http://www.gifu-np.co.jp/column/syasetsu/sya20110624.shtml
社説
2011年 6月24日（金）
首都機能移転論
バックアップ態勢整備を
　首都東京は政治や経済などの中枢機能が集中する超過密都市だ。東日本大震災をきっかけに、首都機能の分散移転論がにわかに浮上している。巨大地震などに襲われても、首都の機能不全を回避することに狙いがある。

　最も活発なのは関西だ。経済界が省庁などの関西への分散を訴えると、大阪などの各府県で構成する関西広域連合は非常時のバックアップ態勢を提言。名古屋市の河村たかし市長は大阪府の橋下徹知事と連携、名古屋と大阪で臨時国会の隔年開催を提唱した。

　東日本大震災復興のシンボルとして、東北への一部省庁の分散案もある。かつて首都機能移転候補地だった栃木県の福田富一知事は、同じ候補地だった福島県などと共同提案を検討するという。

　今回の震災では町長や職員が大津波で犠牲になったり、庁舎が流失したりして行政機能がまひした自治体が相次いだ。首都機能が同じ状況に陥ると、日本全体が動かなくなる恐れがある。

　ただ省庁の分散は、「霞が関」の調整など相当の時間と論議が必要になる。分散は中長期の課題とし、大災害に見舞われた場合でも、まず最低限の指示系統や行政、経済機能などを維持できるようなバックアップ態勢の整備を急ぐべきだ。

　東日本大震災で首都圏でもＪＲなどが動かず、約１０万人が「帰宅難民」となり、湾岸地域で広範囲に液状化被害が起きるなどもろさを露呈した。マグニチュード（Ｍ）７．３の直下型地震で最悪の場合、死者１万１０００人、避難所生活者は４６０万人、経済被害約１１２兆円と想定されている。

　今回の地震後のＭ８級余震や、関東付近の太平洋で巨大地震の可能性も指摘されている。

　民間企業では既に、データセンターなど業務の一部を西日本に移転する動きが始まっている。関西広域連合の提言は、日銀大阪支店や大阪証券取引所、各国総領事館などを広く活用し金融やビジネス、外交窓口などの中枢機能のバックアップを引き受けるという。

　首相官邸や国会、各省庁などを結ぶ指示系統や情報システム、データ管理などが維持できる態勢を早急に整備する必要がある。政治や経済中枢機能のダウンが「想定外」では済まない。

　１９９０年に衆参両院が「国会等移転に関する決議」をし、国会等移転法が施行された。東京一極集中是正のため、国会や各省庁を移転しての大規模な都市建設が前提だった。だが移転先をめぐり各候補地の利害が先行して収拾がつかず、論議はうやむやに終わった。

　移転論議をよそに、各省庁は高層ビルに建て替えられた。小泉内閣の規制緩和による民間再開発で、都心に超高層ビルが林立した。「選択と集中」で関西企業の東京移転に拍車が掛かり、一極集中が一段と進んだ。

　東日本大震災と原発事故による電力不足で、巨大都市東京の脆弱（ぜいじゃく）性があらためて浮かび上がった。しかし首都機能の代替を買って出た関西も、電力の半分以上を原発に依存し、東南海地震など巨大地震の懸念も抱えている。代替機能を太平洋ベルト地帯に置くことの是非が問題になる。

　首都機能分散には新たな国土軸や、分権の観点で霞が関の組織体制を抜本的に改革するなど骨太の構想が必要になる。大震災の復興が一段落後、じっくり論議すべきだ。

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます（表示まで20秒程度時間がかかります。）
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映　通常 ｜動画・ツイッター等 ｜htmltag可（熟練者向）
（タグCheck ｜タグに'だけを使っている場合のcheck ｜checkしない）（各説明）

（←ペンネーム新規登録ならチェック）
↓ペンネーム（2023/11/26から必須）

↓パスワード（ペンネームに必須）

（ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。）
↓画像認証
（ 上画像文字を入力）
ルール確認＆失敗対策
画像の URL (任意):
　重複コメントは全部削除と投稿禁止設定 　ずるいアクセスアップ手法は全削除と投稿禁止設定 削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告」をお願いします。　最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

　次へ 　前へ

▲このページのＴＯＰへ　　　　　 ★阿修羅♪ > 昼休み48掲示板

★阿修羅♪　http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。