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2011年3月17日 (木)
津波はなぜ黒いのか
3月11日に起こった東北大地震により引き起こされた巨大津波は、東北日本太平洋側の海岸に沿って分布する数々の都市や町を一気に飲み込んだ。その映像の数々が、TVやインターネットを通じて、繰り返し流されている。その想像を超えた規模と生々しい映像は、CGを駆使して作られたどんな映画より迫力があり、その凄さには絶句するばかりである。そして、その津波の不気味さをより強いものにしているのが、津波のどす黒い色である。墨の様に黒い津波が静かに押し寄せ、家や車を飲み込んで行く様子は、悪魔の化身のように見える。津波は何故黒いのだろうか?
日本(特に東北地方)では、昔から津波は黒いと言われていたようである。一方、2004年のスマトラ沖地震による津波は、その映像が広く世界に流された、初めてのケースだった。しかし、その映像を思いだしても、津波が黒かった記憶はない。確か茶色みを帯びた灰白色だったのではないだろうか?
津波が濁った色をしているのは、沖合の堆積物を浸食して巻き込んでいるからである。海における通常の波は風によって造られ、その影響は水深20-30m程度までしかとどかない。その結果、沿岸の水深〜30m以浅の海底には砂が堆積し、それより沖合の水深〜30m以深の海底にはより細粒の泥が堆積している。この泥は、熱帯域では石灰質な貝殻やサンゴなどの破片を主体とする為に灰白色なことが多いが、高緯度になるに従って、石灰質な細粒粒子の含有量が減り、川から流れ出た粘土の色である暗灰色になってくる。その結果、北に行くに従って津波の色も暗い色になるのである。それにしても、今回の津波の色はどす黒いのだが、これは恐らく三陸海岸の特殊性にある。三陸海岸は、リアス式海岸として有名だが、比較的深く入り組んだ湾や入り江の奥に町や村が分布している。そして、海岸近くまで森林が分布している。こうした森に囲まれた深い入江の底は淀んでおり、有機物に富んだ黒い泥が堆積していると考えられる。それが津波で巻き上げられたのだろう。津波は、その波長が非常に長いため、水深が深くなっても、その浸食力は減衰せず、100m以上の水深の海底からでも泥を巻き上げる力を持っているのである。リアス式海岸は、津波の波高を増幅する効果も持つため、三陸海岸には、より高く、より黒い津波が襲いかかることになるのだろう。
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