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http://jp.wsj.com/IT/node_522948?mod=WSJFeatures
文字サイズ. 米カリフォルニア州サンレアンドロの警察はほぼ毎週、2年以上にわたってマイク・カッツ・ラカベ氏のトヨタ・ターセルの写真を撮ってきた。図書館の近く、エステュディロ・アベニューを走っているもの、カッツ・ラカベ氏の友人宅やお気に入りのコーヒーショップの近くに駐車されているもの、同氏と2人の娘が自宅前に停めた車から降りてくるところを捉えたものまである。
カッツ・ラカベ氏はいかなる法にも触れておらず、起訴どころか容疑もかけられていない。同氏の車は、パトカーに搭載され、近くにあるすべての車のナンバープレート、時間、場所を自動的に記録するカメラによって追跡されてきたのである。
「警察はどうしてこれほど多くのデータを集めているのか」。自分の車の写真を公文書請求で入手したカッツ・ラカベ氏は不満を口にする。「私は悪いことなど何もしていないのに」
・ナンバープレート読み取りカメラ
つい最近まではコストがかかりすぎたため、警察がカッツ・ラカベ氏のような無実の人々の居場所を追跡することなど考えられなかった。その警察は今、コストが下がって性能が向上した監視技術を急ピッチで導入している。民間企業もこれに参入している。ローンが滞納されている自動車や所有物を回収する専門家「レポマン」たちが創設した新興企業、少なくとも2社は現在、人々の車のナンバープレートを撮影する目的でカメラを搭載した車を全国で走らせている。そうして集めたデータで利益を上げようというのだ。
ナンバープレート追跡の広がりは、一般市民のありきたりにも見える日常行動の保存・分析が例外ではなくいかに既定事項になったかの事例研究となっている。携帯電話の位置情報、インターネット検索、クレジットカードでの購入、ソーシャルネットワーク上でのコメントやその他の情報が集められ、うまく組み合わされ、膨大なデータベースに保存されている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の分析では、1人の典型的な米国人に関する情報は、日々の行動を通じて20種類以上の方法で集められるという。ニューヨーク州ウエストポイントにある陸軍士官学校の電気工学の教授で追跡の研究をしているリサ・シェイ大佐によると、15年前にはこうしたタイプの監視ツールの半分以上が手に入らないか、ほとんど使われていないかのどちらかだったという。
シェイ大佐はこう述べた。「1950年代のソビエト連邦が現在の技術を持っていたら、どんなことになっていただろうか。我が国は警察国家ではないが、その技術は有している」
こうした情報は犯人逮捕のためにしか使われないと警察当局者は主張する。
米国国土安全保障省は自動ナンバープレート認識システムのために、この5年間で5000万ドル以上の連邦補助金を、広大なロサンジェルスから人口2万3000人のジョージア州クリスプ郡までの警察組織に供与してきた。ある2010年の調査は、米国の大きな警察組織の3分の1以上が自動ナンバープレート認識システムを使っていると推測している。
集められた情報量は膨大である。WSJは、公記録法に基づく請求を通じてカリフォルニア州リバーサイド郡の保安官事務所から2年分のデータを入手した。2010年9月10日から2012年8月27日までの期間に保安官事務所のカメラがナンバープレートをスキャンした回数は約600万回に上る。
カメラが搭載された保安官事務所の49台の車は約200万台分のプレートをスキャンしていた。データベースにある平均的なプレートは2年間で3回スキャンされていた。数百回、数千回という異常なほどの頻度で追跡されていたプレートは1%にも満たなかった。
ナンバープレートのデータベースには人々のパライバシーを侵害しかねない位置情報が含まれる。たいていの場合、警察は判事の承認なしでそれを入手できてしまう。これに対して、検察官は通常、GPS追跡装置を誰かの車に取り付けたり、携帯電話を使って誰かの居場所を特定するのに裁判所命令が必要になる。
