http://www.asyura2.com/11/kokusai6/msg/812.html
Tweet |
http://markethack.net/archives/51838676.html
・・・アメリカから見た極東の平和維持について少し考えてみたいと思います。
先ず兵力という点では近年、中国が軍隊をどんどん増強していることがしばしば指摘されてきました。このため極東におけるミリタリー・バランスは「中国の一強時代」に入っています。
(なお中国の軍事支出に関しては、公式統計の二倍程度、実際には使っているという見方もあるので、コンセンサスが出来ていないと思います)
アメリカは9・11以降、テロリズムのような「非伝統的な戦争」と戦うことに新しい装備のかなりの部分を投入してきました。そこで成長した分野としては無人偵察機(ドローン)や小型偵察ロボットや衛星を利用した追跡システムなどです。敢えて誤解を恐れずに言えば、「量より質」というメンタリティーだったわけです。
その過程で、多くの伝統的な、火力(fire power)に頼るプログラムは予算削減の対象になりました。もっと平たい言い方をすれば、空母や潜水艦や爆撃機は、流行らないのです。
イラクの戦争が終わり、いまアフガニスタンからの撤兵が実行されようとしている折、アメリカの防衛に対する考え方は小さなアイデンティティ・クライシスに陥っています。
すでにアメリカは極東を次の紛争地域と位置付け、そちらへ防衛の重点をシフトする(このことを政治・軍事用語でピボットといいます)ことを決めています。アメリカがそういう判断をした理由は、単純にミリタリー・ハードウェアの積み上がり具合を見た場合、極東における各国の軍備の増強が最も顕著だからです。
問題は極東では未だ昔ながらの「鉄や大砲による」伝統的な戦争、つまりアメリカが手を抜いてきた潜水艦や空母やミサイルなどの、レトロな軍備が支配的な戦争観だという事です。
だからアメリカが準備できるハードウェアと、中国やロシアが持っているハードウェアには、かなりの齟齬があるのです。
アメリカは今年の年末に、いわゆる「財政の崖」と呼ばれる問題に再び直面します。去年、同様の問題に直面し、国家予算の自動的カットが発動された際、2013年以降の防衛費の大幅削減が決まってしまいました。これは大統領選挙後の議会での討議で、再び軌道修正されるのかも知れませんが、今のところ防衛産業関係者にとって絶望的コースを辿っていると言って良いと思います。
極東での緊張が現在のように高まる以前、中国経済の実力がどんどん上がってきた際に、アメリカは「アジアの諸国は、新しい地域のスーパー・パワーである中国になびくのだろうか?」という事に関心を抱いていました。正直言って、かなりの国がアメリカの影響力を離れて、中国の方へ与すると予想していたわけです。
実際にはそれとほぼ逆のことが起こりました。
つまりアジアの各国はだんだんエスカレートする中国の領土主張に対して、アメリカに泣き付くというパターンになっているわけです。この結果、ベトナム、フィリピンなどをはじめとする、中国と領土問題で揉めている国々は以前よりずっとアメリカ寄りになっています。いや、
★有り体に言えば、韓国から始まって、日本、フィリピン、ベトナムまでを結んだ「中国の包囲網」が出来ていると見る事も出来ます。すくなくとも中国側は、そういうアメリカの陰謀的意図を感じています。
さて、竹島か、尖閣か?という順位の問題では、少なくとも
★アメリカでは尖閣の方への関心が遥かに高いと思います。それはアメリカにしてみれば竹島の問題は同盟・友好国同士の「内輪もめ」程度に思っているからです。
もちろん、日本には日本独自の考え方、感じ方があって然るべきです。だから別に隣人とおなじ行動を取る必要はありません。ただアジア全体の流れというものに、日本人はあまりにも疎く、冷静な状況判断が出来ていないのではないでしょうか?
******************************************************
お断り/広瀬隆雄 (記事冒頭部分を「お断り」として以下に掲載しましたー投稿者)
Market Hackはマーケットの立場から世界を見るブログであり、特定の政治的意見はありません。だからアメリカの肩を持ったり、逆に中国の肩を持ったりしないわけです。
同様に共和党を支持する立場ではないと同時に、民主党を支持することも、ありません。
「大きな政府」支持派でもなければ「小さな政府」信奉者でもないのです。
誰かにシンパシーを抱き、何かの思想に与した瞬間に、相場の判断が狂ってしまう……距離を置いているのは、そのためです。
(関連参考記事)
■米海軍 中国「封じ込め」から中国「脅迫」策へ
http://japanese.ruvr.ru/2012_06_06/77189861/
アジア太平洋地域における米軍のプレゼンスが高まる中、中国は米国に対して中国の懸念を考慮するよう求めた。中国外務省のリュウ・ウェイミン報道官は、機動部隊の大部分を含む米海軍の60%をアジア太平洋地域に配備するというレオン・パネッタ米国防長官の声明に反応した形となった。
レオン・パネッタ長官は、シンガポールで開かれた会議のなかで、米軍の海軍戦略をアジア太平洋地域に主眼を置くものにすることを発表した。現在太平洋には米海軍の約半分が配備されている。配備の増強は、大西洋からの編制替えにより実現されると、パネッタ長官は指摘している。
ロシアの地政学問題アカデミーのコンスタンチン・シフコフ氏は次のようにコメントしている。
−米国は新しい国防戦略コンセプトおよび軍事ドクトリンのなかで、主要な関心をアジア太平洋地域に置くことを表明したのです。特に、すでに世界経済の中心がほぼこの地域に移ったことを考慮してのことです。米海軍は、大西洋から太平洋、北東アジア、東南アジアへと編制替えを行います。米軍にとって、他の地域での影響力は失われており、アジアだけが大きな影響力の唯一残された地域なのです。しかしこれも、中国が軍事力を積極的に拡大しているなかで、米国にとって影響力を維持することは容易なことではないでしょう。
アジア太平洋地域における米中の利害は交錯している。中国のリュウ・ウェイミン報道官は、レオン・パネッタ米国防長官がベトナム訪問のなかで、カムラン基地を訪れたことに触れている。37年前、米国はベトナム戦争での敗北のあと、カムラン基地を放棄した。ベトナム側は、米国との関係について、自らのアジアにおける戦略パートナーである中国に対抗するためのものではないとの声明を表している。
しかし何はともあれ、米国は中国を封じ込めるため、新たな同盟網を張り巡らせているのだ。カムランは、太平洋における米軍の新たな拠点であると考えられる。現在、米軍による基地の整備が進んでいる。またフィリピンのスービックベイ基地にも、20年のブランクを経て、米海軍が戻って来た。それは重要な輸送回路の監視を容易にし、必要な場合にはそれを封鎖することを可能にする。
★米海軍のアジアへのシフトは、中国と各国との間における南シナ海上の領土紛争の高まりともタイミングを同じくしている。米国は領土紛争に介入することはない、としているものの、すでにフィリピンに対して中国に対抗するための軍事支援を約束している。米海軍のアジアへのシフトは、中国封じ込めのみならず、中国への脅迫というファクターになると考えられる。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。