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試算では費用1兆4100億円 菅政権が言えない「原発被災地の国有化」というタブー 伊藤 博敏(現代ビジネス)
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投稿者 赤かぶ 日時 2011 年 5 月 19 日 08:03:26: igsppGRN/E9PQ
試算では費用1兆4100億円 菅政権が言えない「原発被災地の国有化」というタブー
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/5320
伊藤 博敏「ニュースの深層」2011年5月19日(木)7時5分配信:現代ビジネス
原子力政策の失敗を認め、率直に議論をすべき
1号機から3号機までの原子炉でメルトダウン(炉心溶融)が確認されるなど、福島第一原子力発電所事故の状況が、ますます厳しさを増すなかでも、東京電力は楽観的見通しを修正しない。
5月17日に発表された新工程表---。
4月17日発表の最初の工程表では、原子炉を水に浸して冠水状態にし、「低温停止」に持ち込む方針だったが、メルトダウンしたために、原子炉の圧力容器と格納容器の底部に穴が空き、「冠水」は不能となった。にもかかわらず東電は、来年1月半ばまでに「事故収束にメドがつく」という"強気"の見通しを変えない。
なぜか。
菅直人首相の「年明けには周辺住民の帰宅の判断ができる」という言葉に縛られているからだろう。だから年内にメドをつけねばならない・・・。
しかし、そんな目標設定に意味がないことは、約10万人の避難住民自身が感じている。
「いつになったら帰れるんでしょうか」
避難生活を送っている多くの住民は、不安な面持ちでマスコミの取材に答えている。
むしろ、「原発周辺には20年は住めない」というのが実態ではないか。
この言葉は、松本健一内閣官房参与が、最初、「菅首相発言」として伝え、菅首相からの抗議を受けて、「自分の言葉」と訂正した。
■「国が買い上げて、移住していただくしかない」
どちらが発言したかに意味はない。政府は、それを前提に避難民を出した半径20キロの警戒区域、30キロ圏内の緊急時避難準備区域、そして事故発生から1年で積算放射線量が20ミリシーベルトに達する計画的避難区域などの土地の買収を検討している。
「いろんな形で買収範囲や買収価格などの検討をしているのは事実です。農業や畜産業が不能な地ということになれば、実質的に国が買い上げて、移住していただくしかない」(政府関係者)
だが、現段階で、それを言い出す人はいない。「松本発言」の際、大半のマスコミは「地元を愛する被災者の気持ちを考えない心ない発言」と、批判的に報じた。そうした「空気」が支配しているなかで、ヘタに現実論を述べると攻撃を受ける。それを承知の官僚はおくびにも出さず、政治家にはハラをくくる度胸がない。
しかし、現実的に放射線量が高く、土壌汚染が進み、子供を屋外で遊ばせることができない環境の土地に、帰ってこられるものだろうか。
半径30キロ圏内に飯館村のような計画的避難区域も含めた土地に、約1万haの水田があり、約7000戸のコメ農家がある。牛は約2万頭、豚は約5万頭、鶏は約150万羽だ。コメの作付けは禁じられ、家畜の大半は殺処分。「放射能汚染」の風評被害を取り除くためには、田畑と牧草地の土地を、1haあたり数百万円を投じて、深さ50センチぐらいまでの土地を入れ替えなければならないが、そんな費用は出せまい。
仮に、5年後、10年後に"故郷"に戻り、それだけの巨費を投じて再生を目指しても、そこで作った農作物や牛乳や肉や卵が売り物になるかどうかは微妙である。
帰郷が現実的でないのがハッキリしているのなら、陰で買収のシミュレーションをするのではなく、30キロ圏内に飯館村など計画的避難区域も含めた土地の買収を論議すべきではないだろうか。
不動産は、現在、当該土地の収益によって価格が決まる。かつての「資産」という土地の側面が崩れ、この「収益還元法」で計算されるようになり、田畑や山林原野の値段は急落した。国土開発に詳しい専門家によれば、福島原発半径30キロ圏内は、1平方メートル当たり約1000円で計算できるという。
30キロ圏内でも汚染度の低い避難準備区域や計画的避難区域などの選別は後回しにして、とりあえず半径30キロ圏内とした場合の面積は2826キロ平方メートル。半分は海なので1413キロ平方メートル。1000円計算で1兆4130億円となる。
■汚染物質の処理をどうするのか
むろん住宅商業地が同じ価格というわけにはいかないが、それを加味しても10兆円以上と目される賠償債務からすれば、処理しきれない金額ではない。しかも、三つのメリットが計算できよう。
第一に、国の責任を明確にできる。
政府は、「事故の責任は東電」というスタイルを崩していない。だが、国策として推進、経産省、資源エネルギー庁、原子力安全・保安院、原子力安全員会といった何重ものチェックを受けて操業していた原発事故が、電力事業者だけの責任とは言えまい。
また、総攻撃を受けて反撃できない状況にあるとはいえ、今回の事故は、原子力損害賠償法の第三条に定めがある「異常に巨大な天災地変」にあたるというのが東電の本音だ。この場合、電力会社は「免責される」となっており、東電の株主が訴えて、法廷で争われた場合、国が勝つかどうかは微妙な情勢だ。避難地域の国有化は、国の責任を明確化することにつながる。
第二に、被災者に前向きな希望を持たせられる。福島県の政界関係者が率直にいう。
「いつか帰れる、という先行きの見えない状態は困る。蛇の生殺しに近い。無理なら無理、と言ってもらった方が、むしろ決断がつく。むろん、買収だけでなく、代替地やそこでの生活、といった問題もケアしてもらう必要があるが、新天地での再生は希望につながる」
第三に、国有地となった広大な土地にメモリアル的な側面を持たせる一方で、エネルギー政策に利用できる。
菅首相は、5月17日、共産党の志位和夫委員長と会談、「自然エネルギーの普及を特に福島県で進める手立てを考えている」と、述べた。また、枝野幸男官房長官も同日の記者会見で、「(福島県が自然エネルギーを)推進する拠点の候補であるのは間違いない」と、語った。
風車が何十台も並ぶ壮大な風力発電、太陽光パネルを敷き詰めた太陽光発電の拠点となるにも、国有化された土地であるほうが望ましい。
また、相馬市などでは土壌汚染された校庭の土を何十センチも掘り返して放射線除去を行っているのだが、その「捨て場」がなく、高さ数m、25mプールほどもある除去した表土に飛散防止の樹脂を吹き付け、ビニールシートで覆っている。さらに原発周辺の汚染されたがれきは、そのままでは処理できず、山積みのままだ。
現実問題として、こうした汚染物質の処理は国有地でなければできない。「東電で引き取れ」という声があるものの、周知のように東電は敷地内で今後、10万トンもの汚染水を処理しなければならず、その量は日に日に多くなり、年末までには20万トンに達する。むしろ東電が土地を求めている状態だ。
論議が巻き起こるのを承知で言えば、菅首相が「核燃料サイクルを白紙に戻す」と、言っている以上、先延ばしにしていた「使用済み核燃料」の最終処分場が必要になる。買収した原発周辺地が、溜まる一方だった核廃棄物処分場の有力候補となるのは間違いない。
いずれにせよ、国の原子力政策は、約10万人の生活権を奪った。そのことを明確に認め、「安易な帰宅」の夢をふりまくことなく、現実に即した論議が必要なのである。
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