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老老介護の現実
先週、朝日新聞の日曜版を見て気になった。ところで私のニュースソースはたいてい朝日新聞であるが、これは我が家の定期購読紙がそれだけだからだ。今年初めまでは読売新聞も購読していたが、経費節約と解約にあたって販売店とのトラブルがあり、契約破棄した。最後は当てこすりまで言われ、大変後味の悪い思いをした。私は単純に経費節約のため購読を一旦停止して、状況に応じて再開しようと考えていたのだ。だがこの地に住む限り、私はもう読売新聞は絶対に購読しないぞぉぉぉ!
な〜んてことはどうでも良いのだが、そうそう、朝日の記事ね。「みんなの建康」という欄に連載されている医療問答コーナーに、5月6日、こんな質問が載った。「70歳の女性。15年前、変形股関節症で両側とも人工股関節手術を受けました。最近また痛むようになり、心配です。92歳の母の介護をしているので、できれば再手術はしたくありません。どういう注意をしたらよいか教えてください」というものだ。
これに応じて専門医が淡々と答えているのだが、私はこの質問が質問として成り立つ現実に、薄寒いものを感じてしまう。70歳の、身体が不自由な女性が92歳の女性を介護!!!…恐ろしい時代になったものだ。70歳と言えば「古希」。古来稀なりと言われた、めでたいお年頃である。子や孫に囲まれ、あるいは悠々自適の生活を送って当然と誰もが思うその年齢で、手術まで受けた身体をいたわる暇もなく、他人の介護をしなければならないという。親の介護は国の美風とか言った政治家がいたそうだが、とんでもない!老老介護はお国の恥である。私が回答者なら、こう言ったかも知れない。「何言っているんですか!必要なら再手術を受けるべきです。必要かどうかはあなたの主治医とよく相談して、必要な場合には介護の方を行政援助で乗り切りなさい!」とか。でも実際には言わないだろう。そんなこと言えるほど、日本には福祉なんて無い。今度の小泉内閣だって、増税はしないが社会福祉政策は縮小するなんて事言ってませんでしたっけ?ああそう、あんたさんは姉やら妹やらが大挙して身の回りの世話をしてくれるからね。親の介護なんて現実は、未来永劫存在しないんだろうよ。子供はもう大きいから育児の心配もいらないし。いざとなったらいつでも他人に世話してもらえるジジババ政治家が、そうはいかない人、世話から解放されない人々の声に気づくはずはないわけだ。
こうやって、世の中はどんどん階級化していくらしい。私は、この社会が構造的に人々を差別に追い込むのを、最近はよく感じるようになった。例えばこういう風に。子供が生まれたから仕事ができないだって?じゃあしばらく育児にでも専念すればいいじゃない。で、しばらく育児に専念したから仕事が欲しいだって?育児なんかにかまけてるような女に仕事なんてないよ。仕事は一生続けるぐらいの覚悟がなくちゃね。なに、仕事を続けたいから結婚しないだって?人間、結婚しなけりゃ一人前じゃないよ。結婚したのに子供作らないだって?そんなわがまま許されると思ってんの?そして先頭に戻る…。こうやって結婚・育児によって仕事から切り離される女の最終的な評価は?もちろん、誰に食わせて貰ってるんだ!である。では、他にどうしようがあるのだ。ダンテは言う、「地獄への道は善意で舗装されている」と。いやほんと、その通りですな。これでも結婚しない女が増えている理由が分からないあなたは、きっと最高の善者でしょう。結婚し苦労しても一人前扱いされないなら、結婚しない方がずっといいもんね。
育児もまた介護の一つではあると思う。一人では生きられない人間に手を貸し、身の回りの世話をするという意味で。ただ、育児は成長に伴う大まかな定型フォームがあって、曲がりなりにもそれをこなしていけば必ず卒業できる。なにより育児する側が若い。育児される側が若いことはもちろんだが、育児する側が若いということは体力・気力が充分あるということだ。これは素晴らしい。育児・介護のような、24時間365日他人のために待機することが果てしなく続くルーチンワークは、体力・気力だけが頼りの労働だ。それに子供の成長という喜びが加われば、育児の苦労は半減する。私は介護経験はないが、もう若くはない時分に育児を経験した者として、介護の大変さを少しだけ想像できる。しかし介護の場合、介護される側もする側も老いている。しかもどれだけやれば卒業するのか全く分からない。介護すればするほど相手が回復するわけではないし、むしろ病状は重くなるのが普通である。
さて、冒頭の質問に対する回答者の返事をここに掲載しよう。生活で注意することは「定期的な受診は必ず続け、痛みの原因になるようなことは避ける。長時間の歩行は控え、重いものは分けて持つなど工夫を。…肥満もいけません。バランス良い食事を心がけてください」とのこと。はいはい、92歳の母の食事の介助も排泄の世話も体位の転換も定期的に放っておいて医者に駆けつけ、痛むと困るから母が呼んでもすぐには行かない。重い母の体を動かす場合は大変なので左右に分けて(?)運びましょう。食事は自分用にもちゃんと作って、母の介助もそこそこに、ゆっくりしっかり食べましょう…なんてこと、できると思っていますか?お医者様方。それができないから痛むんじゃないかと私は思うんですが。でも、それより他に言いようがないことは、たぶん承知せざるを得ないんでしょうけどねえ。
ほんとに、恐ろしい時代になったと思う。
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