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まぐジャーナル 上杉 隆
首相官邸に入ってからの徹底的な差別は、歩行制限から始まる。
まず、フリーは会見場以外への移動が厳しく禁じられているのだ。
外務省と違ってさすがにトイレは自由だ(外務省ではフリー記者だけがトイレに行く場合に監視がつく)。
もちろん、大手の記者たちが占拠している記者室への立ち入りも禁止だ。私たちの税金で作られ、運営されているというのに、
フリーランスの立ち入りの自由はないのだ。納税の意志が揺らぐ。
もちろん官邸の食堂にも入れない。外国人記者ですら食堂には行けるというのに悲しい限りだ。
そう、フリー記者だけは官邸内で移動制限区域が厳しく設定されているのである。
さて、そうした差別は会見場に入ってからも続く。まずフリーの記者たちは、会場後方の狭いスペースに押し込まれるの決まっている。
これはルールだ。法的根拠は一切ないが、官僚と記者クラブが決めた恣意的なルールなのだ。
そのルールによれば、最前列は記者クラブの記者たちの特等席だ。たとえそこらじゅうに空席があっても、
フリーランスのジャーナリストたちは後ろの窮屈な「指定席」に着席しなくてはならない。
仮に、そのルールを破ったらどうなるのだろうか。答えは簡単だ。
半世紀前の米国の黒人女性、ローザ・パークスのような運命が待ち受けているだけである。
そう、日本のジャーナリストたちはいまだ公民権運動の米国以前のような差別と戦わなくてはならないのだ。
そうやってようやく首相会見は始まるのだが、もちろん、そこで試練が終わることはない。
会見では、司会役の千代幹也内閣広報官が、前列の記者クラブの記者たちから順序よく指名していく。
そこでは、フリー記者たちが、どんなに高らかに挙手をしても最初に指名されることはない。実は、それには隠された理由があるのだ。
首相会見では大抵、NHKの生中継が入っている。つまり、最初にフリーを指名することは、大手メディアにとっては都合の悪い質問が
飛び出す危険性が生じるということになる。よって、役人と記者たちのあうんの呼吸で、会見が無事に進行するよう、
記者クラブの記者たちから最初に指名していくのである。
このように自己の利益に絡む際の危機管理に関しては、極めてスピーディに動く。それが記者クラブシステムの特徴だ。
新聞、通信、放送の記者たちが順番に指名されていく中、手を上げ続けているのは決まって自由報道協会の記者たちばかりである。
ICレコーダーの「録音担当記者」や「速記担当記者」と化している一部の大手メディアの記者たちは挙手することもない。
なぜなら、挙手し、質問することは「録音」や「速記」の邪魔になるからだ。だが、そうした手を上げていない記者が指されることもある。
千代広報官には、見えざる手が見えるのである。
開始から30分過ぎ、NHKの生中継映像がスタジオに戻されるころ、ようやくフリー記者の出番が回ってくる。
だが、それでも高いハードルは続く。場合によっては、フリー記者は誰一人指されないことも少なくないのである。
こうやって首相会見が終わる。だが、まだ差別は続く。なにしろ、フリー記者たちだけが官邸の外に速やかに退出しなくてはならないのだ。
次の会見を待つ大手メディアの記者や外国人記者の横を、屈辱をもって、私たちは会見場を後にする。
これが、現代日本で続いている政府の会見における「アパルトヘイト政策」の実態だ。
きっと、本メルマガ読者には、日本の記者会見が世界中から愛想を尽かされている理由がお分かりいただけたと思う。
私は、こんなくだらない差別システムと12年間も戦ってきたのだ。
だが、多くの政治家はこうした欺瞞システムを知らないでいる。そのひとりが野田佳彦首相、その人なのである。
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