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阪神大震災を支えた中内功・ダイエーの使命感
2010年01月16日 | Weblog
もうすぐ阪神大震災から15年が経とうとしている。当時、僕は京都に住んでいて、本棚が崩れて(といっても、部屋が狭くて倒れるほどのスペースも無かったわけだけど)本やら荷物やらが降ってきただけで済んだから、直接の被害は無かったといってもいい。
当時は関西で「地震」が起こるなんて頭の隅にも無かったから、正直、関東より先に震災の被害がくるなんて思ってもいなかった。たまに東京に遊びに行けば、地震の多さとそれに慣れている東京の人の姿にびっくりしたものだ。
で、今、その関東に住んでいるのだけれど、大地震が起きた時、いったいどうなるのだろう。
防災グッズは買った。
携帯電話はあるし、インターネットへ接続できる手段もいくつかある。
企業ではBCP(事業継続計画)を立てているところもあるだろう。
あの時、危機管理能力のなさを露呈した日本政府や行政組織も様々な法制度を整備している。
いくつかの経験値が高まり、新潟県中越沖地震では阪神淡路大震災の経験は活かされただろう。
その一方で心配なこともある。
阪神大震災の時、村山内閣はふがいない姿をさらしただけであったが、コンビニやスーパーを中心に生活用品や食料品などの物流網・補給体制は迅速に整備された。そのことがあれだけのカタストロフィの中で治安が維持された理由のひとつだろう。その救援作戦を指揮したのが「ダイエー」であり、今は亡き中内功だ。
佐野眞一氏の『カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」』にその様は詳しい。
まず中内氏が阪神大震災の第一報に触れたのは、17日の午前5:47のNHKのニュース速報。直後に災害対策本部を設置し、午前7時には360名の応援舞台を東京と福岡から神戸入りさせることを決定したという。ちなみに村山内閣が閣議で非常災害対策本部の設置を決定したのが午前10:00。実に震災発生から4時間以上も経過していた。
中内は生活必需品の供給のために、午前7時半には被災地も全店オープンを厳命し、倒壊の危険の無い兵庫県49店舗中24店舗が早朝から店を明けた。
翌日18日の午前9時には、福岡からタンクローリー2台分の飲料水やおにぎり、カセットコンロが泉大津港に到着。神戸へと輸送された。さらに19日には50台の大トラック舞台が大阪・茨木市の食料センターで救援物資を積み、大阪南港から接岸不可能な神戸港を迂回し、加古川経由で店舗に商品を搬送した。
またダイエー同様、ローソンも地震発生当日午前7時半には対策本部の設置を決定し、その日の夕方には水15万ケース、ラーメン10万ケース、おにぎり30万個が東京、名古屋、岡山から特別輸送が進められた。
それだけではない。震災後、真っ暗な廃墟の中で、店は閉まっているのにローソンの明かりはつけたままにされた。わずかな明かりが人々の心を勇気付けるために。
太平洋戦争に際し過酷なフィリピン戦線を経験している中内氏は、兵站、物流網がどれだけ大事か分かっていた。だからこそ、流通業者の責任として、まず物流網を復活させ、適切な値段で必要なものが買える状態をつくりだした。それは「平時」と同じようにいつでも物は届き、欲しい時に手に入れることが出来るんだという「安心」を作り出そうとしたのだろう。
今、関東大震災があった時、このように食料品や生活必需品の供給は行われるのだろうか。
もちろん物流網などはかって以上に整備されているし、非常事態のマニュアルなども整備されているだろう。その一方で危惧を覚えるのが、これだけローコスト経営、在庫をもたないことを「是」とする風潮の中で、スーパーやコンビニ、流通業者が安定した供給を可能に出来るのだろうか、ということ。また中内功のようなは「使命感」をもった人間がどれだけいるのだろうか、ということ。
あの時のダイエーの獅子奮迅の活動を支えたのは「中内功」の神戸への「想い」、過酷な戦場を生き抜き戦後を這い上がってきた経済人としての「使命感」だったのだろう。果たしてヨーカドーやイオンにそのような想いはあるのか。あるいはファミレスなどロードサイドショップにそのような使命感は残されているのだろうか。戦争を知らない世代がビジネスの中核となり、自分たちだけが儲かればいい的な風潮の中で、「中内功」のようなリーダーシップは誰が担ってくれるのだろう。
カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」 - ビールを飲みながら考えてみた…
完本 カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」〈上〉 (ちくま文庫)
パペポと阪神大震災 - ビールを飲みながら考えてみた…
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