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圧迫される世界の中流階級
先進国に広がる「所得伸び悩み」の恐怖2011.06.29(Wed) Financial Times Financial Times Tweet
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upperline(2011年6月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
多くの先進国では工場労働者の実質所得は増えるどころか減っている〔AFPBB News〕
世界経済危機が始まってから3年近く経ったが、大半の先進国ではこのところ、新種の妖怪が出没するようになっている。市民の過半数は今後何年も所得の伸び悩みに直面するという、恐ろしい見通しが広まりつつあるのだ。
第2次世界大戦後の先進国には、生活水準は世代を経るごとに向上し、親よりも物質的に豊かになれるという考え方があった。しかし今、所得の増加を期待することは過去にほとんど例がないほど難しくなっている。
一部の中所得者層にしてみれば、所得の伸び悩みや減少は今に始まった話ではない。例えば、英国のフォークリフトドライバーは2010年には1万9068ポンドの所得を期待できたが、インフレを考慮すればこれは1978年の値を約5%下回ることになる。
日本でもドイツでも実質世帯所得が減少
また、米国男性の実質所得のメジアン(中央値)は1975年以降増えていないし、日本では2000年代半ばまでの10年間で実質世帯所得(税引き後)の平均値が減少した。ドイツの世帯所得もここ10年間で減少している。
中所得者層にのしかかるこうした圧力の一部は、少なくとも一時的には空前の信用バブルによって覆い隠されていた。借金をして収入以上の消費をすることが可能だったからだ。しかし、お金を低利で借りられる時代が終わりを迎えて3年が経ち、先進国が経済成長をなかなか再開できずにいる今、世界中の中所得者層が状況の厳しさをひしひしと感じるようになっている。
これは政治家たちにとっても望ましい状況ではない。政治家たちは、財政を立て直すために増税と歳出削減を検討せざるを得なくなりつつあるからだ。しかもその後には、ますます伸びる寿命と人口の高齢化への対応というさらに難しい課題が控えている。
このように世帯所得や賃金のトレンドを観察していくと、先進国の人々の所得に一体何が起こっているのか、なぜこんなことになったのか、という2つの疑問が浮かび上がってくる。
その答えが明らかになり始めたのは、最近のことだ。米国では、国内総生産(GDP)が急増し続ける一方で、1975年から男性の実質所得の中央値が伸びていない。当初はそうした傾向が他国では見られなかったため、米国特有の病がこの国の文化と労働市場を苦しめているのではないかとの懸念が生じた。
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