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映画「怒りの葡萄」ジョン・フォード監督。
スタイン・ベックの原作は読んではいないが、映画の方は、何度か観た。
それも、ここ、2〜3年の間に何度かNHKBSでやっていたのを観たのであるが・・
細かいストーリーについては割愛させていただく。
なんと言っても、この映画のすごいところは、
「この世にそびえる銀行家(そのへんの銀行に勤めるおじさんのことではない)のことを、水面下で強烈に批判していることである。」
農業が機械化(トラクター等の機械化)により、大規模農業に変わっていき、小作農のような農民がその農地から強制的に(暴力的に)追い出される。農民の一人がこのことに憤慨し、だれが、こんなことを、始めたんだ?と憤る。トラクターの運転手は俺は○○に頼まれた、じゃあ、その○○はだれに頼まれたんだ?なんとか銀行の奴だろう。じゃあ、銀行の支店長だな、いや、その支店長もその上のボスに頼まれているハズだ・・と、命令の川上に行き、命令の首謀者を暴こうとするが・・
追い出された農民は、あてもなく放浪。そんな時、いちまいのビラをみる、「カリフォルニアの農園で、800人の作業員募集」これで、彼らはカリフォルニアでの夢と希望を見つけ、生きる目標を見つける。
しかし、旅の途中、他の似たような旅人と出会う、そこで、その旅人は、「カリフォルニアには夢も希望もない、あるのは地獄だけだ。あそこには行くな!」と、なぜなら、そのビラはアメリカじゅうにばらまかれている。アメリカじゅうの職にあぶれた下層階級が、怒涛のようにカリフォルニアに押し寄せているんだ。800人募集のところに、何十万人も群がってきてるんだ・・。お前さんたち、バカじゃないだろうから、わかるよな?この意味?
しかし、行くあてのない、一行は、一度は夢見たカリフォルニア行きを続ける。道中、逃げ出すもの、旅の途中で、命を落とすもの・・過酷な旅は続く。
ようやく、夢と希望のカリフォルニアの着くが、やはり、忠告通りの地獄であった。劣悪な環境と労働条件の中、信じられない低賃金で、雇われる。
文豪、スタインベックの作品である。細かい描写や文学的な会話、多くの悲劇と人間の醜さ、殺戮などが、2時間の中に凝縮されている。その辺は、映画を観て感じていただければ幸いである。
スタインベックやジョン・フォードが表現したかったのは、「この世には、陰に隠れた支配者がいる。(大統領とかじゃない)我々のように支配されるべく生まれた多くの一般人は、彼らに翻弄されて、過酷な環境の中で、なんとか、いきていくしかすべがない・・。」
そのような、いわば、悲壮感を超えたあきらめや敗北や屈服に近いようなテーマを感じるのは、私だけであろうか?
単純に考えても、農業の機械化で、大規模農場がスタートすれば、今までの小作農の農民はいらなくなる。「余剰の農民をどうするか?」「そうだ、いいアイデアがあるぞ!カリフォルニアの農場で、安く働かせよう。だから、アメリカじゅうに甘い夢を抱かせるようなインチキ募集広告のビラをまこう。」「そうすれば、余剰の農民は怒涛のように集まり、彼らを、安い賃金と、過酷な環境下で働かすことができる。我々、支配者は、農地の機械化と西海岸の農園でボロ儲けできるのである」・・このような、密談が支配者の間で、行われていたに違いない。
普通の人は、「農地の機械化→小作農の追い出し」と「募集広告」「西海岸の地獄の農園」をまったく、別の出来事、偶然の出来事、さらに、この映画そのものを悲劇の映画(ついていない家族の悲劇の物語)と理解するだろう・・
しかし、「農業の機械化」「農民の追い出し」「甘い夢を抱かせる募集広告」「地獄の農園」は、すべて、つながっているのである。仕組まれたのである。最初に言った、この世の支配者が、すべてを仕組み、裏で高笑いをしているのである。このことを、スタインベックやジョン・フォードは言いたかったのである。フォードのような大物監督であれば、支配者連中のことは、十分に知っていて、この作品を創ったと思われる。
「農業の機械化」「農民の追い出し」「甘い夢を抱かせる募集広告」「地獄の農園」それぞれの首謀者(経営者)は上に行けば、ひとつに収れんされるのである。
蛇足だが、スタインベックは当時の一般的なアメリカ人をひじょうに醜く、悪人に描く天才である。
もう一作、「二十日鼠と人間」という映画についても、当時の一般的なアメリカ人を醜悪に描いている。
たぶん、醜悪なアメリカ人に傷つけられた経験が彼にはあるんだろう。リアリティがあるからそう思うのだが・・
Grapes of Wrath redux 130 mins cut down to 15 minuts.
http://www.youtube.com/watch?NR=1&v=pbL4bXPDyFg
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