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4-4. 富士火山の総合的研究・地震研究所
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投稿者 小沢内閣待望論 日時 2011 年 3 月 19 日 12:18:54: 4sIKljvd9SgGs
 

http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/KOHO/Yoran2003/sec4-4-jap.htm
4-4. 富士火山の総合的研究

最近,富士山があらためて活火山として注目されている.2000年の11月から2001年5月にかけて,富士山山頂の北東方向およそ5kmほどの地点の地下15km付近で,深部低周波地震が活発化したためである(図1).過去20年間の富士山付近の地震観測の内ではもっとも活発な地震活動が観測されたのである.地震活動そのものは2002年以降月に数回のこれまでのレベルに落ち着いているが,この活動を契機に多くの人々があらためて富士山が活火山であることを認識するようになった.この低周波地震の活発化の後,政府や周辺の自治体では富士山の火山防災マップ(ハザードマップ)を作成することにして,現在その検討が行われている.

本計画もこの活動が契機となって予算が認められ,2001年度末に3年計画としてスタートしたものであるが,主要なターゲットは低ノイズの観測システムを設置し,この深部低周波地震の発生場所を正確に捉えるとともに,その発生原因を明らかにすることにある.もう一つのターゲットは富士火山の発達史や噴出物の変遷を明らかにし,次に予想される噴火の様式を探ることにある.さらに,自然地震や人工地震を用いて富士火山の地下構造を明らかにする実験も行われる.


図1.富士山付近での地震活動(1999-2001).山頂の北東数km,深さ15km付近集中するM<2の地震が深部低周波地震.

4-4-1.低周波地震の研究

計画の主要部は山頂の北東部で,およそ2kmの水平距離にある3ヶ所の地点にボーリングを行い(図2),その孔底に広帯域地震計を設置し,地震計アレイ観測を行うことにある.最も長尺の掘削孔(FJ-3)については途中箇所にも地震計を設置し,計4点の地震計を頂点にした四面体状の観測システムを地下に構築する(図3).この観測システムにより,深部低周波地震の到来方向を正確にとらえ,高品位のデータを得ることができるようになる.これまでに,2ヶ所のボーリングは終了し,既に地震計の設置も完了した(図4).これらの観測点からのデータは一旦北麓の別の観測点まで無線で送られた後,専用回線を使って地震研究所に送られている.

図2.ボーリングサイトの位置.FJ-1からFJ-3が地震計アレイを設置するためのボーリング孔.


図3.地下3次元地震計アレイの概念図.孔底および一部では中間点に広帯域地震計を設置し,立体的な地震計アレイを構成する.


図4.FJ-2地点に設置された大石観測点.

4-4-2. 火山発達史の研究

このボーリングで得られたコア資料は富士山の火山層序を明らかにするために用いられる.富士山は火山としてはまだ若く,最後の噴火からまだ300年しかたっていないため,山体の開析は進んでいない.このため,古い時代の層序の観察や,岩石の採取が困難であるが,コア資料は歴史時代以前の噴火史を編む上で,非常に貴重なデータとなる.上に述べた3ヶ所のボーリングの他に,山中湖畔でのボーリング(FJ-4)も行われた.これは,多くの噴火で放出されたスコリアなどの噴出物が西風によって運ばれることから,山体の東側でのボーリングによって,火山灰層序を組み立てることができるからである.実際,わずか75mの掘削であったにもかかわらず,過去2万5千年間に堆積した火山灰層序が得られ,今後採取された試料の分析を通じて,最近2万5千年間の富士火山マグマ組成の変遷の解明が期待できる.

図5には,高度1400m地点のボーリング結果の一部を示してある.ここでは,地表からごく浅いところで,古富士火山の堆積物がはじまる.また,このボーリング試料から約3500年前の火砕流堆積物も見つかった.これまで,富士山では西斜面で3000年頃の火砕流堆積物が見つかっていたが,それ以外にも火砕流が分布し,富士山のような玄武岩火山でも火砕流は決してまれではないことが分かった.

さらに,このボーリングによって,小御岳火山のものと思われる安山岩溶岩および火砕物が古富士噴出物の下に存在することが分かった.その化学組成は古富士火山のものと大きく異なり,しかも組成変化が大きい(図6).また,それらが角閃石を含むことも新しい発見である.


図5.FJ-3掘削点におけるコア資料の柱状図.深度8m付近に発見された火砕流堆積物の炭素年代はおよそ3500年前.


図6.FI-3掘削点におけるコア資料と回収試料の化学組成.300m以深のシリカに富む安山岩は,小御岳火山の噴出物と考えられる.富士山地域での角閃石を含む岩石の採取は今回が初めて.

4-4-3. 火山体構造探査

本計画では,また,富士山周辺の多数の地震計で自然地震を観測し,これらの解析結果から,富士山の地下構造を明らかにすることを予定している(図7).既設の地震予知研究のための観測点も含め全部で75の観測点を使用する予定であるが,本計画では新たに32の観測点を設置中である.その多くは衛星通信,無線回線,専用電話回線による即時データ伝送を行う.これらの設置には火山噴火予知計画に参画する他大学の研究者の協力も得た.図8に,本計画で設置した観測点および既設の観測点において記録した,深部低周波地震の波形を示したが,低ノイズの良好なシグナルが得られていることが分かる.


図7.稠密地震計ネットワーク.2002年以降,孔内観測点,衛星通信,無線通信,専用回線を利用した20点の観測点整備が進んでおり,2003年度にはさらに12点の観測点が整備される予定である.


図8.富士山直下のマグニチュード1.6,深度16kmの深部低周波地震の波形.本計画で新たに設置した孔内観測点や臨時観測点で捕捉した波形を含むが,いずれも良好なシグナルが得られている.

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