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週刊朝日 陸山会裁判22日結審 江川紹子
2011-09-03 | 小沢一郎週刊朝日 より
http://civilopinions.main.jp/2011/08/825.html
政権交代直後に東京地検特捜部が立件した陸山会事件の裁判が22日、結審する。
当初は、「国策捜査だ」と特捜部批判が吹き荒れたが、今となっては後の祭り。
証拠改ざんに端を発した特捜検察の権威は地に堕ちた。
すべての公判を傍聴したジャーナリスト・江川紹子さんに、この裁判が意味するものについて寄稿いただいた。
いったいこの裁判は「誰の何の罪を裁くものなのだろうか――」
小沢一郎、民主党元代表の3人の元秘書が起訴されている陸山会事件の裁判は、傍聴していてもそんな疑間が湧いた。
ましてや、テレビや新聞を通して展開を見守ってきた人々は、小沢氏の「政治とカネ」を裁く裁判だと思っていたのではないか。
実は、まったく違う。
審理は8月22日に終結し、判決が9月26日に言い渡されるが、有罪であれば「やっぱリダーテイー」と小沢叩きを強めるようなものでもなく、無罪だからといって「小沢氏のクリーンさが認められた」と盛り上がる類のものでもない。
問われているのは、
@2004年に購入した土地代金の支出を、04年ではなく05年の政治資金収支報告書に記載したことの是非。
A土地購入に際し、小沢氏が4億円を立て替えたことを報告書に記載しなかったことの是非。
B小沢氏の他の政治団体との間で行った資金の融通をいちいち報告書に記載しなかったことの是非。
―――の3点だ。
この程度のことが、「政治とカネ」を象徴する事件に格上げされたのは、検察側の戦略に裁判所とマスメディアが乗ったためだ。
検察側は、Aの動機を説明するとして、中堅ゼネコン水谷建設からのヤミ献金の立証に力を入れた。
小沢氏の4億円は後ろ暗い金だったので秘書らは報告書ヘの記載を避けた、というのがその筋立て。
4億円には水谷建設からの1億円のヤミ献金が含まれ、それは大型ダム建設の工事受注を巡
る謝礼とされた。
この検察ストーリーは、初公判の時からすでに破綻していた。
検察側冒頭陳述によれば、会計担当秘書だった石川知裕氏(現衆院議員)は、小沢氏から受け取った現金4億円を、04年10月13日から5銀行6支店に開設された陸山会の口座に分散入金した。
一方、水谷マネーはその後の同月15日と翌年4月19日に5千万円ずつ小沢氏サイドに渡された、とされた日付をみれば、仮にその授受があったとしても、小沢氏の4億円に含まれていないことは一目瞭然。
要するにこの裏金問題は起訴事実とはまったく無関係なのだ。
なので、検察審査会の起訴相当議決で強制起訴された小沢氏の裁判では、検察官役を務める指定弁護士が、水谷マネーについでは争点にしていない。
しかし東京地検はこれにこだわった。
石川氏の取り調べで、5千万円の受け取りを認めるように迫った吉田正喜特捜部副部長(当時)
の言動が象徴的だ。
捜査の終盤、石川氏が自身の政治資金に関して一部非を認めた取り調べのメモを、その面前で破り捨て、
「こんなのはサイドストーリーだからな」
と言い放った。
検察にとって「メインストーリー」はあくまで、水谷裏金問題だったのだ。
にもかかわらず、それを裏付ける証拠は脆弱だった
特に石川氏に渡されたとする5千万円については、都内のホテルで渡したとする水谷建設の川
村尚社長(当時)の証言のみ。
それもフロント前の無料スペースということで、領収書はない。
同行者もいない。
同社の運転手の運転日誌にも、川村証言に合う記録はない。
逆に
「社長をそのホテルに送ったのは翌年以降」
という証言も出た。
さらに、同社で実権を握っていた水谷功会長(当時)は、裏金を渡す時には必ず授受を目撃する「見届け人」を同席させるなどのルールがあったのに、川村社長がそれに従っていないことに疑間を呈した。
同社から5千万円の裏金が支出されたことには複数の証言があっても、その金を川村社長がどう使ったのか、実はまったぐ分からないのだ。
これでは、さしもの東京地検特捜部も、有罪を見込んで起訴するわけにはいかない。
やむなく形式的な政治資金収支報告書の記載時期問題で起訴したものの、今なお未練たらしく、「動機は裏金隠しだ」と主張し続けている。
昨年、大阪地検特捜部の押収証拠の改ざんなどが明るみに出た後、伊藤鉄男最高検次長(当時)が
「引き返す勇気が必要だ」
と述べた。
東京地検の面々は、この言葉をしっかりかみしめるべきだろ。
裁判では、特捜検察の捜査手法が問題になった。
証人として呼ばれた吉田検事には、3人の裁判官が代わる代わる、取り調べのメモを破り捨てた経緯や意図を問い詰めた。
後に調書の証拠採否を決める決定では、
「メモ紙を破る行為は、それ自体、被疑者に対する威迫ともいえる行為である」
と厳しく論難している。
ゲーム的発想で判決を見るな
さらに、裁判所に影響を与えたのは、石川氏が保釈後に任意の事情聴取に呼び出された際、密かにICレコーダーで録った録音の反訳書だった。
捜査が始まった当初、検事が石川氏に対して
「特捜部は恐ろしいところだ“何でもできるところだぞ“捜査の拡大がどんどん進んでいく」
と述べたことを肯定する会話が記録されていた。
さらに、その取り調べについても裁判所は証拠決定の中で批判している。
〈表現は一見穏やかなものであるとはいえ、内容的には威迫ともいうべき心理的圧迫と利益誘導を織り交ぜながら巧妙に誘導したものと評価せざるをえない〉
この証拠決定では、検察側が請求した38通の検察官調書のうち、11通が全文却下。
20通が一部採用にとどまった。
そのうえ、証拠改ざんの前田恒彦元検事が取り調べを行った大久保隆規元秘書の調書は、検察が自ら取り下げている。
結局、検察が使える証拠は限られ、論告では
「…と考えるのが自然」「…とは到底考えられない」「…と推認される」「…としか考えられない」と、推測に推測を重ねて主張を展開するしかなかった。
捜査の実態が明らかになるにつれ、チエック機関としての役割を取り戻していったかに見える裁判所に比べ、やはり検察の作戦に乗ったマスメディアはどうか。
さすがに裁判所の決定は大きく報じたが裏金問題が起訴事実と無関係であることは無視し、検察のアンフェアな立証活動への批判はないままだ。
もっとも、検察と一体になつて「政治とカネ」を煽ってきたメディアにとって検察批判は天に唾するようなものかもしれない。
国会議員に疑惑があれば、取材によって追及するのは当然だ。
だが陸山会事件では、そのために捜査機関に対する監視の役割を放棄し、検察情報を垂れ流したばかりか、誤報の訂正すらしない社もある。
報道機関としてどうだったのか、判決がどうあろうとも、大いに反省すべきだ。
有罪なら勝ち、無罪なら負けといったゲーム的発想で判決を見るのは、検察もマスメディアもやめてもらいたい。
ジャンル:ウェブログ
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