was a time you'd let me know What's real and going on below But now you never show it to me do you? Remember when I moved in you? The holy dark was moving too And every breath we drew was hallelujah Hallelujah, Hallelujah Hallelujah, Hallelujah Maybe there's a God above And all I ever learned from love Was how to shoot at someone who outdrew you It's not a cry you can hear at night It's not somebody who's seen the light It's a cold and it's a broken hallelujah Hallelujah, Hallelujah Hallelujah, Hallelujah Hallelujah, Hallelujah Hallelujah, Hallelujah |