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デフォルト回避と米外交の国際的信用の危機・・対外軍事プレゼンスが無原則に縮小していくような事態が
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投稿者 尚林寺 日時 2011 年 9 月 01 日 17:19:52: JaTjL5JPya4go
http://www.tkfd.or.jp/eurasia/america/report.php?id=288
債務残高上限の引き上げをめぐり迷走していた米国政治は、瀬戸際の妥協によって2011年 財政管理法(Budget Control Act of 2011)を8月2日に成立させ、史上初の米国債デフォルトという事態を回避した。党派対立の構造と財政問題は、今後の米国外交の枠組みを規定し、対外コミットメントを大きく制約する可能性もあることから、この度の合意内容と今後の展望について概観したい。
****債務上限問題と財政管理法
財政管理法は、政府債務残高の上限引き上げと財政の再建を企図したものである。債務上限問題と財政問題を切り離すことによって、法案を可決。債務不履行は何とか回避した。財政再建論議については、実質的な先送りであり、米国政治の問題解決能力が著しく低下しているという見立てに誰も異論がない。
最低でも2.1兆ドルの引き上げ枠を確保したオバマ大統領は、債務上限問題に再び悩まされることなく、来年の大統領選に臨むことができる。緊縮財政を掲げる「茶会党(ティー・パーティー)」が昨年の中間選挙を通じて議会に一勢力を形成していなければ、92回目の債務上限変更がここまで政治化されることはなかっただろうが、茶会党の躍進は国のあり方に対する米国民の懸念の反映であり、それが新しい政治環境を形作っていくことは事実として受け止めなくてはならない。
財政管理法では、債務上限引き上げを上回る規模の財政赤字対策が二段階にわたって講じられることとなった。第一段階は、今後10年間にわたる9170億ドル(裁量的経費)の財政赤字削減である。あくまで、現在の政策が継続されることを前提に予測される財政水準(ベースライン推計)に対する削減幅を表現しているに過ぎない。また、イラク・アフガン戦費関連は削減の対象外だ。
歳出削減の第二段階を担うのが、超党派の「特別委員会」が、さらなる歳出削減案(1.2〜1.5兆ドル規模、義務的経費を含む)を検討し、11月23日までに法案化を目指す。党派対立の厳しさもさることながら、既に議会日程が厳しく、果たして実質的な検討が進むのかと多くの識者が懸念を抱いている。
****国防予算への影響
特別委員会や議会が期日までに歳出削減に合意できない、或いは削減幅が不十分である場合には、1.2兆ドル(裁量的・義務的経費の双方)の強制的な一律歳出削減プロセスが始動する。こうなると政治の街、ワシントンは議会休会中であるにもかかわらず俄然、活気を増してくる。ロビイストは、クライアントである企業や各種利益団体が歳出削減によって不利益を被ることのないよう対応を検討中で、利益団体、企業、ロビイストをも巻き込んだ予算防衛戦がこれから展開されようとしている。
特に裁量的経費の57%を占める外交・安全保障関連予算(歳出権限ベース)の扱いは、義務的経費の削減や税制改革と並んで、今後の焦点の一つとなるだろう。歳出削減の第一段階で、同予算は10年間にわたり4200億ドルが削減される予定になっており、すでに来年度についても政府要求額より360億ドル少ない6800億ドルに額が抑えられている。歳出削減の第二段階については特別委員会の議論を待つほかないが、削減案がまとまらなくても、強制的な一律削減がその後に控えており、その場合、国防関連では9年間にわたり国防総省の予算を中心に4900億ドル弱が削減されるとの推計がある。
多くの議員にとって、国防予算は地元経済を支える重要な財源の一つであり、叶うことであれば削減は最低限にとどめたい。特別委員会としても幅広い支持を得るために、国防予算削減には慎重に臨むであろうが、そのためには年金や失業手当などの各種給付金制度や税制の改革と向き合う必要があり、厳しい党派間対立は避けられそうにない。
****国際的信用の毀損
厳しい党派対立の余波は、すでに米国外交にも影響を及ぼしつつある。まず今般の債務上限問題をめぐる米国政治の混迷を受け、オバマ政権は中国から財政規律を維持するよう説教される立場に追いやられてしまった。今年2月に発効した戦略核兵器削減条約(新START)の批准プロセスにおいても、上院で展開された民主・共和党間の対立構図が米国の対外信用を危ういものにした。また、米韓FTAを含む3つの自由貿易協定が、署名後4年以上経った今も批准されることなく店ざらしになっていることも、米国の対外信用を傷つけている。法の支配に基づき、安定したガバナンス体制を確立している先進国としての米国の信用と影響力が削がれることは、国際秩序を実現していく上で、大きな障害となる。
この上に、米国の外交・安全保障関連の予算が削減され、その対外軍事プレゼンスが無原則に縮小していくような事態となれば、日本をはじめとする東アジア諸国は大きく自らの国防体制を再検討する必要が出てくる。オバマ政権は9/11同時多発テロ以降、拡大してきた国防体制の見直し作業を既に開始している。財政管理法の成立が、米国の対外関与政策をどのような方向に導いていくのか、米国政治の今後の動向が注目される。(浅野貴昭)
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