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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35713?page=3(英エコノミスト誌)
シリアのバシャル・アル・アサド大統領の退陣後に来る事態に向けて、世界は準備を始めるべきだ。
革命には必ず、流れが旧体制にとって悪い方に変わる瞬間がある。エジプトでは、それは昨年1月28日に訪れた。反体制派がタハリール広場を占拠し、与党本部の建物に放火した時のことだ。
リビアでは昨年8月20日、トリポリ市民がカダフィ大佐に反抗して立ち上がった時に訪れた。シリアでは、2012年7月18日に起きたのかもしれない。シリアの治安組織の中枢が爆弾攻撃を受けた日だ。
この攻撃により、力のバランスがバシャル・アル・アサド大統領にとって決定的に不利なものに変化するなら、それは大いに歓迎すべきことだ。だが、エジプトもリビアも、革命から1年ほどが経った今でも不安定な政情が続く。
シリアは、イラク、イスラエル、レバノン、ヨルダン、トルコと国境を接し、中東でも特に複雑で重要な位置を占めている。シリア国民の幸福を願うなら、アサド氏を速やかに権力の座から追放することだけでなく、どうすればアサド後のシリアを殺戮と混乱から救い、燃え上がりやすいこの地域での暴力の拡散を防げるかを考える必要がある。
***そのまま進め
ダマスカスの治安本部への爆撃は、多くの面で政権の力を削ぐ可能性がある。まず、多くの人が負傷し、国防相と軍の元トップが死亡した。アサド氏にとってそれ以上に手痛いのは、政権の最高実力者の1人で、義兄でもあるアセフ・シャウカト氏が死亡したことだ。
アサド氏はすぐに死亡した幹部たちの後任を決めたが、個人的な忠誠心で結びついた派閥が支配する国では、死んだ有力者の代わりは簡単に務まるものではない。
この爆弾攻撃は、内部者による工作と見られる。政権内部の情報を知り、奥深くまで出入りできる者でなければ不可能なためだ。この事実も、軍と治安当局の指揮系統にダメージを与える。いずれにしても、司令官の大半がアサド氏の属するアラウィ派で、兵士のほとんどがスンニ派である軍隊の忠誠問題は、アサド政権の弱点の1つだった。
何らかの方法で聖域の奥深くに持ち込まれた巨大な爆弾が生んだ爆風は、あらゆるレベルで不信と疑いをまき散らすことになるだろう。
この攻撃は、アサド氏に加えられた最新の一撃にすぎない。シリア各地で騒乱が拡大している。いまや犠牲者の数はアフガニスタンのおよそ10倍のペースで増えている。国の西部と北西部の広い範囲が政府軍の立ち入れない地域になっており、政府軍の死者は2カ月前よりも増えている。軍からの離反も加速し、多くの司令官が軍務を放棄している。
とりわけ国境付近では、離反と抵抗が顕著だ。シリア第3と第4の都市であるホムスとハマは、アサド氏に激しく敵対している。
ダマスカスとアレッポという2つの主要都市では、これまでそれほど苛烈な騒乱はなかった。大半の市民が、安定を維持するという点ではアサド氏の方が他の選択肢よりもましだと考えていたからだ。だが、反政府勢力がダマスカスに入り込んできた今、状況はもはや不透明になっている。
***国際社会の計算にも変化
今回の爆弾攻撃は、国際社会の計算も変えるだろう。過去数カ月の外交交渉では、前国連事務総長のコフィ・アナン氏が進めるプランに重点が置かれてきた。監視団の下で効果的な停戦交渉を行い、暫定的な統一政府を樹立するというプランだ。
だが、この数週間で、アナン氏のプランは、何千ものシリア国民とともに死んでしまった。いまや勝利のにおいを嗅ぎつけている反政府勢力は、停戦に合意しないだろう。監視団の活動は、戦闘のために中断されている。シリアは内戦により荒廃し、統一政府を打ち立てられる見込みはない。
18日の爆弾攻撃以後、自暴自棄になったアサド氏がさらに極端な戦術を取る危険性が生じている。ダマスカスの全域を重火器で破壊したり、局地戦を誘発しようとしたりするかもしれない。化学兵器で自国民を殺戮する恐れさえある。
そうした可能性の重大さを考えれば、もう一度アサド氏の説得を試み、自らの絶望的な立場を直視させ、シリアからの亡命がいまや最良の選択肢だと認めさせる努力をする価値はあるだろう。
国際的な裁きという威嚇――とりわけ、化学兵器を使用した場合には孤立無援になるという警告――には、多少の効き目があるかもしれない。
だが、ロシアはアサド氏に対して大きな影響力を持っている。ロシアは昔からの盟友を守りたいという思惑、御しがたい自国のイスラム教徒への危惧、そして政権交代を求める欧米に対する嫌悪に基づいて、これまでアサド政権を外交圧力と経済制裁から守ってきた。
アサド氏失脚がますます濃厚になっている今、アサド後のシリアで一定の役割を得ることを見返りに、ロシアがアサド氏を見捨てる可能性は大きくなっている。だが、外交の舵を正しい方向に切る決断ができない現状では、欧米諸国は反アサド派の軍事的努力への支援を強めるべきだ。
最も手っ取り早い方法は、反政府勢力の主体である自由シリア軍に資金や通信装置などを提供して支援することだろう。自由シリア軍は既に、トルコの協力の下、カタールやサウジアラビアから武器と資金を得ているが、さらなる援助を必要としている。というのも、アサド政権の政府軍は、このところ敗北を喫しているとはいえ、ロシアが供給する最高の装備で重武装しているからだ。
自由シリア軍は天使の集団ではない。その武器の一部は間違いなく、聖戦を掲げる集団など好ましくない者の手に渡るだろう。シリアに大量の武器が流れ込めば、アサド氏失脚後の統治はますます難しくなる。だが、アサド氏を権力から引きはがすには、自由シリア軍への支援が恐らく最も迅速な方法だろう。
***アサド後に来るもの
アサド政権はさらに数カ月持ち堪えるかもしれない。あるいは、今回の爆弾攻撃により体制が傾き、すぐにも終焉に向かうかもしれない。いずれにしても、シリアがついにアサド氏を追い落とす日に備えて、いますぐに準備を始めるべきだ。
アサド後のシリアは、シリア国民にとっても近隣諸国にとっても危険なものになるだろう。宗派間の対立が流血を招く危険性があるし、化学兵器の流出や難民の大量発生というリスクもある。シリアはイランとトルコとアラブ世界の対立の焦点になるかもしれない。暴力がイスラエルを巻き込んだり、レバノンに溢れ出したりする可能性もある。
国際社会はそうした危険を排除できないが、緩和することはできる。新政府の樹立を支援するためには、資金と計画が不可欠だ。過敏な地域を落ち着かせるには、トルコとアラブ連盟を前面に押し出す地域外交が必要だ。平和維持軍と監視団にも果たすべき役割があるかもしれない。
それには何より、米国大統領の外交活動が必要となる。大統領選挙を控えたバラク・オバマ氏の意識は、ほかに向いているかもしれない。だが、危険な状態にあるシリアにも、ある程度は目を向ける必要がある。
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