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東北地方を日本の医療先進地域に
渋谷健司・東大医学部教授インタビュー
2011.06.14(Tue) 川嶋 諭
地球の明日
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東京大学の渋谷健司教授は、東日本大震災が起きると時間を置かず現地に入り、献身的に被災者の検診・医療相談を行ってきました。その中から見えてきた日本の問題点とは何なのかをお聞きしました。
過疎化が進みお医者さんが足りない東北地方は日本全体の未来像でもあります。その中で効果的な医療を実施するには、病院のようなハコモノを作ればいいというのではなく、いかに病気になりにくい体をつくるか。プライマリ・ケアが重要になると言います。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
渋谷 健司(しぶや・けんじ)氏
東京大学大学院医学系研究科・国際保健政策教室教授
東大医学部医学科卒、米国ハーバード大学にて博士号取得、スイスIMD上級エグゼクティブコース終了。東大医学部付属病院などで医師として勤務した後、米国ハーバード大学人口・開発研究センターでリサーチフェローとして在籍。2001年からは世界保健機関(WHO)で保健政策エビデンスおよび保健の統計と評価のコーディネーターとして勤務。2008年より現職(撮影:前田せいめい、以下同)
私はこれまで途上国の援助など、国際保健や公衆衛生を専門としてきました。
東日本大震災を受け、東京大学、自治医科大学、日本プライマリ・ケア連合学会などの合同災害医療支援プロジェクトの一環としてゴールデンウイークに宮城県の気仙沼市や石巻市を訪れたり、その後、福島県飯舘村で健康診断を手伝ったりしてきました。
災害の規模が大きかったため、発生後2カ月近く経っても、被災者の健康状態を十分に把握できていませんでした。
被災者の健康・栄養状態の把握は効果的な保健活動を行う第一歩ですから、途上国でも本来、災害発生後1週間くらいでやらなければならないんです。
ところが東日本大震災は災害の規模があまりに大きくて迅速な対応ができず、被災者が過酷な環境で取り残される結果になってしまいました。
もちろん、すぐにやろうとしたんです。ただ、一部で個別に行われた健康状態の調査が被災者の感情を傷つけるものだったりして、問題になった。
それはやってはいけないことなので、当面見送ることは正しい判断だったのですが、結果的に全体像を俯瞰して長期的な支援につながるような調査ができませんでした。
被災地は人口の高齢化が進んだ医療過疎地が多く、もともと高血糖や高血圧などの生活習慣病の罹患率が高い地域です。そこへ来て避難所の過酷な生活を強いられている。食事は毎日おにぎりやパンばかりで栄養的な問題もあるし、身体を動かすことがなくなった。高血圧などの症状が悪化するのは目に見えています。
実際、宮城県の避難所では、血圧が200を超えている方もかなりいらっしゃいました。
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