ナンバープレートのデータベースには車の持ち主の名前や住所は含まれないが、そうした情報は州の車両管理局(DMV)のデータベースから入手できる。1994年に成立した運転者プライバシー保護法はストーカーを阻止するために、一般人のDMV情報へのアクセスを制限しているが、政府機関、警察、私立探偵、保険会社、研究者、民間の有料道路料金徴収業者、州によっては報道記者などが持ち主の名前と住所を入手できるようになっている。こうしたデータはいまだに悪用されることがある。
たとえば1998年、ワシントンDCのある警部補は、ゲイバーの近くに駐車してある車のナンバーを調べて、その所有者をゆすったことを認めた。
・全国的に把握する能力
自らが所有する数台のカメラ搭載車で1カ月に約100万枚ものプレートをスキャンしているメリーランド州ボルティモアのレポマン、マイク・グリフィン氏は「このデータのせいで誰かが被害を被り得ると思うと恐ろしくなる」と話す。
かつて国土安全保障省で個人情報保護問題の統括責任者を務めていたメアリー・エレン・キャラハン氏は、それぞれが数億のプレート情報を有する複数の民間データベースが、米国内での人の移動に関して集められた情報として最大規模になり得ると指摘した。現在は法律事務所ジェナー・アンド・ブロックでプライバシー慣行の責任者をしている同氏は「私がある時間にどこにいたかを全国的に把握する能力を持ち得る」と述べた。
法の番人たちは、盗難車を見つけ出したり、未納の罰則金を回収したり、容疑者の車を特定したりするのにこうした技術を使うと主張する。
WSJが特定した民間のプレート追跡業者2社は自らのデータを集める権利の範囲内で責任を持って運用していると話す。このうちの1社の親会社であるMVコネクトの創業者、スコット・A・ジャクソン氏はデータを一般人やマーケティング業者に売ることはないと言う。
同氏によると、プレート追跡業者は公共の場でビデオ撮影をしているだけで、完全に合法だという。「公共の場でビデオ撮影をするなという政府がどこかにあったら、私は断じて異議を唱える」とジャクソン氏は息巻く。「それは私の自由を奪う行為だ」ジャクソン氏の会社は全国で数億枚のプレートの写真を撮ってきたという。
ナンバープレート認識装置が広まったのは、信号無視をする運転者を特定するために一部の交差点でフィルムカメラが設置された1960年代の終わりである。それ以来、カメラ、ソフトウエア、コンピューター・ストレージの性能は向上し、その価格は下落した。大量のプレート写真のデータ保存や分析のコストも下がり、現実的になったのである。
市場調査会社IDCによると、1ギガバイトのストレージの価格は2005年の18.95ドルから1.68ドルにまで下がっている。これは91%の下落であり、数年後には数セントに下がることが見込まれている。同じように、写真から文字や数字を読み取ることができるデジタルカメラやソフトウエアの性能も劇的に向上している。
イタリアの防衛大手フィンメッカニカが、子会社であるエルサグ・ノース・アメリカを通じて米国にプレート認識カメラを紹介したのは2004年だった。この技術はもともと住所を読み取って郵便物を仕分けるのに使われていた。エルサグの経営最高責任者(CEO)、マイク・ウィンドーバー氏によると、今日、パトカーに搭載される標準的なカメラ2台のシステムの価格は1万5000ドルだが、当初は2万5000ドルしていたという。
・急速に進む導入
ジョージ・メイソン大学のシンシア・ラム教授は2010年に行った調査で、大きな警察組織の37%がプレート認識装置を使用していると推定した。かつては警察官で、証拠に基づく犯罪取締センターの副所長も務めたラム教授は「私が見た中でも、普及のペースが最も速い技術の1つだ」と述べた。
こうした装置の使用にいくつかの州はガイドラインを設けている。ニューハンプシャー州は使用を禁止しており、メイン州は捜査に関連している場合を除いて、21日後にデータを消去することを義務付けている。ニュージャージー州では「犯罪、あるいはテロ行為の可能性」において「具体的ではっきりと述べられる事実」がないと警察官は車の所有者を調べることができない。
