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旧来の「株式会社」形態からは
リスクを取る事業がなかなか生まれない
2011.07.27(Wed) 中馬 宏之
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半導体デバイスやバイオ医薬品に代表される日本のサイエンス型産業において、世界市場シェアの長期にわたる減少・停滞傾向が著しい。このような状況への危機感は、従来型の科学技術政策から「サイエンスイノベーション」重視の科学技術イノベーション政策へと舵を切った第4期科学技術基本計画(素案)にも反映されている。
主要な減少・停滞原因の1つは、疑いなく、急加速したテクノロジーマーケットの複雑性(グローバル化を含む)増大スピードに日本勢がなかなかついていけなくなってきている点にある。
そうだとすると、その元凶はどこにあるのだろうか?
このような難問に対して、いの一番に矛先が向きがちなのは、国を代表するような企業の事業・組織経営である。ところが、このような難問を突き詰めていくと、特に日本の場合、上記のスピードに国の制度がなかなかついていけないという「弱み」に起因する部分も驚くほど大きい。その意味では、「日本企業は、こんなハンディを背負いながらもよくここまで健闘しているものだ」という見方も十分に可能である。
今回は、このような国の制度上の「弱み」の一端を公開データを参照しながら探ってみたい。
日米で異なる企業規模別の研究費支出パターン
図1 従業員規模別民間企業研究費支出割合の推移(日本:1985〜2009年)
出典:『科学技術研究調査』(総務省)
(注1)対象民間企業は株式会社のみ。従業員は1カ月以上勤務の臨時・日雇い社員をも含む。
(注2)研究費=社内使用研究費(支出:受入研究費含むが減価償却費含まず)+社外支出研究費
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まず、図1を見ていただきたい。これは、『科学技術研究調査』(総務省)に見られる民間企業の従業員規模別・研究費支出割合の推移である。この図から、日本では、少なくとも四半世紀(実際にはもっと長期間)にわたって、ほとんど変わらない企業規模別の研究費支出パターンが繰り返されてきたことが分かる。
なお、この図を見ても、大勢の読者は驚かれないかもしれない。そして、そのような方々の多くは、「何が問題なのか?」「研究開発における大企業の役割は相当なものだ。それはそうだろう!」「やはり小企業(1〜299人)の割合は5%前後か、思った通り少ないなあ」といった印象を持たれるだろう。
ちなみに後段の議論との関係で注意していただきたいのは、この表に登場しているほとんどの企業が、公開型または閉鎖型の株式会社だという点である(2009年時点で96.3%。国税庁の『会社標本調査』等を参照。なお、会社法改正が行われる2005年以前は、半数を超える企業が有限会社形態を採っていた)。 会社=株式会社という「日本の常識」が存在する理由でもある。
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