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「製造業の信仰」を捨てよ〜雇用を増やす複眼思考
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投稿者 sci 日時 2011 年 9 月 14 日 01:40:31: 6WQSToHgoAVCQ
円高と空洞化が止まらないのであれば内需産業を増やせというのは正しいが
減った製造業の雇用と利益を補えるかと言えば、残念ながら難しいだろう
それでも他に選択肢はなさそうだ
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【第38回】 2011年9月14日
「製造業の信仰」を捨てよ〜雇用を増やす複眼思考
――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト
景気分析には約束事がある。景気は「まず、鉱工業生産をみよ!」である。この常識は一面正しいが、あまりに教条的に信じると、雇用の実体を見過ごしてしまう。
国民にとって豊かさを取り戻すためには、雇用拡大・賃金上昇が最重要の課題である。それなのに、エコノミストの景気分析が生産・輸出・収益のことばかりに関心を注ぎ、雇用の在り様に無頓着になると、有用な政策提言もできなくなる。一昔前の流行語を使うと、「バカの壁」がここにはある。
製造業の生産拡大と雇用拡大が
イコールではないという証拠
そこで、製造業の生産拡大≠雇用拡大の証拠を挙げてみたい。グラフは、鉱工業生産指数と就業者数の対応関係を示している(図表1参照)。明らかなのは、両者はリンクしていないことだ。
製造業の就業者数はトレンドとして右肩下がりであり、過去20年間にわたってトレンドに変わりがない。今になって「産業空洞化」が不安視されるが、もっと昔から生産水準の回復とは半ば独立に就業者数が減っているのである。
おそらく製造業は、周期的に訪れる生産調整の度に、大規模なリストラを行なって、その後生産回復する局面であっても、雇用を増やしてこなかった。この状況は、「工場が海外移転するから製造業の雇用者が減る」というステレオタイプと事情が異なっている。
なぜ、製造業が就業者を増やさないのかというと、資本投入を通じて生産性上昇を行なっている事情がある。特に輸出産業は、雇用を増やしながら労働生産性を上昇させるのではなく、設備投資を行なって資本の生産性を高めようとする。
円高が進むと、競争力を維持しようとして、雇用を削減しながら設備投資を増やす対応を採ると説明すればわかりやすい。
製造業の資本ストックの伸び率を見ると、非製造業が低調なのに対して、2000年代に入ると増加率を高めている(図表2参照)。この間、製造業の就業者は1992年をピークに減少に転じているので、日本の製造業は約20年間も資本投入を増やし、労働投入を抑制するかたちで生産性向上を追求していると言える。
この変化は、貿易理論にある「比較優位の原則」と極めて整合的であり、製造業が優位性のある資本や技術を増やすかたちで成長を遂げている姿を表す。
議論を元に戻して、「では、雇用・賃金を増やすにはどうすればよいのか」を考えよう。それは、内需を膨らませて、労働の生産性を引き上げると同時に、労働分配を増やすことが重要である。
分解すると、企業が生産性を高めることで賃金上昇の原資を膨らませることができる。次に労働分配の金額を増やせば、労働コストが上昇する。
コスト増に対して、企業経営者はより割安の労働力を雇おうとするので、裾野の広い労働需要が喚起される。賃金上昇は、生産性の高い者から低い者へと波及していくことになる。
内需の膨らみにくさという逆風
跳ね返すには「外需」をテコに
ただし、ここで問題なのは、ここ数年の日本経済には「内需の膨らみにくさ」がある点だ。人口減少のトレンドが強まる中では、企業経営者は先々の需要縮小を予想し、設備投資意欲を減退させてしまう。その逆風を跳ね返すには、内需ではなく、外需をテコにすることが有効である。
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図表2の資本ストック残高の伸び率を見ても、低迷しているのが製造業よりも非製造業であることがわかる。2006〜2008年頃は、外需を追い風にして、製造業は輸出向けの資本ストックを増強していた。その資本増強が内需拡大を促し、雇用・賃金が増えていた。
話を整理すると、製造業が国内に資本ストックを増強するとき、設備投資需要が内需拡大の刺激になって、回りまわって雇用・賃金を増やす。製造業の設備投資は、海外から国内へと購買力が移転するときのパイプ役になっている。
輸出というパイプを伝わって国内需要が膨らんでいくのに反応して、非製造業のうち労働集約的な産業の雇用・賃金を増やしていく。重要なのは、輸出の好影響が国内産業へと波及していくメカニズムである。
筆者のメッセージは、雇用拡大を念頭に置くと、製造業が単に生産回復を遂げただけではダメだということだ。生産が増えても、それが国内需要に転換されないと、国内にいる勤労者には恩恵が及んでこない。
「産業空洞化によって日本経済が脅かされている」と叫ばれる理由も、製造業が国内投資を抑制することが怖いからだ。輸出から内需へのトランスミッション・メカニズムが滞り、人口減少によって国内投資が減っていく中で、産業空洞化が追い討ちをかける。
景気分析を行ない、国民生活の向上を導くことを考えるには、単一の指標に注目するのではなく、複線的に内需への波及メカニズムを考えていかなくてはならない。
波及メカニズムを辿って実体を解明する作業は、エコノミストと言えども容易ではない。過去の経験則が成り立ちにくいのは、最近の経済分析に共通して言えることだ。
海外から内需へと波及し得る
メカニズムは訪日外国人の回復
最後に、そうした発想で、海外から内需へと波及し得るメカニズムということで、1つの変化を紹介したい。
3.11の震災と続く福島原発事故によって、海外から日本にやってくる訪日外国人が激減したことはよく知られている。だが、実はこのところ、訪日外国人は急速に回復してきている(図表3参照)。
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国籍別に見ると、渡航者が回復している国は、台湾、米国、英国、タイ、インドである。これは、被災した日本にとってありがたいことだ。震災前の訪日外国人の消費額は約1.0兆円(渡航費を除く)と推定される。限界的に見て、一時6割減だった観光需要が急速に回復してきている効果は、内需にとっても小さくない。
今後、外需を内需に転換させるチャネルについては、頭を柔軟にしながら注目していかねばならない。
世論調査
質問1 今の会社に勤めていて、将来給料が上がっていく見通しはある?
ある
ない
どちらとも言えない
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