なかにはこのシステムの導入を拒否した街もある。バーモント州にある人口3414人の街、ノーウィッチは今年4月、プレート認識装置導入のための助成金を受け取らなかった。町政担当者、ニール・フルトン氏はその導入について「私が思う安全のためにすべきことの範ちゅうを超えている」と述べた。
とはいえ、多くの警察組織はこの技術を受け入れた。カリフォルニア州にある人口220万人のリバーサイド郡は2007年から自動ナンバープレート認識システムを導入している。リバーサイド郡保安官事務所のリサ・マコーネル巡査部長は「職務促進のためなら警察職員は誰でもデータベースにアクセスできる」とし、保安官事務所はその記録を無期限で保存するつもりだと述べた。
WSJは公記録法に基づく請求を通じて位置情報を除くデータベースを入手した。この追跡システムは決して完璧ではない。同保安官事務所の技術者、ゲーリー・シュレイナー氏は「反射板上にあればどんな文字でも捉えてしまう」とこぼす。
その結果、データベースにはいくつかの一般的な道路標識が含まれている。たとえば「一方通行」は1万3873回も出てくる。これに加え、特に追跡頻度の高いプレートの中にその他の公用車が含まれていた。カリフォルニア州の公用車にはすぐにそれとわかるタグが付いているのだ。
リバーサイド郡の住人の中には自分たちのナンバープレートが記録されていることに驚く人もいた。アイディルワイルドに住む86歳のバージニア・ローズさんは「知らなかったので、ちょっと不安を覚える」と言った。
それでも警察にとっては有益なのだろうと理解したローズさんはこう続けた。「警察が私たちの安全を守るために必要なことには大概賛成している。車を盗んだりする人がいるからでしょう」
警察官は民間のナンバープレートと位置情報のデータベースを利用することもできる。たとえばテキサス州フォートワースにあるデジタル・レコッグニション・ネットワーク(DRN)やイリノイ州パラティンにあるMVコネクトの子会社、MVトラックなどだ。両社とも元レポマンによって創業された。
回収屋業界でのキャリアが20年以上にもなるMVトラックのジャクソン氏は当初、プレート認識装置について、回収しようとしている車を見つけるのに役立つ手段の1つにすぎないと考えていた。だがその後、全米規模のネットワークを構築するチャンスに気付くことになる。
ジャクソン氏は月額の使用料を支払う同業他社の車にもカメラを搭載し始めた。MVトラックによると現在、全国で数百のシステムが稼働しているという。そのシステムは、回収が必要な車のナンバーを捉えると、運転者にすぐに通知する。その通知に車の所有者の名前は含まれない。回収業者がスキャンしたプレートの情報を金融会社が買い取ることになると、その業者にはコミッションも支払われる。
地元警察はプレート認識カメラを使い、カッツ・ラカベ氏の車の位置情報の膨大なファイルを保存していた。
・ナイトスポッター
ボルティモアのグリフィン氏はMVトラックにとって最大の顧客の1人で、同氏が経営するファイナル・ノティス・アンド・リカバリ―では10台の車にプレート認識システムが搭載されている。同氏はドライバーを雇って昼と夜の2つのシフトで運転させている。各車は1日に300〜400マイルを走行し、ボルティモアやワシントンDCといった地域のプレートをスキャンしている。
夜間に車を走らせてプレートをスキャンするファイナル・ノティスの「ナイトスポッター」チームを率いるのは、ボルティモアでかつて警官をしていたパトリック・ウィルソン氏である。ナイトスポッターの黒い車は窓にも色が付いており、ボンネットにはカメラが搭載されている。彼らは路地や駐車場、集合住宅などを詳細に見て回り、できるだけ多くの車をスキャンしようとする。
回収依頼を受けている車を見つけると、ナイトスポッターはレッカー車を呼ぶことになる。この技術を使う前は一晩に6台ぐらいだった回収が、今では15台ほどに増えているとウィルソン氏は言う。
・行方不明者
ファイナル・ノティスはメリーランド州やワシントンDC周辺で1900万にも上る車の過去の位置情報を集積し、データベース化してきた。グリフィン氏によると、盗難車や行方不明者などの事件では警察が同社の車の位置情報に自由にアクセスできるようにしているという。
