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2012.01.04 2012年に起こりそうなこと その6 「無策の円高が続く」
■為替総合
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2012年に起こりそうなこと その6 「無策の円高が続く」
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年からの「2012年に起こりそうなこと」シリーズを再開します。もちろん相場予想も入れたいのですが、単に数字の予想ではなくテーマごとに掘り下げて考えてみます。
今回は表題の通り「円高」についてです。
年末にユーロが10年半ぶりに100円を割り込みました。本日(1月3日)の欧州時間(午前)でも100円近辺の取引となっています。
ユーロ下落の最大の原因は、発表されたECB(欧州中央銀行)のバランスシートが急拡大していたことです。
ECBのバランスシートは12月28日現在で2兆7300億ユーロとなっており、3か月前の2兆1800億ユーロから急拡大したのですが、そもそも12月21日に域内の銀行に4892億ユーロ(50兆円です)もの3年間の資金供給が行われていたからで、わざわざ「新たにびっくりする材料」ではありません。
ただこの3年間の資金供給は、12月8日のECBの金融緩和で利下げとともに新たに導入されたのですが、同時にECBから資金供給を受ける際の担保条件の緩和(A格までOKになった!)も行われており、新たな「近い将来の問題」を抱え込んだことは間違いありません。
しかし、このように「新たにびっくりする材料」でなくても、実際に中央銀行がバランスシートを拡大させて「目に見える金融緩和」を行うことが、今も最も有効な「為替対策」であることを改めて認識させられました。
余計なことかもしれませんが解説しますと、中央銀行のバランスシートが拡大するということは、それだけ中央銀行が市中の銀行から資産を買入れたり貸付けを行ったりして積極的に資金を市中に供給していることであり、単純に需給関係から資金の価値(為替相場)が下がるのです。
近年のドル安も、FRBのバランスシートがリーマンショック前の9000億ドル弱から2兆9000億ドルへ3.5倍にもなっていることが根本原因であり、昨年のスイス中央銀行の巨額金融量的緩和でもスイスフラン高が劇的に止まっているのです。
ところが日本銀行の現在のバランスシートは137兆円くらいで、なんと前回の金融量的緩和時である2006年3月の144兆円を下回っているのです。
今回のユーロ下落は、FRBだけでなく、明らかにECBまでが「目に見える金融緩和」で自国通貨(ユーロ)を安くするようになったことを示しているのです。八方塞がりのユーロ圏経済にとって、表立っては言わないものの、ユーロ安が最も効果的で安上がりな処方箋なのです。
これで日本銀行(日本政府)が何もしないと、ますます「無策の円高」が進んでしまうことになります。
ECBについてもう1つ重要なことは、ECBが債務問題国の国債買い入れ増額に応じないという「強いメッセージ」を出していることです。
これは、中央銀行(ECB)の最大責務は、唯一の発券銀行として通貨(ユーロ)の価値を維持することで、そのためにECBの資産内容を劣化させないことが必要です。
もちろん中央銀行(ECB)のもう1つの責務は、域内の銀行が健全性を保てるように流動性を供給することで、その手段として域内の銀行から国債を買い入れることは当然なのですが、この国債買い入れはあくまでも銀行に流動性を供給するための手段にすぎず(従ってECBの資産が劣化しないよう最上格付けの国債に限る)、債務問題国の国債の市況対策とは決して混同してはならないのです。
確かにECBは2010年5月にギリシャ国債の買入れを行い、2011年8月にはイタリア国債とスペイン国債も買入れ対象に加えました(その際、ドイツ出身のECB理事が2人辞任しています)。しかしこれはあくまでも資金供給の手段としての買入れ対象にこれらの国債を(いやいや)加えただけで、もとより市況対策とは全く違ったものなのです。
新任のドラギECB総裁が、この辺を混同せず毅然とした態度をとっていることは極めて当然のことなのです。
一方、わが日本銀行は僅か総額1.5兆円の予算でETFやREITを買い入れて、安直な市況対策としているのですが全くの「邪道」です。従って全く効果がありません。
日本銀行は中央銀行としてあくまでも「正攻法」の金融緩和を「思い切って」かつ「効果が出るまで徹底的に」行うことが唯一の(円高対策を含む)景気対策なのです。
具体的には、市中(銀行ですが)から30兆円ほどの国債を一気に買い入れることです。そうすれば間違いなく「円高」が止まります(確かに日銀券ルールを超えてしまうのですが、得意の例外措置にすればいいだけです)。
それ以上に重要なことは、日本銀行がそこまで「本気」を見せれば傘下の銀行の姿勢も「少しくらいは」変化して民間に資金が「少しくらいは」供給され、その一部が株式市場や対外投資に回れば(銀行はリスクを取りませんが、民間は資金さえあればまだリスクを取るはずです)株価の上昇と円安をもたらすのです。
最も重要なことは、これは1円の国民負担も必要ないのです。
見当はずれの増税や、財務大臣のメンツのための為替介入(どちらも大変な国民負担なのです)の前に是非検討すべきことなのです。その兆候が見えない限り、いつまでたっても「無策の円高」が続くことになるのです。
明日は、その増税を含む日本の財政政策について書きます。
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