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接戦見込まれるベネズエラ大統領選
誰が勝っても到来する不確実性の時代
2012年10月05日(Fri) Financial Times
(2012年10月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
7日の大統領選挙で4選を目指すウゴ・チャベス大統領〔AFPBB News〕
今から数年前、14年間に及ぶ大統領在任期間の半分に達しない頃、ウゴ・チャベス氏は新しい大統領専用機を購入した。
機種はエアバス「A319」で、価格は6500万ドル。内装には贅沢な白なめし革を使い、キャビンの壁には国家の英雄の絵を飾り、シートテーブルには金の蝶番を付けていた。
大統領を批判する人々はすぐにこれを「恥さらしな飛行機」と呼んだ。チャベス氏はそれでもお構いなしにこの飛行機を使った。
当時は人気においても権力においてもまさに絶頂期で、「21世紀の社会主義」という自らのビジョンへの支持を集めようと外国訪問を繰り返した。リビアのムアマル・カダフィ大佐もチャベス氏の胡散臭い仲間の1人だった。
足元が揺らぐチャベス大統領
時代とは、かくも大きく変わるものだろうか。当時のチャベス氏には、文字通りの意味でも政治的な意味でも足元にゆとりがあった。しかし現在、同氏は外国で評判をすっかり落としている。ガンにもかかり、首都カラカスとキューバの首都ハバナの病院との間を行ったり来たりしている。
そして大統領選挙の投票日を10月7日に控え、本人にとっては過去最大級の政治的試練に直面する。
世論調査では、選挙は接戦だとされている。対抗馬は40歳の野党統一候補、エンリケ・カプリレス氏だ。チャベス氏のように国の資源は利用できず、カリスマ性にあふれているわけでもないが、それでもチャベス氏はこの勝ち目の薄い候補の存在に不安を覚えている。
チャベス氏の革命がいかに急進的であろうとも、かつて戦車の指揮官を務めクーデターの首謀者にもなった同氏はこれまでずっと、大統領としての正統性を選挙で獲得してきたからだ。
バラマキで確立した絶対的な地位
チャベス氏は何かと物議を醸す派手な独裁者としては世界有数の存在だが、そうなるまでにはかなりの額のカネがかかっている。1998年に政権を握った時に彼が唱えた大改革の公約は、ほとんどが象徴的なものだった。しかし、当時の原油価格は1バレル=10ドルで、大統領1年目の国家予算の規模は110億ドルにすぎなかった。
それが2006年までには原油価格が6倍に跳ね上がり、それに伴って政府の歳出も急増した。国際通貨基金(IMF)の推計によれば、今年の歳出は2000億ドル近くに達している。
しかもこれは、国家開発基金(FONDEN)という予算とは別枠の不透明な基金を考慮する前の数字だ。FONDENには過去7年間で1000億ドルもの原油収入が流入しており、チャベス氏はこれを思い通りに使ってきた。
気前よくカネを使ったことで、チャベス氏は虐げられた人々の擁護者を気取ることができている。しかし、同氏が立ち上げた社会事業やプロジェクトの多く――「社会主義者」の新聞用紙工場から新しい「アルミニウムの街」に至るまで――は頓挫している。
それでも、巨額の支出によってベネズエラの最も貧しい人々の生活は改善した。いや、今まではそうだった。今では執拗なインフレ、広がるモノ不足、悪化する暴力(9月29日には野党の支持者が3人射殺された)がこれまでの進歩を損なっている。
チャベス氏は、先週末の選挙運動中にこの点をそれとなく認めた。政府の失敗に支持者ですら苛立っていることも認識しており、「次の任期ではもっと効率を高める。約束する」と述べていた。
ベネズエラ政権にとって最大の脅威
しかし、チャベス氏を信じる人はますます減っている。この発言があった日の前夜に同氏は、中国製ではあるがベネズエラが資金を出した人工衛星の打ち上げを称え、国営テレビ局がこれを「宇宙革命・・・視界は最高」と形容した。
この様子を見て、ドン・キホーテのようなチャベス氏が日々の問題との接点を失っていることがまた露わになったと受け止めたベネズエラ人は、対立候補のカプリレス氏だけではない。
チャベス氏はしばしば、政権にとっての最大の脅威は外部のブルジョワや「新自由主義者」による陰謀だと述べているが、実際はそうではないことがこの14年間の実績で明らかになっている。
問題は政府の内部、そのお粗末な運営や腐敗、ムダにある。これらはチャベス氏がベネズエラで確立したシステム、すなわち権力が集中していて、正常な民主主義で見られるチェック・アンド・バランスの仕組みが骨抜きにされているこのシステムに本質的に備わっている欠点にほかならない。
どちらが勝っても先行きは混沌
もし対立候補のカプリレス氏が7日の選挙で勝利すれば、世界はベネズエラ軍とほかの中南米諸国がこの結果を認め、支持することを期待するだろう。
しかし、チャベス氏が自身の敗北を認めると仮定しても、体制の移行はカプリレス氏にとって難しい仕事になるだろう。議会や最高裁判所、そして国営ベネズエラ石油(PdVSA)はまだ、「チャビスタ」と呼ばれる大統領支持者の手中にあるからだ。
また、もしチャベス氏が勝利しても、将来の見通しは同じくらい不確実だと思われる。ベネズエラによる「ボリバル革命」はさらに深化するだろうし、国の機関はさらに手なずけられていくだろう。いずれにしても、今のチャベス氏はキラリと光る「恥さらしな飛行機」で飛び回っていた頃の同氏ではない。
By John-Paul Rathbone in London
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36245
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