同氏は近々、プレート情報へのアクセス権を保釈金立替業者、令状送達者、私立探偵、保険会社など売り始めたいと考えている。「今後5年以内に、データ集めが本業になってくれるといいのだが」と同氏は述べた。
グリフィン氏のような人々にスキャンされたプレートの情報はジャクソン氏のMVトラックの中央データベースに供与される。ジャクソン氏はデータベースにあるスキャンの総数について具体的な数字は出さなかったが、米国で登録されている自動車の「大多数が含まれている」と述べた。
MVトラックのライバル会社で、DRNの子会社であるビジラント・ソリューションズは最近まで、そのウェブサイトにプレートのスキャン総数を示すカウンターを掲載していた。約7億スキャンというのが直近の数字である。
DNRはそのウェブサイトで「数百万人という人々がどこで車を運転しているかというような自動車関連のデータと世帯収入やその他の貴重な情報を組み合わせる」ことができる同社だからこそ、消費者をより効果的に特定することが可能だと謳っている。DRNはこの記事へのコメントを拒否した。
ジャクソン氏は自らのデータベースをどうするかまだ決めていないが、運転者の個人情報へのアクセスに関する1994年の連邦法を参考にしていくと述べた。「誰かが恋人や妻を追跡するためにデータにアクセスするようなことがあってはならない」
そんなことよりも、警察官が逃亡犯を追い詰めたり、令状の執行をしたり、駐車違反の罰金を徴収するのに役立たせる可能性が高いという。またジャクソン氏はデータを売ることに関して焦っていないと話す。「われわれがより多くの情報を集めることで、その価値は日々増しているのだから」
・法案をめぐる争い
カリフォルニア州議会のジョー・シミティアン上院議員は今年、民間の請負業者による自動プレート認識記録の保存を60日に制限し、そうしたデータへのアクセスを望む警察官には令状を取ることを義務付ける法案を提出した。
警察が人々の車の位置情報を得ようとするからには、相当な理由があってしかるべきだ、というのがシミティアン議員の言い分である。同議員はこうも述べている。「あなたに好意を抱く警官は、あなたの認知や承諾なしに、あなたの過去10年間の日常的な移動に関するデータへアクセスし得るべきだろうか。その答えはノーであるべきだと思う」
民間業者と警察組織はこの法案に猛烈に反対した。令状の義務化は警察にとって大変な負担となるし、未払いの違法駐車罰則金からの収入も減ることになるというのが、その理由である。シミティアン議員は結局、この法案を撤回することになった。
無実の人のナンバープレートを追跡することで、サンレアンドロ在住のコンピューター・セキュリティ・コンサルタント、カッツ・ラカベ氏のように不快な思いをする人が出てくることも事実である。同氏は地元の市議会でこの技術のことを耳にした。
2010年、カッツ・ラカベ氏はカリフォルニア州の公記録法に基づいて地元警察に自分に関するデータを請求した。すると、2008年以降に撮られた自分の車の写真112枚を含む報告書を受け取った。写真の内訳は、ターセルが107枚、あまり運転しないというトヨタ・プリウスが5枚だった。
「人物を特定できる写真が何枚かあったことに驚いた」というカッツ・ラカベ氏は写真を見ながら続けた。「これには運転している自分が、これにはカリフォルニア大学バークレー校のシャツを着た自分が写っている」
人口約8万5000人のサンレアンドロにはパトカーに搭載されたフェデラル・シグナル社のナンバープレート認識装置が1台あるだけだった。ところが、サンドラ・スパグノリ警察署長によると、今年に入って新型装置がもう1台加わったという。同署長はこの技術が数百台の盗難車の発見や他の事件の解決に役立ったと主張する。
最近もラスベガスから来たある男がこの街を通過しようとしてプレート認識装置に引っかかったという。同署長はこう説明する。「私たちはその殺人容疑がかかった男を追跡して逮捕した。このシステムがなければ逮捕は不可能だったろう」
スパグノリ署長はサンレアンドロ警察もそうしたデータを無期限に保存するつもりだと言い、こう締めくくった。「将来の犯罪の解決に役立ち得るものを破棄するなど無責任だ」
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